緊急の救援と復旧そして復興のために

著者: 三上治 みかみおさむ : 社会運動家・評論家
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 過日、友人の主催する演劇を見に出掛けた。こういう時期によく開催したと思ったがいつもより解放感を得た。「今年の桜はかわいそうだね」とは女房と散歩のついでに口から出たものだが、春を待ってせっかく咲くのに気持ち良く愛でてはもらえないだろうと思えたからだ。僕はかつてのような巨人ファンではないがプロ野球もなるべく早く開幕して欲しい。原発の危機とその波及が重くるしい気分を加速させている東北関東大震災ではあるが、僕らは過度な自粛ムードにならない方がいい。僕らはなるべく変わらない日常を送った方がよいのだ。救援や復旧のために迅速で有効な策を講じてもらいたいが、このことと僕らが自粛ムードに同調することは別である。僕らが可能な限り変わらぬ日常を送ることが被災地の人々の望むところであるのだ。

  報道を見ている限り救援や復旧は少しずつ進んでいるようだが、他方でこの震災の被害の大きさも明らかになっている。予断を許さない福島原発の動向であるが、これも含めて今回の震災が未曾有のことであることは明瞭である。救援や復旧について僕は身近で出来ることをやりたいが、やはりこういう時期こそ期待されるのが行政などの諸機関の働きである。政府をはじめ緊急の体制を持って望み政党は協力体制を敷くべきである。菅内閣に対する不信と彼らに果たすべく役割を要求することは別であり、そのことは国民もよく分かっているのだから野党もそこは心得て動けばいいのだ。今回の震災で気になるのは福島原発の動向であるが、これについては何よりも正確な情報を流してもらいたい。

 風評被害を防ぐ一番の道は正確な情報の開示である。今回の震災に対する救援や復旧とここからの復興とには幾分か異なった視座が要求されるように思われる。救援や復旧には緊急ということが含まれるし、さしあたって出来ることからやらなければならないところが制約としてある。これに対して復興ということではこの震災の本質的理解と長い射程を持った対応《対策》が考えられなければならないからだ。例えば、補正予算ということでも救援と復旧を対象にした場合と復興を対象にしたときとは異なった組み方が想定されるようにである。

 今はまだ、救援と復旧に全力を挙げている段階であり、そのことは了解できるが、この震災からの復興を射程においた構想を政治家や政党などは準備し始めるべきであろう。かつて関東大震災にあたって「大風呂敷」といわれた「帝都復興」構想を提起した後藤新平が想起されるが、ここに政治家や政党、あるいは知識人の役割がまたあるといえるだろう。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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