本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(55)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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量的緩和の縮小

12月19日の「FOMC(連邦公開市場委員会)」において、「FRB」は、正式に「量的緩和の縮小(テーパリング)」を決定したが、この時に起きたことは、事前の市場予想とは違った「大幅な株高」だった。つまり、多くの人が考えていたことは、「テーパリングの開始により、市場に流れる資金が減少する」、そして、「景気が悪化し、株価が下落する」ということだったが、このことは、あまりにも、短絡的な意見であり、「お金の性質」が、ほとんど理解されていない「大本営的な意見」とも言えたのである。

つまり、「量的緩和」が意味することは、「国債の買い支え」であり、また、この資金は「中央銀行のバランスシート」を大膨張させることにより賄われていたのである。そのために、「量的緩和の縮小」が意味することは、「国債の買い支え」に関して「買い付け金額が減少する」ということであり、本来は、「株価」とは関係の無い事とも言えるのである。別の言葉では、「国債価格の下落」を防ぐための「時間稼ぎ」として、「景気悪化による株価の下落」がコメントされていたようだが、今後は、この点については、より一層、本質が明らかになるものと考えている。

また、「なぜ、テーパリングの開始により、株価が急騰したのか?」という点については、典型的な「プログラム売買」が指摘できるようだが、実際には、「国債の売り」と「株式の買い」が起きたようである。そして、今後は、この動きが、加速していくものと考えているが、問題は、やはり、「国債価格の暴落」であり、実際には、「日米欧の国々が、デフォルトに陥る可能性」も存在するのである。

具体的には、数年前の「ギリシャ」のように、「先進諸国でも、金利が急騰する可能性がある」ということだが、この点を「日本の国家財政」で考えると、「1000兆円の国家債務」に関して、「5%の金利上昇」は、将来的に、「50兆円の歳出増」に繋がる可能性が存在するのである。つまり、「税収のほとんどが、金利の支払いに充てられる」という状況のことであり、このことは、「高利貸しに悩まされる個人投資家」のような状態とも言えるようである。

このように、今回の「テーパリング」については、実質的な「政府の敗北宣言」とも言えるようである。つまり、「問題の先送り」が不可能になり、今後は、本格的な「インフレ政策」が実施される状況のことだが、この時に起きることは、「世界の資金が、一挙に、実物資産に殺到する状況」とも考えられるようである。

2013年12月24日

 

政府による資産没収方法

海外では、「政府による、国民資産の没収方法」が議論され始めているが、実際には、「いろいろな方法」が存在し、現在の「ゼロ金利政策」も、その一つと考えられているのである。具体的には、「国民に払うべき金利」を低くすることにより、「国民の資産」が、「国家」や「民間銀行」などの「救済」に当てられているということである。また、「増税」や「年金給付額の引き下げ」についても、「国民の資産が、国家へ移転する」という状況であり、実際には、「国民資産の没収方法の一つ」とも理解されているのである。

このように、「国民が気付く手段」による「合法的、かつ、直接に資産が没収される方法」については、現在の日本国民も理解しているようだが、その他に、「国民が気付かないうちに、いつの間にか、資産が没収される手段も存在する」と考えられているのである。具体的には、「国債の発行」は「将来の税金」であり、現時点では、多くの人が危惧し始めているのだが、この他にも、「日銀のバランスシートの拡大」も、実は、「国家による資産没収」と考えられているのである。

つまり、現在の「異次元の金融緩和」というのは、「日銀のバランスシート」を急拡大させながら「国債を買い付ける」という方法のことだが、実は、この時に、「国民」から「国家」への「富の移転」が発生しているのである。そして、このことが、海外では、「国家による富の没収」と考えられているのだが、現在の日本人は、「アベノミクス」という「金融政策」であり、「国民にとって利益になる政策である」とも理解されているようである。

別の言葉では、「安倍首相や黒田日銀総裁は、国民のためになる方法を選択している」という理解のことだが、実際には、「全く逆の理解」が、海外では中心になっているのである。つまり、「日銀のバランスシートが急拡大する」ということは、実は、「増加分が税金と同じ効果を持つ」という考え方のことであり、確かに、「国民が知らないうちに、国民の資産が、実質的に減少していた」という観点からは、「資産没収の一方法」とも言えるようである。

また、この時にも、「二つの方法」が存在するものと考えているが、実際には、「当座預金の増加」による「国民が気付かず、また、インフレを誘発しない方法」と、もう一つは、「紙幣の増刷による、インフレを誘発する方法」のことである。そして、現在では、後者の方法へと、はっきりと、政策転換が行われた可能性が高まっているのだが、問題は、「この時に、どれだけ日本人が大慌てをするのか?」ということである。

2013年12月25日

 

