このところ安部首相が「改憲のホツギ(発議)」と口にする。在任中の「9条改憲」に執念を燃やしているそうだが、その好機と見たか焦ったか。どっちにしろ首相のトップダウンで憲法を変えようとするなんて、そもそもヘンではないか。
改憲が必要なら、まず声の上がるべきは国民の側。アベノ改憲は逆立ちしている。アベノミクスと同様、私たちが言い出しっぺではない。政権は北朝鮮などの脅威を強調しアメも並べて誘い込むが、私たちはおそらく改憲など積極的に求めてはいない。
首相を始め税金で雇われる公務員には、その立場ゆえ憲法を大切にする義務がある。憲法99条に「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と書いてある。「この憲法」とは、もちろん現行の日本国憲法のことだ。
99条による縛りを嫌ったのだろう。首相は去年、公然と条文解釈をねじ曲げた。「憲法99条は内閣総理大臣が憲法改正を主張することを禁止する趣旨のものではない」と唐突かつ回りくどく断言したのだ(平成二十九年二月十日受領 答弁第四三号=安部内閣)。トップダウン改憲を押し通そうとする意図が見え見えだ。
法律の解釈も統計の算出基準も、政策の障害と見るやしれっと変更する。この鉄面皮振りがまたも強行され、首相は現行憲法を重んじる義務を自ら捨てた。14年に集団的自衛権を使えるように閣議決定して以来、安部政権は毒を食らわば皿までと肚をくくったように見える。
今年に入って、トップダウンの動きはさらに加速している。先日「改憲発議は1年以内」と煽ったのも、自民党の二階幹事長だ。国政トップが率先して、国の心柱たる立憲主義を揺さぶる。安部氏を戴く暴走集団は、民主主義に対する反乱の様相さえ見せてきた。
憲法の示す理想とのギャップに迷いながら、私たちはこの憲法によって守られてもいる。12条は、憲法の定める権利、自由を国民の努力によって保持すべきことをうたう。政権はここに手を突っ込んできた。
だが私たちが承認しなければ憲法は動かせない。一人一人が憲法を支える最後の番人だ。憲法を軽んじる人々が煽る改憲など、認められるものではない。
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