菅・翁長会談で分かった「沖縄の圧勝」と「安倍政権の大誤算」+<辺野古報道>在沖メディアと在京メディア 違いは? ほか

菅・翁長会談で分かった「沖縄の圧勝」と「安倍政権の大誤算」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158714

2015年4月7日

第1ラウンドは沖縄の「圧勝」とみていい。5日、那覇市内のホテルで開かれた翁長雄志知事と菅義偉官房長官の初会談。「これから国と沖縄県が話し合いを進めていく第一歩になったと思う」――。会談後、記者団に向かってこう言った菅官房長官だが、本当は沖縄県民の心の底からの「怒り」を肌身に感じて震え上がっていたに違いない。

会場となった那覇市内のホテル周辺には反対住民ら約1500人が殺到。辺野古移設を強行する政府を批判する横断幕やのぼりが掲げられた。

「会談を終えて車に乗る翁長知事には『頑張ろう』と大声援が飛び、これに翁長知事も車窓から左こぶしを高々と上げてガッツポーズ。ところが、菅官房長官は反対住民から逃げるようにホテル裏口から出て行った。会談でどちらに軍配が上がったのかは歴然です」(沖縄県政担当記者)

官房長官と知事の面会が注目されること自体、この国の異常な政治情勢を物語っている。沖縄県民の怒りに触れたためか、菅長官は翁長知事と安倍首相の会談も検討すると言い出した。安倍政権は明らかに方針転換しつつある。

「沖縄県民の反発を受け米国の知日派の間で『このままで大丈夫か』と不安の声が広がっている。安倍政権は4月の訪米前に『沖縄と仲良くやっている』とのアリバイをつくりたいのでしょう。しかし、そんなことは沖縄県側は百も承知です」(在沖ジャーナリスト)

どうりで翁長知事は余裕シャクシャクだったわけだ。ほかにも沖縄が「圧勝」だった理由がある。「なぜ辺野古移設ができないと普天間が固定化するのか」。この質問に菅長官が答えられなかったことだ。沖縄国際大教授の前泊博盛氏はこう言う。

「菅長官は『粛々と進める』と繰り返しています。これは歴代政権が使ってきた言葉で、本音は『(日米安保などが)よく分からないから踏襲する』ということ。菅さんは沖縄の基地問題の本質を全く理解していないことがハッキリした。今、沖縄の米兵の間では『反軍(基地)が反米になったら大変』との危機意識が広がっていて、(安保利権マフィアの)ジャパンハンドラーといわれる米関係者の間でも、在沖米軍の在り方を見直す発言が出ている。つまり、それを知っている沖縄県は(菅長官に対し)『もう一度よく考えた方がいい』と促しているのです。安倍政権は日米同盟の重要性を強調しているが、やっていることは正反対。米国の真意を読み違えています」

実際、米クリントン政権で普天間基地返還の日米合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補(現米ハーバード大教授)は、琉球新報の取材に対し、「沖縄の人々の支持が得られないなら、我々、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」(4日付)と言っている。

安倍首相は訪米で大恥をかくことになるんじゃないか。

<辺野古報道>在沖メディアと在京メディア 違いは?
http://thepage.jp/detail/20150406-00000002-wordleaf

2015.04.06 11:43

沖縄の米軍普天間基地の移設計画を巡り、翁長雄志・沖縄県知事と菅義偉官房長官が初めて会談した。菅氏は辺野古への移設工事を進める考えを伝え、翁長氏は反対、会談は平行線のまま終わった。そもそも、移設については、昨年の名護市長選、名護市議選、沖縄県知事選、衆議院議員選で、「県内移設反対」を掲げる候補者や政党が勝利し、政府と沖縄県の「民意」の対立は深まっていた。こうした沖縄の現状をメディアはどのように伝えているのか。辺野古移設反対運動をめぐる、沖縄のメディアと東京に本社をおくメディアの報じ方には、どのような違いがあるのか。沖縄県を中心に発行される日刊新聞、琉球新報の滝本匠記者に寄稿してもらった。

沖縄県内の二つの地元紙には毎日のように掲載されているコーナーがある。新聞の一番終面の社会面にある「辺野古ドキュメント」(琉球新報)「辺野古の動き」(沖縄タイムス)だ。沖縄本島北部の名護市辺野古で、政府による米軍基地建設に反対する市民らの前日の動きを時系列でまとめている。3月31日の「辺野古ドキュメント」は、「7時58分すぎ 県警機動隊が(米軍基地の)ゲート前で座り込んでいた市民の排除を始める」などと伝えている。

