ゴフマン研究会の蔵田計成さんの訃報がありました。
とてもショックで悲しく感じています。
蔵田さん個人を私はよく知らないのですが、蔵田さんが「ちきゅう座」のサイトに連続投稿されたご論考――100ミリシーベルトまでの被曝による健康被害は全く「ない」という推進派の議論を、読売新聞の社説を例に徹底的に批判された――をお書きになる際、私にも何度も電話やメールでお問い合わせがあり、わずかですが、お手伝いをさせていただきました。
「徹底検証/「100ミリ㏜健康影響なし説」のウソ―0~10歳集団、100ミリ㏜被曝リスク、死亡率13%―」として、以下のサイトに掲載されてあります。
https://chikyuza.net/archives/96841
これは、この問題に関する、ゴフマン研究者としての蔵田さんの成果が凝縮され、よく整理された、素晴らしい論考、まさに精華の一つであると確信します。
原稿完成後お電話を頂き、議論しておりますと、さらに「続編」として、今回主に検討したのは「がん」だけなので、「がん以外」の広範な病気による被曝影響も取り上げたいと、おっしゃっておられ、とても印象に残りました。
蔵田さんと何回も電話で話すうちに、ご関心が非常に広いことがわかってきました。
たとえば:
・ソ連や「現存した」社会主義の歴史的意義への「全」否定論(いわゆる「反帝反スタ」論での帝国主義と同一視)への鋭い批判、
・ソ連・社会主義の崩壊にいたる歴史を、社会主義に前進する方向性(革命)と資本主義・帝国主義に後退する方向性(反革命)との間の激しい階級闘争として総括すべきというご主張、
・「反帝反スタ」戦略でソ連・社会主義を全て「反革命」で塗りつぶしてしまうと、帝国主義の植民地支配からの民族独立運動などで果たしたその歴史的役割なども全否定してしまうことになるという批判、
・それらの諸問題を含む戦後の左翼運動全体の現時点からみた歴史的な総括をしなければならないこと、
などなど今後の執筆活動への強い意欲を熱烈に語っておられま
した。
もちろん基本的点で考え方が異なるところもありましたが、これらの諸点、私も大いに同感で、とても心強く感じました。
蔵田さんの最期のご見解を伺った者の一人として、これを記しておくのは義務であろうと考え、被曝問題とは離れるように見えますが、記憶しているところをあえてここに書いておきます。
しばらくして、「腰痛と思って受診したら骨がんだった」「妻と並んで入院している」という電話が病室からあり、大変心配いたしておりました。
次の大作を大いに期待していたのですが、この論考が最後の大傑作になってしまい、とても残念です。
いま本当に打ちひしがれた思いですが、ご遺志を受け継いで前進するしかないと感じます。
心より、ご冥福をお祈りいたします。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9653:200416〕