自然エネルギーは善か?――広瀬隆氏の問題提起

 先日、銀行のキャッシュカードが使えなくなったので、某M銀行の窓口に行ったら、30分近くも待たされてしまった。本も何も持っていなかったので、待っている間、ロビーに置いたあった週刊朝日を読んでいた。その中の記事で、広瀬隆氏が、すべての原発を全廃させるための近道は火力発電の普及であり、ガス火力も石炭火力も全くクリーンであるにも関わらず、普及に何十年もかかる自然エネルギーの利用を持ち出すことは原発の延命を手助けするだけである、という趣旨のことを述べていた。もちろん、CO2が地球温暖化の原因などではあり得ないし、温暖化自体は恐れるようなことではない、ということを力説したうえでのことである。こうした主張自体は、氏の『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社新書)の中でも説かれていたことなので、私にとって目新しいものではなかったが、このような主張は残念ながら脱原発派の中でも決して主流とは言えないのではないだろうか? むしろ脱原発派の多くは、自然エネルギーへの転換を主張しているように思われる。自然エネルギーへの転換それ自体は別に悪いことではないかもしれないが、脱原発とのセットで主張することの現実的・政治的意味を考える必要があるだろう。それは、何が何でも原発を維持するために、原発依存度の低下と再生可能エネルギーの促進などの「ベストミックス」を唱える政府の原発延命策に利用・回収されてしまう恐れが大きいのではないだろうか。原発廃絶を一日も早く実現するためには、「二酸化炭素温暖化説」など環境問題をめぐる数々の嘘を暴露し、ガス・コンバインドサイクルなど最新式火力発電を普及することではないだろうか。自然エネルギーへの転換は脱原発が実現してからゆっくり考えても遅くはないだろう。