東京都知事選での現実

東京都知事選での野党候補は、宇都宮健児氏のフライングを押さえて、鳥越俊太郎氏で決りのようで、リベラル・左派の政策論議も喧しいのですが、何かお忘れではないのでしょうか。

知事に野党候補が当選したところで、何を公約していようとも、蜃気楼になるのが丸見えの状態に蓋をしたままでは、都民に対しては不誠実極まることになりはしませんか。

東京都議会自由民主党と、都議会公明党を併せると、議員数は、79人になり、定数が127人であるので、過半数を満たして余りがあり、両党の反対があれば、他の会派が全て賛成で一致していようとも、予算案は勿論、如何なる条例案も、成立せず、また、当然のことに如何なる案件も議会の了承を得ることは不可能です。

会派構成・会派略称一覧 東京都議会
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/outline/factional.html
さて、実際に、野党候補が当選したとして、どうなるのかをシミレーションしてみましょう。

公約を都政に実現化するのは、予算ですが、都知事が如何に苦心惨憺された出来上がった予算案であったとしても、各会派と連日折衝した挙句が都議会で反対多数の場合には、成立せず、新年度予算が零になるのを何とか解消するのが当面の解決となります。

その場合には、法律に依り、暫定予算を議会に諮り成立させて当面の都政運営に支障の無いように図るのが通常です。 従って、多くの場合には、新地方自治体の長の目指す新規施策は棚上げになります。

ところで、その暫定予算にも制限があり、地方自治法第二百十八条 第二項には、「普通地方公共団体の長は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を調製し、これを議会に提出することができる。」とありますので、暫定予算は、一年間もの期間に渡るものではありません。

従って、一会計年度の間、議会では、各会派との折衝等で時間を空費し、暫定予算を何度も作成し、しかも新規施策は棚上げにせざるを得ない状態に陥ることになります。

これでは、始めから野党候補の「公約」は、実現性に乏しい、と言わざるを得ません。

ただ、自民党候補が割れたので、野党の出番があるかも知れません。 その折の方が野党の政策の実現する確率が高いのかも。