理想の平和主義を掲げよう

著者: 鈴木顯介 すずきけんすけ : ジャーナリスト
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みなさん!立ち止まって考えましょう。思考停止はやめましょう。

今度の選挙ぐらいもやもやして、分かりにくく、投票先を決めにくい選挙はありません。

分かりにくいから、考えるのも面倒くさい、雨も降っている、寒い、やめた。棄権はやめましょう。

次は、ずばり、憲法改正を打ち出した自由民主党と、それを率いる安倍晋三さんに投票しないことです。

投票が終わったら、じっくり考える時間を持ちましょう。

一旦多数を取れば、言ったこと、言わないこと、書いたこと、書かないことをひっくるめて、支持票を入れてくれたんだから、白紙委任をもらったと、やりたい放題。毎回繰り返されるペテンにだまされないことです。これを認めたら、じっくり考える暇はありません。

期日前投票は午後8時までです。小降りを狙って出かけるのも手です。足の悪い私は晴れている間に済ませました。元気な方は「雨にも負けず」です。主権者はあなたです。

偉そうに識者ぶって、書くつもりはありません。私には快刀乱麻、ずばりとこのこんがらがった状況を解明する力はありませんし、してはいけないのです。私自身が分からないのですから。できるのは、自民が混迷の状況を解きほごすきっかけとなりそうなことを、お知らせすることです。

世界に広がる平和ブランド

分かりにくくしているのはまず、世界の大状況がひっくり返る最中であることです。今まで世界の秩序を自分の力で保ってきたアメリカが、パックスアメリカーナ(アメリカの力による平和)が、力を失ってきたのが混迷の始まりです。

日本は戦後の長い冷戦期、基地の提供とその代償の形での駐留米軍による安全保障。このギブ・アンド・テイクで安全保障をアメリカに任せ、ひたすら経済的繁栄を追っていきました。アメリカは普通の平和な国に日本を作り替えようと憲法9条を盛り込みました。

与えられたとはいえ、戦争の惨禍から立ち直る心柱として、日本人はこの世界に例を見ない平和主義を自ら立ち上げました。最低限の自衛力保持と平和主義の整合性を、解釈の形で取り、70年間平和主義を支えてきました。安倍さんの母方の祖父岸信介を除いて保守、革新を問わず、この平和主義を国是としてきました。

この平和ブランドは世界に広まりました。その一つの例にイギリス・BBCが2005年から実施している世界好感度調査を上げましょう。世界24か国、約24500人が調査対象で、対象国は16か国とヨーロッパ連合(2014年度)。日本は世界に良い影響を与えている国で第一位を占めていたのが13年4位、14年5位と毎年順位を下げました。

急落の始まりは、第2次安倍内閣が成立したのが2012年12月ですから、時を同じくしています。調査対象国は、日本から遠く離れた国、新興国も含んでいます。平和憲法を知らない人もいたでしょう。

「ソフトパワーで世界とかかわっている国が良い印象を持たれている」「軍事力を行使したり、それに頼っている国が悪い印象を持たれたようだ」。調査に当たった国際調査機関、米メリーランド大国際政治意識計画のスチーブン・カール所長の言葉です。

知らず知らずのうちに70年たった平和憲法を持ち続けた空気が、世界に広まり定着した結果です。安倍さんが登場した後の変化を、鋭く読み取られた証拠と言えるでしょう。

性急な憲法改正派が主流に

朝日新聞の調査では

・立候補者の63%が憲法改正に賛成、そのうち

自民97%、維新98%、希望85%、公明64%。

・9条を残し自衛隊を明記する自民改憲案への賛成派は

自民76%、維新88%、公明23%。

・性急な改正を望む次の衆議院議員の任期中が(2012年10月まで)

維新89%、自民45%。

・時期についてこだわらないと、慎重審議を求めたのは

公明、立憲100%、希望82%、自民55%、

 

こういった現在の候補者の姿勢にかかわらず、自民が圧勝すれば安倍さん主導で憲法改正が一気に進む恐れが強いのです。

私も、現憲法に改正すべき条項があると思います。憲法は一旦変えてしまえば、朝令暮改というわけにはまいりません。慎重、熟慮の国民的討議が不可欠です。

安倍さん個人の祖父岸さんから受け継いだ「与えれた憲法を持つのは恥だ」という個人の思い入れを、自分の任期中に果たすというのは、まったくの専横、独裁者の姿勢です。

これを押しとどめるのは、安倍さんの独断専行に政党単位で待ったをかける、勢力の結集が必要です。投票の際の重要な留意点でしょう。

北のミサイルを追い風に

安倍さんにとって願ってもない追い風となったのが、北朝鮮が生き残りをかけて急ピッチで進めている核ミサイル開発です。

日本上空をミサイルが通過と言っても大気圏外。まず実害が起こりえないのを知りながら、Jアラートの発令を頻発して、いたずらに恐怖感をあおりました。発令地域も意図的でした。9月15日のミサイル発射時のJアラートは、北海道南端上空を飛びすぎたのに、群馬県、長野県まで発令しました。発令すると影響が大きく、かえって反撥を呼ぶ首都圏は避けたのです。

北朝鮮の“脅威”を「国難」に格上げ、危機感を扇いで、森友学園、加計学園問題に蓋をして「イカの墨」と揶揄されました。

でも、選挙広告では「この国を、守り抜く」「北朝鮮の脅威からあなたの家族をまもる」と臆面もなく訴えました。争点の巧みなすり替えで、“国難突破は安倍しかいない“と世論を誘導し、支持を広げたのです。

