現在の戦争についての認識を深めたい

著者: 三上 治 みかみおさむ : 社会運動家・評論家
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  「空に月のこして花火了りけり」(久保田万太郎)。週末にはあちらこちらで花火をやっている。夏の終わりまでにはどこかの花火を見に行きたいと思っているが、いざとなるとなかなか足が動かない。むかしから祭り事が好きなのだが、近くの商店街のおばさんたちと輪になって踊る盆踊りで済ましてしまう。日本の政治も秋の政局を前にした夏の休暇にあるようだが、世界の方からは熱い動きが伝えられる。

   最近になってアフガニスタンの戦況に関する記事が多くなった。アメリカ軍が報道管制を緩めたのか、報道戦略を変えたのか事情は分からないが、この背後にはオバマ政権がアフガニスタンでの戦争において重要な岐路に立っていることがある。ブッシュ政権(共和党政権)のチェンジ(変革)を掲げて登場したオバマ政権だがアフガ二スタンでの戦争では継続した。むしろ拡大した。3万人の増兵に踏み切り、抵抗勢力(タリバーン)の掃討作戦を強めているのは周知のことである。しかし、このオバマ政権の戦略は功を奏すどころか、泥沼化の様相を深めている。「オバマのベトナム」への道をより現実のものとしている。米軍の機密情報は続々と流出してアメリカ政府や軍を慌てさせているが、国内のみならず現地でも厭戦気分は高まる一方である。兵士の自殺者や心傷者の増加はそれを端的に物語るが、政府や軍という官僚たちと現場兵士の亀裂という戦争末期の様相を示している。

 イラクやアフガニスタンでの戦争についてマスメディアは報道記事として流すが本格的な論評はしない。意識的に避けているように思える。また、政党も政治家もこれについて議論を踏み込んでやっているようにはみえない。総じてマスメディアや政党、あるいは政治家の反応は鈍いといえる。一種の判断停止状態にあるのだ。これは日米同盟の深化という空疎な言葉を振り回し、世界の現状の分析と判断から日本の行方を構想する努力を怠っていることでもある。判断停止状態からはアメリカ追随以外の何も生まない。イラクのクェート侵略と第一次湾岸戦争から20年目を迎える今、9月11日事件を含めこの間のアメリカの戦争の現状の認識を深めるべきだ。民主党が野党であった時代はその内部にアメリカの戦争を検討し、日米関係の在り方を模索する動きもまだ存在していたように思う。それも今は影が薄くなっている。8月は戦争の反省的検証の月である。現在の戦争の検討と重ねた思想的研鑚がのぞまれる。

 〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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