RDD方式(コンピューターで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に調査員が電話をかける方式)で世論調査が行われる中で、個別面接方式で有権者の意向を尋ねる時事通信調査はコストもかかるが精度が高いとされている。調査員が調査対象者と直接面会して回答を選択してもらう調査方式が、電話で回答を求めるRDD方式に比べて回答者の態度が異なることがよく知られているからだ。ダイヤル調査なら直ぐに電話を切ることもできるし(有効回答率が低くなる)、考えることが面倒なら適当にボタンを押すこともできるが(調査精度が低くなる)、個別面接方式だとそうかいかない。質問する相手が生身の調査員なので、それ相応の向き合い方が求められるからである。
朝日新聞が6月15、16両日に実施したRDD方式(有権者がいると判明した固定電話と有権者につながった携帯電話が対象者になる)では、有効回答を得たのは固定電話858世帯から390人(回答率45%)、携帯電話では有権者につながった1587件のうち622人(同39%)、計1012人だった。これに対して、時事通信が6月7~10日に実施した世論調査は全国18歳以上の有権者2000人を対象とするもので、回答を得たのは1242人で有効回収率が62.1%と格段に高かった。
時事調査によると、岸田内閣の支持率は前月比2.3ポイント減の16.4%となり、2012年に自民党が政権に復帰して以降、過去最低を更新した。不支持率は1.4ポイント増の57.0%(最高は今年2月調査の60.4%)、「わからない」は26.7%だった。内閣支持率が「危険水域」とされる2割台に落ち込んだのは昨年8月以降のこと、さらに11月からは現在まで8か月連続で1割台の超低水準で推移している。性別では男性17.7%、女性14.9%。世代別では18~29歳11.7%、30代11.5%が特に低く、2割を超えたのは70歳代以上23.0%だけ。要するに、岸田内閣は若者世代と女性には完全にそっぽ向かれているのである。
読売新聞や日経新聞の世論調査では、内閣支持率は「重ね聞き」をするのでその分高くなることが知られている。最初の質問で「わからない」「無回答」の人に重ね聞きし、「どちらかと言えば支持」と答えた人の分を上積みして内閣支持率を割り出すのである。事実、5月24~26日実施の日経調査では内閣支持率28%となり、時事調査とは10%を超える差が出ている。この差は、恐らく「重ね聞き」による上積みの影響によるもので、読売・日経調査で内閣支持率が高くなり、時事通信では低くなるのはこのためである。どちらの世論調査が現実を反映しているかは明らかだろう(以下の分析は全て時事調査に基づく)。
政党支持率は、自民16.4%、立憲民主4.4%、公明3.4%、維新2.4%、共産1.6%、国民民主1.0%などいずれも「政党離れ」が目立つ。これに対して、「支持政党なし」は実に66.8%(3分の2)に上っている。自民支持率は昨年11月に1割台(19.1%)に落ち込んで以来、8か月連続で1割台に低迷しているが、一方、野党支持率が上がっているわけでもない。今年1月からの政党支持率の推移を見ると、立憲4%前後、維新3%前後、共産2%未満など「横ばい状態」で推移している。これは「支持なし=無党派層」が一貫して高率(3分の2)を占めているからであり、「支持なし」が増えたのは「保守岩盤層」と言われてきた自民支持層の相当数(約半数)が自民を離れたこと、革新政党を支持してきた人たちの多くが「支持なし」に転じたことが主な原因だと考えられる。
いささか前置きが長くなってしまったが、本論に入ろう。自公政権から世論が離れていく中で、最近の地方選挙では与党候補の不振が目立つ。静岡県知事選(5月26日)では自民が推薦した元副知事が敗北。広島県府中町長選(同)では自公が推薦し、首相の長男が応援に入った前町議が敗北。東京都港区長選(6月2日)では自公推薦の現職が敗北。目黒区都議補選(同)では欠員2を争い、自民候補が落選するなど連戦連敗だった。ところが、沖縄県議選(6月16日)では様相が一変する。県政野党の自民が全員当選で2増の20議席、公明も全員当選で4議席だったのに対して、県政与党の共産は7議席から4議席へ、立憲民主は4議席から2議席へほぼ半減したのである。
一連の地方選挙で、共産は野党共闘を優先して独自候補を擁立せず裏役に徹してきた。しかし、沖縄県議会では共産は与党第一党の位置にあり、しかも党派選挙なので現有7議席の確保に全力を挙げた。それが半数近い3議席を失ったのだから、衝撃は大きかった。共産は野党共闘を推進することによって党勢拡大を図り、党派選挙において勝利することを選挙戦略の基本としてきたが、それが沖縄県議選では実現できなかった。しかし翌々日の赤旗(6月18日)は、敗因を自民の選挙戦術を中心にして解説し、自らの党勢後退が敗因との分析を避けた。
――県政転覆を狙う自民は、徹底した自民党隠しや県政問題に絞った攻撃で裏金問題への批判をかわす一方、本土大手企業が県内企業締め付けを強めるなど異常なテコ入れで企業・団体ぐるみ選挙を展開。自公維で〝共産党落とし〟のシフトをはかりました。
もともと沖縄県議選は「無投票選挙区」が多い。前回の2020年選挙では、13選挙区中4選挙区(名護市、うるま市、浦添市、石垣市)が無投票だった。共産は7議席を確保したものの、うち1議席は無投票区、2議席は最下位当選だった。今回は13選挙区中12選挙区で選挙戦が行われ、失った3議席はいずれも次点だった。前回の得票数は4万8003票、得票率は11.5%、今回は4万4938票、10.3%である
しかし、この選挙結果は驚くに当たらない。この間の国政選挙における共産の比例代表得票数・得票率の推移を見れば、それが地方選挙に反映されていることがよくわかる。最近の国政選挙における沖縄選挙区の得票数は、2016年参院選の9万60票・得票率15.6%をピークに2017年衆院選7万5859票・12.1%、2019年参院選5万5194票・10.7%、2021年衆院選6万151票・9.7%、2022年参院選5万1781票・9.4%と右肩下がりで後退している。僅か6年で9万票から5万票へ半分近く減っているのだからその後退は大きいが、それでも共産党の全国比例代表得票数の2016年参院選601万6194票・10.7%から2022年参院選361万8342票・6.8%への後退から見れば、沖縄は得票率で全国の1.4倍前後の水準を維持しており健闘していると言えるだろう。
そこで、いよいよ東京都知事選(7月7日投開票)である。共産は蓮舫氏を市民と野党の共闘「オール東京」の候補者に推薦して全力を挙げるとともに、都議選補選9選挙区のうち5選挙区に独自候補を擁立し、小池書記局長が「いずれも定数は1ですが、今回は議席獲得のチャンスがあります。なぜなら都知事選と一体のたたかいだからです」と檄を飛ばしている。共産にとっては野党共闘と党派選挙を統一して戦える選挙であり、これに成功すれば現在の膠着状態を打破できると考えている。選挙戦がどのような展開を見せるか、目下のところ予想もつかないが、小池書記局長の言うように「天下分け目の合戦」になることは間違いない。
――市民と野党の共闘を再構築し、自民党政治を終わりにし、新しい政治をつくる上でも、極めて重要な意義を持ちます。東京から日本の新しい未来をひらくたたかいです。必ず勝利しましょう(赤旗6月23日)。(つづく)
初出:「リベラル21」2024.6.27より許可を得て転載
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