―脱原発から新しい生活文化の構築へ―
去年の12月から今年の2月にかけて「9条改憲阻止の会」の三上治さんの協力を得て、部落問題研究の川元祥一さんを中心に、「テント村談話室」と名づけて脱原発のための4回の連続講座を開催いたしました。各回のテーマは、2011年12月27日の「半減期に学ぶこと」、2012年1月30日の「共生の思想を語ろう」、2月13日の「原発は未完の文明」、そして最後の2月27日は詩人の高良留美子さんに「出生と死と再生の文明へ」と題して語っていただきました。連続講座の終了後、講座の継続を希望する意見もあり、共通の意思のもとに再び新しい企画を皆で考えていくことになりました。そこで、以下のように呼びかけたいと思います。
昨年の3・11の東日本大震災、続く原発震災は、私たちに近・現代が営々と築き上げてきた文明の問い直しを迫っています。それは明治維新以降、西洋から日本人が受け容れてきた科学技術の論理、そして戦後の経済成長のあり方がまさに折り返し地点に立っているのではないかという認識です。物質的な豊かさを何かを犠牲にして追求し続けること、それが格差社会を帰結してしまったこと、これらの思いは3・11以前にも私たちの胸の内に生じていました。けれども原発震災は、科学技術と経済成長がそれぞれ「信仰」と「神話」に彩られていたことをまさに劇的な形で暴露したのでした。
何のための科学技術なのか、どこへ向けての成長なのか。こうした疑問は、私たちが日々営んでいる普通の生活のなかで問いかけていくべきではないでしょうか。それらは教育・福祉・医療・介護、さらに出産・育児・家事などの膨大な営みそれ自体の課題と直接に結びついています。今までの人間不在の技術・経済至上主義は、すでに行き詰まっています。この行き詰まりは、私たちが命と健康に関わる安全性を専門家と称する人々の組織や知識に信頼を置き過ぎたためにきているのではないでしょうか。国家レベルの行政や専門的な知識はある時には必要ですが、いつも「文句を言っている」だけでは私たちの生活はもはや守れなくなりました。そして原発震災は、専門家の言う「安全」がまさに「神話」であったことを明らかにしました。
それでは新しい文明や生活のあり方を、どのような方向で立て直していかなければならないでしょうか。それは、「価値ある生活社会をどのようにして作り出していくのか」という課題です。私たちはこの方向性を、「人間と自然が調和し、再生できる生活文化と経済社会」、あるいは「再生可能な生活文化・文明への転換」に求めていきたいと考えています。人間は時代の変遷に関わりなく、自然のなかから富を引き出し、同時に自然の災厄から身を守る知恵を育んできました。それは近・現代に至るまでは自然の法則に則って、それを維持していくことに配慮して行われてきました。私たちの言う「再生」とは、この意味に他なりません。そしてそれを現代において模索し、共通の価値観とすることです。けれども原発震災は、こうした人間と自然との根源的な関係性を再生不能なまでに破壊してしまいました。
現代において「自然と調和する再生文化・文明」は、国家的な規模の空間よりむしろ地域コミュニティのなかで、そして地域コミュニティ間の連携にこそ実現への可能性が活かされるものと考えます。都市を含めた農村・漁村・町・部落などの協働によって、その地域の生活文化の伝統を活かした価値を実践・開拓していかなければならないでしょう。そしてその地域の、あるいは地域間の固有の生産・流通・消費の形態は、人間と自然との関係から何世代にもわたって培われた固有の風土に基礎づけられたものでなければなりません。この意味で「生活者」とは、その地域コミュニティに住まう「住民」のことに他なりません。
脱原発へ向けた、さらには脱原発後の生活社会のために今まさに議論を呼び起こしていく時ではないでしょうか。私たちは皆でそれぞれの場所から、知恵を出し合ってともに語り、学び、そして行動していくための新しい場を作り上げていきたいと考えました。福島をはじめとする各地に足を運び、そこで多くの方々から学ぶことも必要です。誰でもが疑問と提言とアイデアを持ち寄り、連携することのできる協働のネットワークを広げていきませんか。共感と行動の応答を心から望んでいます。私たちはここに、呼びかけ人、賛同者を募りたいと思います。
ぜひ、御意見をお寄せください。
呼びかけ人(4月6日現在)
川元祥一、高良留美子、岩見照代、三上治、橋本盛作、岡本健次郎、伊藤述史、多井みゆき、長内蕾、清家竜介、米村健司(順不同・敬称略)
テント村談話室・日程
① 4月19日(木) 午後1時から3時まで
話題提起者 石田伸子さん 「放射能線量について」
② 4月28日(土) 午後5時から8時まで
「替え歌と討論の会」
③ 5月28日(月) 午後3時から5時まで
話題提起者 高良留美子さん 「二十歳の思考―女と男について考えたこと」
④ 6月25日(月) 午後3時から5時まで
話題提起者 高良留美子さん 「リブ再考―3.11から考える」