ポリティカ紙(11月8日)に、セルビアの有力な民族主義政党であるセルビア前進党の創立2周年集会がベオグラードの大ホールで29000人余を集めて開かれたと報じられた。党首トミスラフ・ニコリチは次のように演説した。わが党はEU加盟を目指して全力を尽くす。「コスメト(コソヴォ・メトヒアの略、セルビア人はコソヴォ地方をこう呼ぶ―岩田)に新しい、そして美しいモスクを建てるなら立てよ。しかし、私たちはグラチャニツァ(コソヴォにおけるセルビア正教会の最も大切な修道院―岩田)を移すことはない」。この意味は、この記事の大見出し「誇りを捨ててまでEUに入るつもりはない」の通りである。
岩田にとって興味深いのは、集会参加者たちの各国代表者たちへの反応である。大使が出席した国々は、アルジェリア、モンテネグロ、デンマーク、イスラエル、メキシコ、ノルウェー、パレスティナ、キューバ、ロシア。大使館代表が出席した国々は、中国、フランス、ドイツ、ハンガリー、日本、オーストリー、インドネシア、チュニス、スロヴァキア、トルコ、ルーマニア、クェート、フィンランド、アンゴラ。
ロシア大使アレクサンダル・コヌジンは、雷鳴のごとき拍手喝さいで、キューバ大使と中国大使館代表は、格別に温かく迎えられた。ところが元駐セルビア・アメリカ大使ウィリアム・モンゴメリー、アメリカ大使館代表、イギリス大使館代表、全欧安保協力機構使節には、一斉のブーイングが浴びせられ、集会組織者の党幹部が一般党員たちの無礼をとがめ、各国代表への拍手を求めたおかげで、儀礼的な拍手を受けられたのである。
日本国大使館代表へは、ブーイングも熱烈歓迎もなかったようである。さびしい限りである。日本は、経済、技術、文化の面でバルカン諸国で高く評価されている。例えば、ベオグラードやサライェヴォの都市交通において重要な役割を内戦後果たしてきた黄色のバスは、日本の贈り物として市民によって感謝されている。しかし、国際政治の面では評価の外にある。尖閣列島近辺における中国漁船による領海侵犯問題で中国の不作法な振る舞いがここでも周知になった直後でさえも、個々の大衆的ナショナリストは、日本よりも中国に期待する。日本の国家性がアメリカのそれに覆われている(ように見える)からである。
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