目前の都議選は、オリパラ開催可否の民意を問う投票となる。

著者: 澤藤藤一郎 さわふじとういちろう : 弁護士
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(2021年5月31日)
 東京都議選の告示は6月25日だが、事実上の選挙戦は既に始まっている。投開票の7月4日は東京五輪開会式まで20日たらず。この都議選、今秋総選挙の前哨戦であるよりは、東京オリパラ開催可否の民意を問う住民投票という性格が強い。

本日の毎日新聞コラム「風知草」(山田孝男)に、こんな注目すべき一節がある。

 菅首相はなぜ、五輪中止と言わないか。菅の心境を知る人物に聞くと、「いろんな人が努力してやってきたから」という。
 「いろんな人」の筆頭は安倍晋三前首相だろう。安倍は五輪を成長戦略の柱に据えた。陣頭指揮で招致に成功、経済界と国民を鼓舞した。菅は安倍に仕え、安倍の支持を得て総裁選に勝利。長期政権8年を支えた人脈がなお五輪実現で結束しており、菅の一存では動かない――らしい。

アベ人脈の意向が壁で五輪中止とは言えない…のであれば、都民の意思で言わせるしかない。都知事選がその絶好の機会ではないか。

東京新聞5月25日の「都民意識調査」の結果が、極めて興味深い。

問1 あなたは東京五輪・パラリンピックについてどう考えますか。(数字は%)
 観客を制限して開催する     17.3
 無観客で開催する        11.0
 中止する            60.2
 どちらともいえない・わからない 11.5
問2 菅義偉首相は五輪・パラリンピックについて「国民の命や健康を守り、安全・安心の大会を実現することは可能」と説明していますが、納得できますか。
 納得できる           13.2
 納得できない          67.2
 どちらでもない         19.6
問3 あなたは政府の新型コロナ対策を評価しますか、評価しませんか。
 大いに評価する          3.8
 ある程度評価する        17.0
 あまり評価しない        34.3
 全く評価しない         42.9
 わからない            2.0

 過半の都民の意思は、政府のコロナ対策を批判し、オリパラの中止を求めているのだ。そのような政策を掲げる政党・候補者の選挙戦勝利が現実化すれば、政権に打撃を与え、オリパラの中止を実現することが可能となる。そのことが、コロナの蔓延再拡大を抑制し、多くの人命を救うことにもなる。

 では、オリンピックの中止についての、各政党の姿勢はどうなっているか。東京都議会文教委員会は先週金曜日(5月28日)、東京五輪・パラリンピックの中止を求める陳情について採決した。共産、立憲民主が賛成したが、少数で不採択となった。反対にまわったのが、都ファ、自民、公明である。

 賛成討論で、共産は「都も国も新型コロナウイルス対策に全力を挙げるべきだ」とし、立民は「都民、国民に理解と協力を得るための努力も十分ではない」と、それぞれ採択を主張した。注目すべきは都ファの「反対討論」である。「再度の延期も含むあらゆる選択肢を視野に入れるべきだ」と言うのだ。けっして、「断乎開催」の主張ではない。それでは都民の支持を得られないことが自覚されている。そこで「再延期」という中途半端な選択肢。なお、自・公は発言をしていない。

さらに注目すべきは、都ファの「特別顧問」となっている小池百合子の意向である。小池は、同日(5月28日)の定例会見で、オリパラの再延期は困難とニベもない。それどころか、この特別顧問氏、いまだに来たるべき都議選で、都ファを「支援する」とは口にしていない。

2017年の前回都議選では、小池が率いる「都民ファーストの会」が公明党と組んで大勝し、孤立した自民が大敗を喫した。今回選挙は構図が一変。自公が再連携して都ファが孤立している。小池は、今に至るもその都ファへの支援を鮮明にしていないのだ。

結局、議会最大勢力の「都ファ(現有46議席)」に、「自・公(現有48議席)」と「共・立(現有18+6、計24議席)」が挑むという、3ブロックの争いになる。オリパラ中止のためには、「共・立」ブロックの勝利が必要だが、その条件が見えているのだ。

都民のオリパラ中止世論の追い風がある。先に引用した東京新聞の「都民意識調査」の予定投票先政党を問う設問に対する回答をご覧いただきたい。

問7 もし今、都議選で投票するとしたら、どの政党・政治団体の候補者に投票しようと思いますか。
 都民ファーストの会     9.6
 自民党          19.3
 公明党           3.4
 共産党          12.9
 立憲民主党        14.0
 東京・生活者ネットワーク  1.6
 日本維新の会        3.4
 国民民主党         0.5
 旧N国           0.5
 れいわ新選組        2.0

「都ファ(現有46議席)」はわずか9.6%。おそらくは惨敗となる。「自・公(現有48議席)」は合計22.7%。対して、「共・立(現有24議席)」が計26.9%と最大勢力となっている。大いに、期待して良いのだ。

なお、あと二つの設問を引用しておこう。都民の菅政権に対する評価は、極めて厳しいのだ。

問5 医療従事者や高齢者へのワクチン接種が区市町村ごとに行われています。あなたはワクチン接種が順調だと思いますか。
 順調だ           4.1
 どちらかといえば順調だ  13.9
 あまり順調ではない    35.3
 まったく順調ではない   43.2
 わからない         3.5
問9 あなたは菅義偉内閣を支持しますか、支持しませんか。
 支持する         16.1
 支持しない        64.4
 わからない        19.5

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.5.31より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=16969
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion10958:210601〕