反対する市民らは毎日、米軍基地のゲート前や海上での抗議行動を続けている。沖縄県内のメディアも連日、陸から海から取材し現場の動きを紙面化している。東京の政府の動向も含め、毎日の紙面で辺野古関連の記事を見ない日はない。

「有事」の取材体制

新聞記者は通常、担当を持っている。辺野古の出来事は北部地域の記者が担当するのが「通常」だが、現在は社を挙げて辺野古取材に当たる「有事体制」を取っている。普段は沖縄の芸能などを担当する文化部や、企業回りや沖縄観光の動向などを取材する経済部の記者までもが日替わりで取材班に加わっている。

海上でカヌーの抗議行動を取材するため朝から船に乗り込む記者や、陸域から沖合まで見渡す展望台で海上作業の動向を監視する記者、基地のゲート前で資材搬入への抗議行動を取材する記者──。抗議行動の開始とともに、複数の現場へ記者を配置する取材体制が常態化している。

ゲート前の座り込み抗議行動は2014年7月7日から続く。政府は、沖縄本島中部の米軍普天間飛行場を辺野古沖を埋め立てて移設する計画で、工事に反対する市民らは作業開始を警戒して監視を始めた。平日でも100人を超える市民らがゲート前の座り込みに参加している。

反対の論理

工事に反対するのは「沖縄の民意に反した基地建設」だからだ。住民を巻き込んだ唯一の地上戦である沖縄戦を体験したお年寄りは「二度と人殺しのために、沖縄を使わせない」と座り込みを続ける。那覇市から駆け付ける女性は「沖縄の人々の民意を踏みつぶすようなまねはさせない」との思いで参加している。

普天間飛行場の移設について地元紙の世論調査では、これまで一貫して県民の7〜8割が県内移設に反対だ。さらに昨年の普天間移設に関係する名護市長選、名護市議選、沖縄県知事選、衆議院議員選で軒並み、「県内移設反対」を掲げる候補者や政党が圧勝した。

那覇市内から高速道路を使って1時間以上かかる辺野古。現在は直通のバスが毎日運行していて参加者の足となっている。これまでは反対運動の現場に足を運んだ経験がない人や親子連れの姿も目立つ。沖縄県内で基地反対の運動をけん引してきた沖縄平和運動センターの山城博治議長は「今回の運動が従来と違うのは幅広い人が怒りを募らせており、家庭の主婦や親子連れも足を運んでいることだ」と現場の雰囲気を説明する。

メディアの温度差

座り込みに参加する人の多くは全国紙の記者が現れると「もっとこの現状を報道して」と訴える。海上で抗議する市民が海上保安官から荒々しく拘束される様子や、ゲート前で記者が機動隊員から取材妨害を受ける実態を報じている地元紙とは違い、全国では辺野古の現状が十分に伝えられていないことへの不満が募っている。

「節目報道」の側面も強い。昨年末に辺野古移設に反対する翁長雄志知事が当選して以降、初めて海上の作業に着手するという局面には、海上が見渡せる取材拠点には全国キー局のテレビや新聞社のカメラ記者らであふれ、空には撮影用のヘリが舞った。だがその局面が過ぎると翌日からはまた地元メディアだけの風景に戻る。

これら沖縄県外の報道姿勢は今に始まったことではない。2004年8月13日、普天間飛行場のそばにある沖縄国際大学に米海兵隊の大型輸送ヘリCH53Dが墜落した。幸い死者は出なかったが、隣接する公道にまでヘリコプターのローターなどの部品が飛散し、近くのアパートの室内で寝ていた赤ん坊のそばにはコンクリート片が飛び込んだ。

地元紙は号外を出し、翌日の朝刊は1面から2、3、4面、社会面と貫いて関連記事を掲載し、写真特集ページも組んだ。だが県外の新聞は九州版でこそ1面の扱いだったが、東京版は社会面での小さな扱い。当日夜のテレビ報道はアテネ五輪やプロ野球界再編騒動が上位に扱われた。「人が死なないと大きな問題にならないのか」。沖縄県外の報道に県民は大きな失望感と怒りを抱いた。

