相次ぐ米軍機からの部品落下~沖縄の「空の強制接収」のなせる業~

2015年4月11日
 
米軍機からの相次ぐ部品落下~全国ニュースは伝えないが~
 矢部宏治著『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』(2011年)という書物があるが、最近、沖縄で頻発している米軍機からの部品落下はその一例といえる。これについて、昨日(2015年4月10日)、NHK沖縄放送局は次のようなニュースを伝えた。

 

「米軍に機体総点検求める」

(NHK沖縄放送局 2015年4月10日 19時02分)

http://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/5093804141.html?t=1428717108808

 要点は次のとおりである。
 「沖縄では、先月、嘉手納基地に所属するアメリカ空軍の偵察機が飛行中に重さ900グラムの部品を落下させるなど、ことしに入って同様のトラブルが6件相次いでいます。こうした事態を受けて、嘉手納基地がまたがる沖縄市、嘉手納町、北谷町 の市長や町長、それに議会議長が、10日午前、基地の司令部を訪れ、部品を落下させ たのと同じ型の機体の総点検と住宅地上空での飛行停止などを申し入れました。」

 

 NHK沖縄局は3月17日にも「米軍機部品落下相次ぐ」という見出しのニュースを伝えていた。

 「嘉手納基地を拠点に活動しているアメリカ軍の偵察機が16日、飛行中に重さ900グラムのパネルを落下させていたことがわかりました。」
 「県内では、ことし1月に普天間基地所属のヘリコプターが200キロあまりの部品を海上に落下させたほか、16日にも、普天間基地のオスプレイからアルミ製の部品が落下していたことがわかるなど、アメリカ軍機による部品落下はことしに入って、6件目です。
 「翁長知事は17日夕方、県庁で記者団に対し、『相次ぐ部品落下は、怒り心頭で、残念の極みだ。どんなに抗議をして原因究明を求めても、納得いく答えが返ってこない。今後は抗議の仕方も考えなければならない』と述べました。」

 しかし、NHKは、私が調べた限り、全国ニュースでこのような出来事を一度も伝えていない。この問題について『琉球新報』は3月18日の社説で、次のように米軍を断罪している。
「<社説>米軍機部品落下 沖縄の空飛ぶ資格なし」

 (『琉球新報』2015年3月18日)

  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240481-storytopic-11.html
 「極めて危険な事故が起きていたにもかかわらず、米軍が日本政府に連絡をしたのは発生から4日後の16日だ。しかも米軍海兵隊は原因を明らかにしないまま飛行停止の措置も取らず、沖縄の上空でオスプレイの飛行を続けている。」
 「昨年3月からことし3月までの1年間で米軍機の部品落下事故は16件も発生している。ことし1月には普天間基地所属のAH1攻撃ヘリがミサイル発射装置など200キロの部品を落下させている。沖縄の空は米軍機の部品が頻繁に降ってくる異常な状態に置かれている。」

自衛隊の外郭誌も強い懸念 
 しかし、部品落下といっても、まだピンと来ないむきもあるかと思う。この点で紹介したいのは、自衛隊の外郭誌と言われる『朝雲新聞』が今年の2月19日号のコラム欄<朝雲寸言>に掲載した記事である。その中で、コラム子は次のように記している。

 

 「ミサイル発射装置は論外だが、5キロを超す部品が航空機から落下し、地表や海面に激突するときの衝撃を想像しただけでもゾッとする。しかも、嘉手納基地のF15だけで、昨年5件の部品落下事故を起こしているというから驚きだ。

 『あきれて言葉が出てこない』と憤る地元首長らの気持ちは十分理解できる。・・・・ガイドラインの見直し協議で、日米両政府は顔を突き合わせている。苦言を呈してほしい。」

沖縄の空の危険負担はむしろ増している
 政府は沖縄県民に向かって、ことあるごとに「沖縄の基地負担の軽減」を口にする。しかし、沖縄の危険負担は「地上の」基地だけではない。ほんのわずかな面積の西普天間基地(全体の5%)が返還されても沖縄の空(空域)を米軍が好き放題に使う状況を止めなければ、基地の危険は去らず、基地負担は軽減されない。
 現在、沖縄周辺には28カ所の水域と20カ所の空域が訓練区域として米軍の管理下に置かれている。そして、ほとんどは早朝から夜間まで区域内への立ち入りが制限されている(詳しくは、沖縄県「沖縄の米軍基地」参照)。
 これについて『琉球新報』は昨年7月18日の社説で次のように指弾している。

「飛行制限拡大 どこが『負担軽減』なのか」
(『琉球新報』社説 2014年7月18日) 

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-228680-storytopic-11.html
この中で、社説は次のように記している。
 「米軍キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブにまたがる中部訓練場の上空で、米軍が民間機の飛行制限空域を拡大する方針であることが明らかになった。海兵隊の基地運用計画『戦略展望2025』で記している。
 県民を締め出す空間を一層広げようというわけだ。これを認めるなら日米両政府は今後一切「負担軽減」と口にしないでもらいたい。
 現在の飛行制限空域はキャンプ・シュワブ上空で高度608メートルまで、ハンセン上空は912メートルまでだ。計画書はそれを『raise引き上げる』と記す。どの高さまで上げるかは判然としないが、制限を拡大する方針なのは間違いない。
 この『空域の再設計』によって『小火器を使った質の高い効果的な訓練ができるようになる』と書いている。おそらく、小型武器の届かない高さまで上昇した攻撃型ヘリによる対地攻撃訓練を想定しているのだろう。」
 「そもそも沖縄はおびただしい制限空域・海域に囲まれている。制限空域の総面積は9万5千平方キロ、沖縄の県土の42倍にも及ぶ。
 それをさらに広げるというのだ。言い換えれば、沖縄の主権剥奪をさらに進めることになる。それなのに沖縄側の意見を一切聴こうとせず、米国が勝手に決め、日本政府も容認している。この態度の中に、民意を重んじる民主主義の精神は存在しない。日米両国はこれでも民主主義国と言えるのか。」

 

基地あるがゆえの沖縄の危険負担は「地上での負担」にとどまらない。「水上での負担」、「空の負担」「空から危険」もあわせ、全体を見据えなければならない。
 アメリカ軍による接収は「土地の強制接収」だけではない。今、辺野古沖で進められている新基地建設は「海の強制接収」であり、度重なる米軍機からの部品落下は沖縄の「空の強制接収」のなせる業であることを直視しなければならない。

 

初出:醍醐聰のブログから許可を得て転載

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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