7僕は、安倍内閣・自民党の愛国心や伝統へのこだわりを失われそうなものへの単なる称揚と考えていたが、それは甘すぎた。愛国心は日本人にとっての第1の価値を国家におくべきとする考えに根がある。天皇を国家元首という発想では、天皇が日本国を代表することになろう。帝を代表とする国は「大日本帝国」となる。基本的人権は、この日本帝国とその元首の下位の価値になる。人々は様々な権利を有し、それを使用する権利は認められるがあくまでも日本帝国と元首に反さない限りと言うことになる。帝に代わって実際の日本帝国の意志を代表するのは内閣総理大臣のようだ。実際、すでに安倍総理は賃上げを経済界に要請(命か?)し、各種の耳障りの良い政策を総理大臣自らが各省大臣の頭越しに声明している。
なぜこのような方向に日本の人々を連れて行こうとするのかよく説明されていない。せいぜい、現行憲法は連合軍(主に米軍だが)が勝手に創り日本国民に押しつけたものだから、改めなければならないという話だけである。これも自己矛盾いっぱいの言説だ。押しつけられ改正?すべき憲法の下で選挙された政党・議員がまともな日本国民の代表面をする。本来なら、押しつけ憲法で60年余も続いた日本社会を現行憲法に依らずに根本から変えねば筋が通らない。
ただ、このような異常な言説・主張は現在の日本人にはわりと通り易いのではないか?!僕のような
70代後半に入った高校同期辺りの人間は、われわれ日本人の祖先だからと歴代の天皇の話をし、
縄文の人間をどうすると問うと沈黙する奴もいれば明治憲法の方が良かったと言うのもいる。現行憲法で育ったお前の自己否定になるぞと注意しても「構わない」というだけだ。自分たちが事実上享受してきた「基本的人権」を現在の世の中の混乱の原因と観ている。このような風潮からすると大日本帝国憲法は至極簡単に実現するとしか思えない。
ただ、このような価値観を前面にした日本帝国は欧米からは嫌われるであろう。類似の価値観の中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国からも大いに警戒されるであろう。他のアジア諸国も離れてゆくであろう。満州事変以後の日本の再現だ。これは悲劇に終わったが今度は喜劇か?悲劇であろうと喜劇であろうと間違った指導に付き従う限り被る悲運は変わらない。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1287:130505〕