福島原発事故とモンドラゴンの挑戦

著者: 柳原敏夫 やなぎはらとしお : 弁護士(ふくしま集団疎開裁判・元弁護団長)
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なぜそれが「モンドラゴンの挑戦」なのか?

放射能災害から命・健康を守るための第1の方策は、被ばくしないこと=放射能から避難することです。
それを保障したのがチェルノブイリ法の避難の権利です。
ただし、たとえチェルノブイリ法日本版が制定され、避難の権利が法律で保障されたとしても、その権利の実現は、お金の給付だけで解決するような単純な取組みではありません。
なぜなら、避難の権利を保障するためには、単にお金を給付し、避難先の建物を作る・借りるといったハードの問題では済まず、汚染地から避難する人々の、避難先での新しい人間関係、新しい生活、新しい仕事、新しい雇用を作り出していく、そのためには、避難先の地域創生の取組みとセットとなって初めて、成し遂げることができる、壮大な再生の公共事業だからです。

そのためには、これまでの「行政主導型の公共事業」ではもはや実現不可能であり、それに替わって、住民、市民が様々な形で協力、支援、応援をするという「市民主導型の公共事業」に進化することが不可欠です。
つまり、原発事故という国難に対し、文字通り、オールジャパンで市民が参加して、避難者と一緒になって避難の権利の実現プロジェクトを遂行していく必要があります。

その市民主導型の公共事業の中核となるアイデアが、市民が「みんなで働き(協同労働)、みんなで運営する(協同経営)」という協同組合の理念です。
これは決し空理空論ではなく、現実に、スペイン・モンドラゴンのように歴史的な経験の中で作られてきた市民主導型の事業運営の理念です。

しかも、私たちは、チェルノブイリ法日本版が制定されるまで、ただ手をこまねいて救済を待つ必要もありません。なぜなら、かつでスペイン内戦で敗北し、荒廃し、見放されたスペイン・バスク地方の寒村モンドラゴンで、みずから協同組合による経済再建に着手し、見事に再建を成し遂げたように、この協同組合の理念は今すぐ実行可能な取組みだからです。

今こそ、これらの歴史的経験に学び、大胆に、市民主導型の公共事業に挑戦する必要があります。だから、福島原発事故からのもうひとつの復興は「モンドラゴンの挑戦」とつながっています。そして、これが今私たちにとって必要な 「オールジャパン」「公共事業」を再定義することなのです。このブログは、「どうやって、市民主導型の公共事業を作り上げていったらよいか」、これについて探求、意見交換、情報共有するものです。

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初出:「柳原敏夫のブログ・もう一つの復興は可能だ」2018.02.05より許可を得て転載
https://anotherreconstruction.blogspot.jp/p/blog-page.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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