緊急声明 万が一にも原子力災害で犠牲者を出してはならない ―福井県は、危険極まりない老朽原発の再稼働に同意しないでくださいー

著者: 木原壯林 : 老朽原発うごかすな!実行委員会
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新聞各紙は、4月21日の福井県議会全員協議会で、最大会派・自民党は、杉本県知事に、経産相にエネルギー政策での原発の位置付けを確認するように求め、老朽原発を動かすべきでないという知見が得られれば、運転停止を要請することなどを注文した上で、会派として再稼働への判断を知事に一任すると明言し、知事は、「重く受け止める」と応じ、経産相との面談に望む考えを示したと報じています。結局、県議会では、老朽原発の安全性や必要性に関する議論は深まらず、再稼働に関する判断は知事に丸投げされたことになります。

老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機について、立地自治体である高浜町と美浜町の議会と町長は、昨年11月から本年2月にかけて再稼働に同意していますが、その理由として、「国策だから」「原子力規制委員会(規制委)が世界一厳しい基準で審査して、運転を認めているから」「町の経済発展に不可欠だから」などを挙げています。しかし、国策で進められた福島原発で大事故が起こり、多くの人々が今でも、苦難の生活を続けておられます。また、規制委の認可を得て再稼働した原発で、事故やトラブルが頻発している事実は、「世界一厳しい審査基準」に適合した原発であっても、トラブルや事故は避けえないことを示しています。なお、規制委の前、現委員長はともに「規制委の原発運転認可は、原発の安全を保証するものではない」と繰り返しています。さらに、もし、原発で重大事故が起これば、地域の経済発展どころか、地域は2度と住めない故郷になる可能性があることを、福島やチェルノビイリの惨事が大きな犠牲の上に教えています。

一方、経産相、資源エネルギー庁長官、関電社長との会談(2月12日)で、老朽原発再稼働への同意を求められた杉本福井県知事は、それまでの「中間貯蔵候補地提示が前提」とする発言を一転させ、県議会に老朽原発再稼働に向けた議論を要請しましたが、県議会は、知事の提案に納得せず、老朽原発に関する議論は一旦中断しました。この事態に、知事は国から1原発最大25億円の交付金(2原発で計50億円)を取り付け、県議会に提示しています(4月6日)。結局、福井県は、中間貯蔵候補地問題は棚上げにし、人々の安心・安全を犠牲にして、原発マネーを得ようとし、政府は、税金によって立地自治体を買収し、老朽原発再稼働を強行しようとしていることになります。

ところで、老朽原発再稼働の是非についての議論において、高浜町、美浜町、福井県は、その判断の拠り所を国の姿勢に求めていますが、それでは、地方自治体の責務を放棄しているとの誹りを受けかねません。自治体住民の安全・安寧を保全することが地方自治の基本であることに鑑みれば、国策にかかわらず、住民に塗炭の苦しみを与える重大事故を起こしかねない老朽原発の再稼働など認めてはならないことは明らかです。

以下に、危険極まりない老朽原発を稼働させてはならないと考える理由を4点述べます。

  • 原発が老朽化すれば危険度が急増します。

原発は事故の確率が高い装置ですが、その原発を長期間運転すれば、危険度はさらに高くなります。交換することのできない圧力容器などが脆化し、配管に腐食、減肉、応力腐食割などが生じるからです。また、老朽原発では、建設時には適当とされていたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あるからです。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物の中には交換不可能なものがあります(圧力容器など)。

それでも、関西電力(関電)と政府は、原発の40年超え運転は「例外中の例外」としていた約束をホゴにして、老朽原発・高浜1、2号機,美浜3号機の再稼動を画策しています。

【2】重大事故時に住民避難は不可能です。

政府や自治体は、原発重大事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。

ただし、政府や自治体の行う避難訓練では、原発重大事故では住民の多くが、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視していて、「避難訓練を行った」とするアリバイ作りでしかありません。大規模で長期の避難訓練は不可能であるからです。

原発が重大事故を起こせば、原発近辺だけでなく広範な周辺地域も放射性物質で汚染されます。高浜、美浜原発から100 kmの圏内には、福井県のみならず京都府、滋賀県の全域、大阪府、兵庫県、岐阜県、奈良県の多くの部分が含まれます。福島事故では、事故炉から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、老朽原発で重大事故が起こったとき、何100万人もが避難対象になりかねません。避難は不可能です。琵琶湖は、両原発から28~80 km にあり、汚染されれば、1400万人以上が飲用水を失います。

福井県は、老朽原発再稼働同意の判断にあたって、その判断が周辺自治体住民の生命や財産にも関わることに十分配慮しなければなりません。

なお、水戸地裁は、3月18日の判決で、「避難計画が不十分で、重大事故を起こしたとき、避難が困難である」として、老朽東海第2原発の運転差し止めを命じています。

【3】処理法も行き場もない使用済み核燃料を増やします。

原発を運転すれば、処理法がなく、何万年もの長期保管を要する「負の遺産」・使用済

み核燃料を産出しますが、その処分地どころか中間貯蔵すら引き受ける所がありません。

それでも、関電は、使用済み核燃料中間貯蔵候補地を県外に探すとした約束を何度も反故にして、原発の運転を続け、使用済み核燃料を増やし続けています。その上、老朽原発再稼働まで画策し、使用済み燃料をさらに増加させようとしています。

なお、関電は本年2月、それまで2020年末としていた中間貯蔵候補地提示期限を2023年末へとさらに先送りしました。むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性を拠り所にした先送りですが、宮下むつ市長はこれを否定し、猛反発しています。

関電は、何の成算も無く「空約束」し、平気でそれを反故にする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業です。

【4】老朽原発運転を企むのは、トラブル、事故、不祥事、約束違反を頻発させ、原発で私腹を肥やす関電です。

規制委は、2016年、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の40年超え運転を、拙速審議によって認可しました。しかし、この認可以降に、関電の原発では、蒸気発生器配管の損傷をはじめとするトラブル、死亡を含む人身事故、原発マネーに関わる不祥事、使用済み核燃料中間貯蔵候補地に関する約束違反などが頻繁に発生・発覚しています。規制委による審査の過程では想定されなかったことばかりです。

原発の40年超え運転が、人の命や尊厳を軽視し、企業倫理をないがしろにして画策され、無責任な規制委がそれを認可していることを示しています。

とくに、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流され、また、電気料金値上げの際にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填していた、原発マネー不祥事は、関電幹部には、企業倫理や法令を遵守する姿勢がないことを如実に物語っています。

関電は、不祥事の発覚後も、原発の運転を継続し、危険極まりない老朽原発まで再稼働させようとしています。また、不祥事を反省して役員人事を刷新したとしていますが、不祥事の調査は不十分で、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあります。例えば、関電の原子力事業本部長は、去る2月10日美浜町を訪れ、「競争入札を経ない発注(特命発注)などにより、地元企業の活用に努める」として、美浜町長の美浜3号機再稼働への同意を取り付けました。これは、関電の経営体質は、原発マネー不祥事後に行った「人事刷新」によっても全く変わっていないことを物語るものです。

こんな関電に、老朽原発を安全に運転できるとは考えられません。

 

以上のように、老朽原発の再稼働は、立地自治体の一時の経済的利益のため、私企業・関電の利益のために画策されているとしか考えられません。

危険極まりない老朽原発の即時廃炉を求め、福井県に、老朽原発の再稼働に同意ないよう強く要望します。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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