革命の組織論⑦
① 日本共産党は「余命3年」?
世界で唯一生き残ったコミンテルン型政党とされる日本共産党だが、選挙では議席数を減らし続けている。党員の高齢化が進み、活力のない政党になっている。しんぶん赤旗も赤字とみられ、ネット上では、「余命3年か、日本共産党が危ない」と記事が出ている。
「余命3年か、日本共産党が危ない」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/9556
日本共産党が衰退する過程と原因を執拗に追及しているのが元日本共産党員の宮地健一氏だ。
「宮地健一のホームページ」
http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/kenichi.htm
日本共産党のように公称党員数40万人、国会、地方議会で一定の議席数と社会的影響力も持つ巨大政党でも「余命3年」と揶揄される現状であるならば、もはやコミンテルン型政党=革命のイエズス会は、つくることもできないし、つくる意味もないだろう。
② シスターニ師とハーメネイ師とどちらが偉い
コミンテルン型ビジネスモデルが破たんした現在、新たな組織論を考えるにあたり、参照すべきが中央集権、上意下達、自己犠牲的献身を共産党やイエズス会のように求めないユダヤ教、イスラーム教の組織論、組織文化である。今後の革命の組織を構想すると、生活を基盤にした宗教的秘密結社とそのネットワークが一つのビジネスモデルとして構想される。
ここでイラン、イラクで支配的な12イマーム派シーア派イスラーム教の法学者間の序列を参照してみよう。
イラクにシスターニ師という大アヤトラがいる。12イマーム派の最高位の法学者だ。イランのハーメネイ師というアヤトラがいる。ハーメネイ師はホメイニ師を継承するイランの最高指導者である。しかもその身分は終身である。しかし、イスラーム法学者としてハーメネイ師はそれほど高く評価されているわけではない。したがって、大アヤトラであるシスターニ師には頭が上がらない立場である。
では、誰がアヤトラの地位を決めているのか。それは政治権力ではなく、イスラーム法学者間の評判と評価である。それに加えて、それぞれのイスラーム法学者が持っている基金(財団)に信者の自由意志による献金がどのくらい集まるかが、評判と評価の基準になる。
この仕組みでは最高権力者であるハーメネイ師が権力にものをいわせて大アヤトラになることはできない。
最高権力者であるスターリンや毛沢東を最高の理論家にでっち上げたコミンテルン型組織と違ってなんと公正で公平なことか。
シスターニ師(イラン人)はホメイニ師の「イスラーム法学者の統治論」に明確に反対した。米国占領下のイラク共和国再建にも暗黙の支持を与えた。それどころか、最近のイランの反政府デモについて、「イラン人はデモをする権利がある」との見解を示した。ところが、筆者の知る範囲では、ハーメネイ師支配下のイラン政府が、「シスターニ師は米帝国主義の手先。裏切り者」というような批判を行っていない。
シスターニ師のWEB
http://www.sistani.org/
ハーメネイ師のWEB
http://www.leader.ir/langs/en/
どちらに信者の献金が集まるかといえば、シスターニ師だという。
③ 新しいネットワークに必要なもの
1 集会所。ユダヤ教ではシナゴーグ、キリスト教では教会、イスラーム教ではマズジド(英語でモスク)、大乗仏教ではお寺と呼ばれる。個人の家や事務所でも構わない。
2 ラビ、法学者に類する人々。萬生活相談をしてくれる人々である。キリスト教の神父(カトリック)、牧師(プロテスタント)、僧侶(大乗仏教)はそうした訓練を受けていない。最近はやりの臨床心理士もこうした役に立つかどうか疑問である。
3 教育。ユダヤ教では旧約聖書、タルムード、イスラーム教ではクルアーン、ハーディスだが、これに代わるものが現代にあるか。カント、ヘーゲル、ルソー、マルクス、フーコーなどを教えても、旧約聖書やクルアーンと同等以上の効果があるか。
それならまだ論語など儒教を教えたほうがましな気がする。
ユダヤ教の格言。「子供にわかるように教えろ。何回も話せ。違った角度で話せ。たとえ話で教えろ」 何十年も読んでも、大乗仏教の経典のように、「なんとなくありがたいが、内容が理解できない」ヘーゲル哲学などが人間形成のテキストとしてふさわしいとは思えない。
4 慈善基金(財団)。イスラーム教のネットワークでは不可欠な存在である。ここでは多くの読者からの非難覚悟で、ミルトン・フリードマン的に、「政府(官僚)に税金を払うくらいなら、財団、大学、NPOなどへの寄付控除を拡大すべきだ」といいたい。
5 情報通信。機関紙はもういらない。インターネットがある。ブログ、ツイッター、フェイスブックがある。米国に盗聴されている? 確かにその可能性は高いが、気にする必要があるのか。
6 家族、一族で動く。時間軸は長くとる。子孫や一族がないと効果的に動けないし、想いを継承できない。
7 いざ鎌倉は、警備団はなく強盗団方式で。警備団は常設である。資金、人員がかかる。ボルシェヴィキ方式だ。強盗団はアド・ホック(その場、その場)方式だ。固定費が少ない。強盗団方式は呼称がよくない。現在ではPT(プロジェクト・チーム)方式と呼称される。
8 自然法には従う。人類が積み重ねた自然法=常識がある。たとえばモーセの十戒などだ。自然法を否定するとカルト集団になる。そこには家族の尊重、物権の尊重も含まれる。これ以上いう必要はないだろう。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1461:110614〕