盥(たらい)の水

「二宮尊徳先生」に「盥の水」という言葉があるが、このことは、「水を自分の方に引き寄せようとすると向こうへ逃げてしまうけれど、相手の方にあげようと押しやれば自分のほうに戻ってくる」というものである。そして、この考え方は、「人生」のみならず、「投資」にも応用が利くものと考えているが、現在では、ほとんどの人が、「自分の欲望」だけを考え、知らないうちに、「盥の水を、自分の方に引き寄せようとしている状況」とも言えるようである。

別の言葉では、「あいだみつを氏」の「奪い合えば足りず、分け合えば余る」という言葉のとおりに、「お金の奪い合い」が、世界的に起きているものと考えているが、この時に考えなければいけない点は、やはり、「お金の性質」でもあるようだ。つまり、目に見えない「信用」を形にしたものが「お金」であり、また、人々の「欲望」が多くなった時に、「お金の残高」が膨張するということである。

より具体的には、「1800年頃」から始まったと言われる「資本主義」というのは、「資本」という「お金」が、「主義」という「最も大切なもの」になった時代のことを意味するのである。そして、現在では、誰もが、「お金が無ければ生きていけない」と錯覚するほどに、「お金に縛られた時代」でもあるのだが、問題は、「人々が知らないうちに、世界のお金は、一握りの人々によってコントロールされていた」ということである。

つまり、現在、世界に存在すると言われている「約10京円の金融資産」は、ほとんどが、「政府」や「メガバンク」が保有するものであり、「個人」や「民間企業」が保有する「金融資産」は、いつの間にか、相対的な力を失ってしまったのである。別の言葉では、「フィアットマネー」と呼ばれる「政府の信用を基にした、紙幣や預金、あるいは、国債やデリバティブなどの金融商品」が大膨張した結果として、本来の「お金」である「貴金属」、そして、「実体経済」を代表する「株式」などの「時価総額」は、全体の金額と比較すると、たいへん小さなものとなってしまったのである。

そのために、このような状況下で必要なことは、多くの人が求める「預金」や「国債」、あるいは、「値上がりした株式」などは、「欲しい人にあげる」という態度だと考えている。具体的には、「必要以上の預金は、貴金属や株式などの実物資産に交換する」ということであり、また、「人気化した銘柄は売却し、不人気な割安株に交換する」ということだが、実際には、「値上がりした人気株」に、多くの人の興味が向きがちなようである。

2014年1月7日

 

安倍首相の勘違い

最近の「安倍首相」は、大きな「勘違い」をしているようだが、具体的には、「首相は絶対権力者であり、自分の行動により、民を救うことができる」と錯覚している可能性のことである。別の言葉では、「アベノミクス」や「異次元の金融緩和」が、表面的な成功を収めたものと考え、更に、「国家権力の行使」を強めようとしているようにも思われるのである。つまり、「政府の言う通りに行動すれば、国民は幸せになる」という「考え」のもとに、「国家の行動範囲」を広めようとしているようだが、このことは、かつての「共産主義国家」や「社会主義国家」における「計画経済」と似たような状況とも言えるようである。

また、「理想的なリーダー像」についても、大きな誤解が存在するようだが、「東洋学における理想の宰相像」、あるいは、「西洋諸国の理想的なリーダー」というのは、基本的に、「高貴な地位に就く者の義務や態度」が重要視されているのである。具体的には、「太陽」や「大地」のように、「人々を温かく見守りながら、一人ひとりが、助け合いながら、幸せな人生を送ることを願う」ということであり、この点については、現在の「天皇陛下」や「皇后陛下」が、まさに、「理想像」とも言えるようである。

このように、「首相就任後、一年を経た安倍首相」は、「私」という「自分の思い」だけに囚われて、「公」という「国民の幸福」を忘れているようにも感じられるのである。具体的には、「憲法の改正」という「自分の夢」を達成するために、「日銀」を利用しながら、「表面上の景気回復」を目論んでいるものと思われるのだが、この点については、間もなく、結論が出ることになるようだ。

また、現在の「安倍首相」は、「大きな政府」を推進することに熱心であり、「規制改革」には、ほとんど関心が無いようにも思われるのだが、本来の経済成長は、「それぞれの国民が、自由平等な環境下で、他人のためになる仕事をする」ということが、基本的な条件とも言えるのである。つまり、「夜警国家」という「国家の機能は、外的からの防御、国内の治安維持など,必要最小限の公共事業にある」という「国家観」とは、全く正反対の方向へと向かっているのである。

別の言葉では、「崩壊前のソ連」と、ほとんど同じ政策を取っているようにも感じるのだが、この点については、今後、「国債価格の暴落(金利急騰)」が起きた時に、はっきりと見え始めるものと考えている。具体的には、「4月の消費税上昇」の前後に、「異次元の金融緩和」の「正体」が見え始め、人々が慌てだす動きが予想されるようである。

