2015年10月2日
記事に寄せられたコメントへの返信を兼ねて
ここ数編、参院特別委での安保法案の「採決」なるものはなかったと訴える記事を書いた
とこ ろ、多くの皆さまからコメントをいただいた。その都度、返信のコメントをできず、
申し訳ない 気持ちだった。そこで、この記事では、K.Kさんからいただいたコメントを
紹介し、返信に代え たいと思う。
K.Kさんのコメント(9月30日)
「9月17日は参院特別委の様子をNHKの実況中継で見ておりましたが、田中泰臣・政治部
記者の解説は採決が行われたという既成事実を作り上げる意図が『透けて見える』どころ
か『そ れ以外の何物でもない』発言の連続で、与党の暴走と共に中立な報道ができなく
なっている公共 放送に対して恐怖を感じました。
あのでき事『採決』とされてうやむやになればエスカレートする政権に対しておとな
しく従 ったことに等しく、『これについては目下、対応を検討中である』との力強いお
言葉に賛同させ て頂きます。」
9月17日の実況中継の中で田中泰臣記者が語った発言の重大性はKさんも指摘されるとおり
で、私も一つ前の記事で書き留めた。
田中記者は何度か、「採決が行われているようです」とか、「可決された模様です」と
発言した が、その日の23時半からのNHK NEWS WEBに出演した田中記者は、松本正
代アナウンサー やネットナビゲーターのドミニク・チェンさんと興味深いやりとりをし
ている。
http://newskeimatomedouga.blog.fc2.com/blog-entry-39422.html
(07分12秒あたりから)
「私自身も何が行われているのかわからない状況でした」
(画面に映し出された視聴者からのツイート)
「今回の採決、議事録は取れているのでしょうか? 委員長、何を言っているのか全く
わかりま せんでしたが。」
「採決の映像は子供たちに見せられないと思ったのは私だけですか?」
(チェンさん)「(上記のツイートを読み上げた上で)あの場面の混乱の中でどういう
ことが行 われたのか、どういうことが判断されたのか、改めて聞かせていただけるで
しょうか?」
(田中記者)「私も採決の瞬間に生放送で解説をしていたんですが、私自身も今、何
が行われ ているのかということが正直言ってわからない状況でした。・・・・」
やっぱりそうだったのか、と納得している場合ではない。今、何が行われているのか、自
分でも わからない状況で、何について、「採決が行われている可能性が高い」とか、「可
決された模様で す」などと、どうして言えたのか? しかも、事は、各方面から違憲の疑
いが強いと指摘された法 案の帰趨にかかわる場面だったのである。
結局、田中記者は、実況中継の中で2度、繰り返したように、与党理事あるいは委員への
事前 の取材で、委員長不信任動議が否決され、鴻池氏が委員長席に戻るや、直ちに与党委
員(実際は山 本一太委員だった)から質疑打ち切り動議が出され、それが可決されるとす
ぐに法案の採決に入 るという進行シナリオを知っていたことから、委員長の姿が見えなく
ても、委員長の議事進行、 表決宣告の声が聞こえなくても、事前のシナリオにそって議事
が進んでいるものとみなして、「 採決が行われている可能性が高い」などと奇妙な発言
をしたものと思われる。
与党の筋書きをなぞる解説
しかし、参議院規則などどこ吹く風かのように、実況放送のさなかに、議事の模様を把握で
き ないにもかかわらず、与党の進行シナリオに頼って、憶測で法案の「採決」「可決」を
予断して発 言することは、「NHKのニュースや番組は正確でなければならない。正確であ
るためには事実を 正しく把握することが欠かせない」と定めた「NHK放送ガイドライン
2015」に明確に反して いる。
さらに、田中記者が、拙速な「採決」「可決」の速報を実況放送のさなかに発信したこと
は、委 員会閉会の直後から、「採決」の存否をめぐって与野党が真っ向から対立した問題
について、参 議院規則を蹂躙する形で行われた架空の「採決」なるものを、あたかも実
在したかのように正当 化し、既成事実化する役割を果たしたと言って差し支えない。これ
は「放送は政治的に公平でな ければならない」と定めた「放送法」第4条第2項にも反する
重大な過ちである。
初出:醍醐聰のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3100:151003〕