東京電力は空前の特別損失が予想される。国民にも電力料金値上げ、特別税の負担か

著者: 浅川 修史 あさかわ・しゅうし : 在野研究者
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 東京電力は福島第1原子力発電所を廃炉する意向を表明した。廃炉する原子炉(号機)がいくつになるかまだ不明だが、損傷の激しい1号機から4号機の廃炉はほぼ決まりだろう。原発事故に関連して、東京電力は2011年3月期決算で巨額の特別損失を計上することになる。おそらく兆円単位の特別損失の計上が不可避となり、東京電力の自己資本3兆円が吹き飛び、債務超過になるだろう。

 東京電力は2010年4月30日に前期の決算を発表している。上場企業の中では早いほうだ。電力の決算は売上債権や在庫評価の負担が軽いために、決算を早く確定して発表できる。だが、今期は特別損失の確定が困難であり、決算発表日がそうとう遅くなることが予想される。

 特別損失の内容としては、①設備の損壊に伴う損失、②廃炉に伴う特別損失、③他の原発にも有形固定資産の減損が避けられないこと、③将来の損害賠償請求に関連する引当金、など多くの勘定科目が予想される。とくに③はどの程度網を広げて計上(引き当て)するか、という難しい判断を迫られる。決算が適正かどうか監査する公認会計士(監査法人)も頭を悩ますことになる。

 なにしろ原発の被害、加害とも現在進行形だから、なおさら決算を作成することは困難だ。

 現在の段階で被害、加害が止まれば、営業キャッシュフローが1兆円もある東京電力なので、数兆円程度の特別損失を計上してもサバイバルはいくらか可能だろう。

 だが、福島原発事故が現状より拡大すれば、政治的にも国民感情的にも東京電力の存続は難しい。その場合、旧国鉄のように、JR各社と国鉄清算事業団のように企業を新旧分離することが考えられる。利益の出る資産を新会社に移して、精算会社に不良資産を移す方式である。新会社の利益から精算会社の負債を返済する方式である。

 そうした新旧分離の方式でも東京電力供給区域の電力料金が大幅に上がることや他の電力会社の利用者にも「電力使用特別税」(仮称)が課せられることが予想される。

 健康被害の恐れ、計画停電という名の「無計画停電」。加えて電力料金と特別税。本社中枢機能や生産の脱東京電力区域や海外移転が進むだろう。

 以前、ある識者が、「東京電力は国際的比較してべらぼうに高い電力料金によって、客を潰して、最後は自分も潰れる」と予言していたことを思い出す。東京電力の怠慢、無責任体質、危機管理能力の欠如によって、国民が潰されかけている。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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