松田健二さんを偲ぶ会を開催いたしました

著者: 土田修 : ル・モンド・ディプロマティーク日本語版の会理事兼編集員 ジャーナリスト(元東京新聞編集委員)

 ちきゅう座の事務局長として長年活動されてきた社会評論社の松田健二社長が昨年11月に亡くなられました。50年以上、左派系の出版社を経営し、1500冊の本を世に送り出してきた松田さんは世の中をよくしようという志に燃えた「革命家」の一人ではなかったかと思います。その松田さんを偲ぶ会は3月15日に、松田さんがこよなく愛した東京都文京区本郷三丁目の中華料理店「随苑 上海厨房」で、ちきゅう座、アソシエーションだるま舎、社会評論社の共催で行われました。

 生涯、「ソシアリスト」を自任した松田さんには赤いバラの花とジャズがお似合いではないかと勝手に判断し、マイルス・デイヴィスやアート・ブレイキーなどの軽やかでポップな演奏が流れる中、80人を超える参列者の方々に、祭壇に飾られた遺影の前に赤いバラの花を一本ずつ献花していただきました。その祭壇(ワーカーズコレクティヴィの藤木千種さんに紹介していただいた公益社がスピーカーやマイクといった音響機材や祭壇用のテーブルなどを破格の値段で用意してくれました)には早稲田大学名誉教授・高橋順一さんの『「三・一一以後」の世界と<市民社会の弁証法>の行方』や、パルシステム初代理事長・下山保さんの自伝『飢えと子どもドロボー団 満州引き揚げからパルシステム連帯までの半生記』といった社会評論社の最新刊が並べられ、松田さんの出版にかけた情熱を垣間見ることができました。

 偲ぶ会ではまず、ちきゅう座運営委員長の合澤清さんの開会の挨拶に続き、世田谷区長の保坂展人さんが「戦争前夜ともいえる歴史的な情勢下で世の中を変えるんだという松田さんの遺志を引き継いでいきたい」と話しました。この後、元沖縄大学学長で教育学者の野本三吉さんが「私は松田さんと同じ年齢です。これからも松田さんの遺志に沿って、みんなが安心して生きていける社会を作るためにやっていきたい」と述べ、献杯の音頭を取っていただきました。
 野本さんは社会評論社が誕生した1970年に、同社第一冊目となった『不可視のコミューン 自己教育の足跡』という本を出版しました。沖縄大学の学長を退任した後は、かつてソーシャルワーカーの職員として活動していた横浜市に戻り、寿町で街の歴史をまとめる活動を行なっています。

 献杯後、高橋順一さんのほか、仙台から駆けつけた東北学院大学名誉教授の半田正樹さん、季刊『ピープルズ・プラン』編集長の白川真澄さん、松田さんと同じ岡山大学で学生運動を共に闘ったという吉清一江さん、千葉大学名誉教授の岩田昌征さんに、松田さんの思いで話を語っていただきました。この後は、赤いバラの花とジャズの演奏に彩られる中、参列者の方々5、6名に短いスピーチをお願いしました。

 自伝的著作『私のことはわたしが決める 松本移住の夢をかなえたがん患者、77歳』を社会評論社から出版し、昨年9月に日本自費出版文化賞の「色川大吉賞」を受賞された竹内尚代さんと、下山さんの自伝の編集を手がけた藤木千種さんが松田さんに感謝の言葉を述べました。

 偲ぶ会の最後には、緑風出版の高須次郎社長、現代書館の菊池泰博社長の挨拶に続き、松田さんの妻和子さんがマイクを握り、「こんなにたくさんの方々に松田がやってきたことを評価していただき、松田の遺志を再認識しました。松田はがん宣告を受けた後もそれにめげずに会社に行っていました。とにかく亡くなるまで会社、会社の人でした。まだまだやりたいこと、夢見ていたことでいっぱいでしたが、松田の遺志を大切に会社を引き継いでくださる人がいるので安心しました」とお礼の言葉を述べました。

 閉会の辞は、社会評論社の経営を引き継ぐことになった山本浩二・本間一弥共同代表から本間一弥さんにお願いしました。「巨人と言えば長嶋茂雄だったように、社会評論社と言えば松田健二さんです。『社会評論社は不滅です』と言えればいいのですが、出版業界は氷河期です。でも社会評論社にはピンチになると支えてくれる人があらわれます。これ以上世の中を悪くしてはいけないという人々がたくさんいます。社会評論社はしぶといです。松田さんの遺言とも言える高橋順一さんの本はロングセラーになると思います。松田さんの考え方や方向性に従い、まだまだやるべきことがたくさんあると思っています」。本間さんは社会評論社のトップとしての決意をこう熱く語ってくれました。

 閉会後は近くの店で二次会の場を設け、20数人が参加する中、日に日に悪くなる日本の政治や国際情勢について熱い議論が交わされました。50数年の歴史を刻んだ出版人であり、アクティヴィスト、ソシアリスト、オルガナイザーでもあった松田さんのご冥福を心からお祈りいたします。                         (2026.3.25)

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