最近、東京大学社会科学研究所が日本生産技能労務協会という派遣業の業界団体を通じて、請負社員と派遣社員にアンケートをとったんです。
朝日新聞十月十三日朝刊は「製造業派遣 原則禁止 派遣社員の五五%『反対』『雇用機会増えない』東大調査」の見出しで大きく報道しました。
私はこの記事を読んで東大までもが派遣法改正案にある製造業派遣禁止をはずそうという動きのお先棒担ぎをしているのかと驚きました。
韓国では2年続けて派遣すると一時的なものではないので直接雇用の社員にしろと大法院から判決が出されています。
派遣切りにあったキヤノンやパナソニックなどの派遣労働者の当事者たちは派遣法廃止を言っています。日本の裁判所はキヤノンやパナソニックなどの偽装請負を認めても、派遣先には雇用責任はないという判断を出しています。
彼らは、派遣法は改正でなく廃止すべきだと主張しています。非正規差別をなくすには韓国のような粘り強い闘争が必要です。私は日本の労働運動を新しく作り直す唯一の可能性があるとすればユニオンや合同労組だと思います。
現在のデフレを脱出するには、若者の正規雇用と賃金の底上げ、女性と高齢者が安心して働けるような雇用を保証することが先決です。
新運転執行部は、職安法、労基法、労組法など今の法律は企業内組合を対象につくられているので新運転のような組合には全面適用されないと平然と言っています。新運転の組合員は、日々雇用の連続なので何年働いてもみな年金もかけてもらえません。私のようにわずかな国民年金をもらえるだけでもうらやましいと言われます。労供事業は非正規のはしりですね。労供事業の腐敗と派遣法成立は期を一にしています。
裁判でも明らかにされた「事故防」(労働福祉・事故防止対策協議会)は業者のためのリスク回避の共済組織です。設立当初は日当から「事故防」に100円天引きされていましたが、83年には200円に値上がりしました。事故防ができてダラ幹と業者の癒着が強まり、組合員の賃金は抑えられ、闘う労働者や会社が気に入らない労働者は仕事を干され、新運転は公共清掃労組のスト破りもやっています。
業者と癒着した新運転に私たち新運転・運転者ネットの有志が組合執行委員長を団結権侵害で訴えて、組合の民主化を求めて闘っています。最初は、新運転は特殊な組合なのでよそは関係ないだろうと思っていました。この裁判を通じて労働組合の民主主義とは何かを考えさせられると、あちこちから話を聞かせてほしいと声がかかっています。
そして今度は、組合の民主化を求める私たちに、新運転執行部は執行委員会の決定に従わない者は統制処分にかける規約改正を十一月の大会に上程しようとしています。.執行部を批判する者は組合から排除するということです。団結権は基本的人権です。組合の統制に服せというやり方は基本的人権を侵害するものです。組合の民主化は、執行部を批判できる組合員をつくること、自由に批判して討論することだと思います。民主的な討論が保障されなければ分派は必ず発生します。
これはどの組合にも共通しているものです。労供事業を認められている労働組合は、職安法、労基法、労組法を守る民主的な組合でなければなりません。
今、既成の労働組合が総崩れになっています。労働運動を新しく作り直さなければ日本の世の中は変わりません。労働運動と地域の運動をどのようにつなげていくのか対立ではなく非正規労働者との連帯が必要です。
初出:「労働者通信」第248号より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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