2014年1月7日

 

「平清盛」と「八重の桜」

先日、広島から京都へ旅行し、「厳島神社」や「原爆ドーム」、そして、「同志社大学」を見学してきた。つまり、「平清盛」から「八重の桜」という「NHKの大河ドラマ」を思い起こしながら、「時空の旅」をしてきたのだが、この理由としては、「武士の時代が、なぜ、800年間も続いたのか?」、そして、「なぜ、明治維新で、武士の時代が終焉したのか?」を模索することにあった。また、この点が、より深く理解できた時に、「これから、どのような時代が訪れるのか?」について、「何らかのヒントが得られるのではないか?」とも考えたのである。

より具体的には、「平清盛」の時代には、「公家の犬」と蔑(さげす)まれた「武士階級」が、その後、「約800年」という時を経て、「戊辰戦争」の時には、「もっとも高貴な地位や名誉」を持つことになったからである。しかし、この時が、「武士の時代のピーク」であるとともに、「明治維新」により、「あっという間に、武士階級の崩壊が起きた状況」でもあったのだが、実際には、「武士の存在そのものが消滅した」というほどの「大転換期」に見舞われたのである。

しかも、この時に、「西暦1600年」の「関ヶ原の戦い」を「時間の中心線」にすると、その前後に、「室町幕府の15代将軍」と「江戸幕府の15代将軍」が、それぞれ、「250年から260年」もの期間にわたり「日本を支配していた」という状況でもあったのである。つまり、世の中には、「800年サイクル」が存在し、また、その「800年」が、「前半の400年」と「後半の400年」とに分かれる状況が、歴史上では、往々にして見られるということである。

しかも、この時の注目点は、「平清盛」から「室町幕府の初代将軍」である「足利尊氏(西暦1338年に将軍の地位に就く)」までの期間が、「約150年」であり、また、「明治維新」から「現在」までが、やはり、「約150年」という期間になっていることである。つまり、「時代の大転換期」においては、「150年程度の移行期」が存在するものと思われるのである。

そして、この点については、今回の「軍師 官兵衛」を見ることにより、「どのようにして、武士の地位が変化したのか?」が理解できるようだが、その時には、「過去150年間」で、「武力」が「金の力」に移行し、現在のような「全ての人が、お金に依存する時代が、どのような終焉の時を迎えるのか?」が、よく理解できるものと考えている。

2014年1月16日

 

覇権国家を目指す中国

「2013年」の「中国による金(ゴールド)の輸入」は、きわめて凄まじい動きだったようだ。具体的には、「上海市場において、年間で、約2200トンもの金が、現物で引き出された」とも推測されているのだが、この数量は、「中国を除く、年間の生産量に匹敵する」とも言えるからである。つまり、「年間の生産量が、約2600トンから2700トン」という状況下で、「世界最大の産金国である中国の生産量は、約400トンだった」とも言われており、この点を考慮すると、「中国を除いた世界の産金量が、約2200トンから2300トン」という事実が理解できるとともに、「2013年」は、「中国が、世界全体の生産数量に匹敵するほどの金を購入した」という計算になるのである。

そして、「なぜ、中国が、このような行動を取っているのか?」という点については、やはり、「世界の覇権国家を目指している」とも考えられるようだが、ご存じのとおりに、「過去数百年間の世界」を見ると、「約100年ごとに、世界の覇権国家が移行している」という事実が見て取れるのである。具体的には、「19世紀のイギリス」から「20世紀のアメリカ」へ「覇権」が移行し、また、その前には、「フランス」や「スペイン」などが、「世界の最強国家」だったのである。

また、「覇権国家」としての必要条件は、「強大な軍事力」の他に、「強固な金融システム」でもあるようだが、「20世紀のアメリカ」は、「1950年頃に、世界の金(ゴールド)の半分程度を保有していた」という状況だったのである。そして、このような「強大な経済力」を背景にして、「貴金属」や「穀物」などの主要産品が、「ポンド建て」から「ドル建て」へと移行していったのだが、現在の中国は、まさに、この当時のアメリカの姿を追求しているようにも思われるのである。

つまり、一説では、「現時点で、8000トンから1万トン程度の金を保有しているのではないか?」とも言われるほどの「大量の金」を保有するとともに、「強大な軍事力」の保有に努めているからである。そして、今後は、現在の覇権国である「アメリカ」の没落を待っているようにも思われるのだが、実際に、「時間の経過とともに、アメリカの力が弱まり、中国の金輸入数量が増えている状況」になっているのである。

そして、今後は、「世界的な国債価格の暴落」とともに、「金の重要性」が増してくるものと思われるが、この時の問題点は、「本当に、今までのような形で覇権の移行が起きるのか?」ということであり、実際には、「数多くの問題」が存在するようである。

2014年1月16日

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4758:140219〕