幼い子供たちに頭巾をかぶらせ、机の下にもぐらせるテレビを見ました。これが家族を守り抜く姿ですかと質したくなります。

本土大空襲を前にして、高性能油脂焼夷弾に飛び口、火たたき、バケツリレーで立ち向かわせた戦争内閣以上の茶番劇です。

こんな怖がらせて、支持を集める手口に乗ってはなりません。

少し考えてみましょう。こんな時、反対側の立場に立って考えてみるのも一法です。もちろん、北朝鮮の核ミサイル開発を許すものではありません。相手の立場に立てば、解決法が見えてくるからです。

第一に指摘したいのは、北朝鮮はあと一歩で完成するアメリカ本土に到達する大陸間ミサイルと、搭載する核弾頭の完成まで、絶対に交渉には応じないということです。これを止めるのは制裁強化では間に合いませんし、効き目がないです。一番効果的な石油を止めるのも、それをしのぐロシアという手段を持っています。

唯一の方法は実力行使です。

しかし、それで全部の核ミサイルをつぶすのが軍事的に難しいだけでなく、彼らは日本、韓国という人質を取っています。全面戦争は彼らにとっても焦土となるという選択ですからやらない可能性が大きいでしょう。

ですが、日本は50基もの無防備の原発を持っています。そのいくつかに通常弾頭の中距離ミサイルが撃ち込まれる。それだけでも福島原発事故に匹敵する被害を受けます。

北朝鮮が目的としているのが金正恩体制の存続です。日本が降伏するとき唯一絶対の譲れない条件とした「国体維持」、天皇制の存続を思い浮かべれば理解できます

戦ってはならぬ北朝鮮

北朝鮮とはどんな困難があっても、戦うことはあってはならない相手です。安倍さんには百の安全の口先よりも、圧力の先にある話合いの段取りを見せてもらいたいものです。

外交交渉で役に立つのは、中国とロシアです。プーチンは今北朝鮮が一番頼りにしている人物です。締め上げを狙うアメリカの鼻先で命綱の石油を送り、朝鮮半島、東アジアでの影響力の拡大を狙っています。プーチンは、対アメリカの局面ではロ中の連帯をうたっています。

ですが、本当の懸念は東アジア、中でもシベリアへの中国の影響力の拡大です。それを抑えたい。そこに日中を計りにかけたプーチン戦略があります。

プーチンとの顔合わせの多さをうたう安倍イニシアチブがすぐにでも働ける場です。

何よりも重要なのは共産党大会を終えて権力基盤を固めた中国習近平との対話です。世界各国首脳との会談実積を外交力として安倍さんは選挙でウリにしました。数だけではだめです。最も日本の命運にかかわる習近平と話したのが、すべて何かのついで会談です。定期的相互訪問、必要なら随時会えるような関係の構築が重要です。

 混迷から多極化へ

冒頭に、いま世界は混迷の最中にあると書きました。アメリカを中心とした一極構造から、多極構造に移る過渡期の状況だからです。

同時にいままで多かれ、少なかれ拠り所としてきた自由と民主主義という規範が、トランプの出現に象徴されるアメリカでぐずれるかの姿を見せています。さらにこの価値観の源泉であったヨーロッパでも、自分だけ良ければという勢力がのさばり始め、普遍的な価値観がなおざりになるかの様相を見せ始めています。

修正を重ねながら人々の生活を支えてきた資本主義がグローバリズムという名の下で国境を越えた少数者への富の集中を招きました。

どこの国でも貧富の格差が急速に拡大しています。

生きる道を何に頼るべきか、暗中模索の時代です。

中国は習近平が「世界最高水準の総合的国力を持ち、文明的で国民がともに豊かな「社会主義現代化強国」を目指す」と宣言しました。

アメリカに替わる価値観に裏付けた21世紀の超大国宣言です。

でも、大きな疑問が残ります。みんながともに豊になり、平等に暮して行けるのでしょうか。そんな暮らしの大前提は言論の自由です。価値化をめぐる戦いはこれからも長く続くでしょう。多極化への移行とともに進む長い道です。

この大状況の中でアメリカは、簡単に舞台から降りません。アメリカ第一をうたうトランプも、この視点からオバマから受けついだ構想、世紀の成長源アジア重視を続けるつもりです。

立ちはばかるのは西太平洋での勢力を確立したい中国です。軍事的側面も含めてアメリアにとって不可欠なのは日本との連携です。

安倍・トランプ蜜月の演出はしたたかな計算に基づいています。

安倍さんもさるもの、そこを見抜き、利用して多極化の世界の中での大国の基盤の確立を目指しています。実質国防軍の創設になる安倍流九条改正の狙いはここにあります。大国に不可欠の要件は戦える軍事力の保有です。死ぬ可能性が一段と高まる国防軍を志願制度で維持するのは難しくなります。国民の義務を振りかざした徴兵制は絵空事ではなくなります。

 立て灯し火を掲げる者よ

この混迷の時代こそ70年かけて作り上げ、国際ブランドにいつの間にかなった平和主義の出番です。混迷の世界を照らす戦争も核もない、助け合って生きる道を求める共生の世界です。

理想の実現は遠いでしょう。我々のリーダーは愚直に、しかも現実的にこの理想を掲げ、目指す者を選びたいです。完璧は期待しませんし、あり得ません。ぶれずに、灯をかざす人をです。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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