第3の壁

2010年7月、普天間爆音訴訟の控訴審判決後の会見で島田善次原告団団長は、全国紙の記者らを前に「沖縄の現状を正確に伝えていない」と沖縄県外での報道の在り方を厳しく指弾した。2009年の民主党連立政権で鳩山由紀夫首相(当時)が普天間の県外移設を追求する中、沖縄県外の大手紙などがこぞって「日米同盟の危機」をあおり立てたと指摘した。

鳩山政権での普天間移設をめぐる迷走の中、地元紙の記者らはいかに県外移設を追求するかに力点を置いて取材していた。その一方である全国紙の記者は、米国務省の定例会見で「われわれは皆(日米合意の辺野古移設の)ロードマップがベストだと分かっている。だが日本政府は新しい移設先を検討している……」と既存合意が最適だとの立場を表明し質問した。

在京メディアで日米関係を担当するのは政治部記者で、普天間基地の機能や米軍の運用を分析して移設問題を考える「政策」よりも、民主党政権の「賞味期限」がどうなるかといった「政局」報道に偏りがちな点も影響しているとみられる。

地元紙はこれら在京メディアの姿勢を、官僚の不作為や政治の無策に次いで「第3の壁」と呼んだ。普天間移設問題の早期解決がないと日米同盟が危機に陥るとの論調は当時の全国紙には根強く、「多くの県民の支持と理解を得るよう努力しなければならない」などと辺野古移設を前提に沖縄を説得しなければならないとの論調が目立った。

そこには、「抑止力」とは何か、なぜ海兵隊の拠点が沖縄でなければならないのかという、沖縄の記者がずっと問い続けてきた論点が抜け落ちている。民主党政権で防衛相を務めた森本敏氏は在任中の2012年、普天間の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べた。防衛省OBで元内閣官房副長官補の柳沢協二氏も「海兵隊は沖縄で抑止力にならない」と指摘するように、沖縄への基地集中は軍事的理由からではなく、他府県で引き取り手がないという政治的理由からであることを認め始めている。

「沖縄のことは沖縄県民が決める」。沖縄でなくてもいいはずが、辺野古という沖縄に押しつけられようとしている構図が明らかになるにつれ、県民の間には「沖縄だからいいでしょうという沖縄差別だ」という思いが表に出始めている。自分たちのことは自分たちで決めるという自己決定権が強く意識されている。それがゲート前の行動にも結びついている。翁長知事の誕生もその延長線上に位置付けられる。沖縄県外の国民はそこから目を背けることなく、そろそろ直視する時期に来ている。

(琉球新報・編集局 記者 滝本匠)

翁長知事・菅官房長官会談に在京紙高い関心
https://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=110610

2015年4月7日 08:13

翁長知事と菅官房長官の初会談を報じる6日付の主な全国紙とブロック紙

【東京】那覇市内で5日にあった翁長雄志知事と菅義偉官房長官の初会談について、各全国紙とブロック紙は6日付朝刊(東京版)で、「初会談は平行線」などの見出しで大きく取り上げた。1面トップで扱った新聞社が多く、2、3面や社説、社会面でも県民の反応を伝えた。今後も県と政府の応酬が続くことが予想され、注目度の高さを示した。

朝日新聞は、1面から社会面まで最も多くの記事を掲載した。両氏の主張が平行線だったことを示しながら、2面では「政治の堕落ではないか」など翁長氏の痛烈な言葉が出た厳しいやりとりを紹介。社説でも「『粛々と』では済まない」と政府の対応を批判し、「まずは作業の中止を」と求めた。

同じく1面トップ記事だった毎日新聞、読売新聞も2、3面でも取り上げた。毎日は「知事『沖縄の民意』発信」として会談のやりとりを掲載。「意思疎通を図らなければ、対立の出口は見えてこない」と指摘した。読売は、3面で「政府、沖縄配慮を強調」とし「低姿勢で理解求める」菅氏と「強硬姿勢を崩さない」翁長氏を対比。政府寄りの視点をにじませた。

東京新聞は「上から目線の『粛々』怒り増幅」と翁長氏の発言を見出しに取り、菅氏への抗議や政府が繰り返す「負担軽減」が沖縄で疑問視されていることなど多角的に取り上げた。

産経新聞は1面で菅氏が、辺野古移設が「唯一の解決策」と述べ、抑止力論争を持ち出した点を紹介。2面「主張」で対話継続を求めた。日本経済新聞は1、2面で双方が原則論で応酬した会談内容を掲載した。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5284:150408〕