街は静かに/「ステイ・ホーム」というなら路上の人々に住居の提供を

毎月第2日曜日は、新宿連絡会(新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議)のおにぎりパトロールに随行しての医療班による健康相談の日。今回は、いつもボランティアで参加してくれる7~8人の医師、看護師は、コロナ・ウイルスを感染させるリスクがあるとして、ほとんどが参加できず、ごく少数での実施とせざるを得なかった。一方、路上生活の人たちの数は、近年減少傾向にあったのに1月頃から増え始めて、昨年に比べて20~30人は多い感じで、大体160~170人くらいで、深夜になるとさらに増える。今回ひどく体調の悪い人は見つからずよかった。

ウイルス関連で、解雇、失業、収入減少の影響が本格的に出てくるのはまだ先のようだ。しかし、人が集まるのはよくないとされているためか、上野では弁当配布が中止になったとか、渋谷の教会での週一回の集会形式での食事提供はなくなって、毎日のおにぎり提供だけになったとかの影響が出始めている。今後、路上生活者が急増したりすると、支援の側も追いつけない状況になるのではないかと思うと心配だ。

常時、路上生活はせず、低賃金の仕事をしながら、ネットカフェなどに寝泊まりする人も多く、数年前に東京都が推計したところでは4,000人くらいはいるとされている。それが、4月7日の非常事態宣言と10日の休業要請対象業種入りで、ほとんどのネットカフェが休業となってしまった。そこで、寝る場所のなくなった人は5月6日までと短期間だが、都がホテルなどを提供するとの決定が下された。以前からの支援側の要請に応えたもので、それ自体、大変良いことにちがいなく、路上の人たちも時々、お金が入るとネットカフェや深夜営業の飲食店で過ごすこともあるのだから大いに利用すればよいと思う。

だが、リーマンショックの時の年越し派遣村と同じく、非常時の応急対策であることは今回も同じである。都の場合はビジネスホテルの個室だからよいが、神奈川は体育館の床に毛布2枚とか、埼玉は二段ベッドで6人の相部屋とかで災害時の一時避難所の発想でしかない。

常態化する不安定雇用の下、路上にせよネットカフェにせよ、数千人の単位で、まともな住居を確保できないで、住所もなく、したがって行政サービスもほぼなく、もちろんコロナ対策の給付金も受けられないホームレス状態を余儀なくされている人々がいて放置されたままであることが、改めて浮き彫りになったということなのである。安定した住宅があらゆる人の生活の基本にならないとおかしい。路上の人たちからよく聞かされるのは、「福祉に相談して、まず入る自立支援センターは相部屋、その後紹介されるアパートも劣悪で住めたものでないし、ブラック企業の経営する収容所まがいのところも多い」というものだ。

イギリスからの報道によると、労働党でイスラム教徒のロンドン市長が、3月21日に市内にいるホームレスの人の命をウイルスから守るため、インターコンチネンタルホテルに300室を12週間確保し、対象者はボランティアを申し出た黒塗りタクシーに乗せてホテルまで移送することにした。市長は、「路上生活者はすでに、不安定な生活に直面しており、すべてのロンドン市民と同様に彼らが可能な限り最善の保護を受けられるよう、私はできる限りのことをしようと決心している」と力説した。日本と比べると雲泥の差があるのはなぜ?と思わずにはいられない。

安倍政権はといえば、麻生が「東京都にはお金があるから休業協力金も払える」と他人事のように言って、休業要請に応じてもまともな補償はしないらしい。マスク2枚で支援は終わりか。住宅を持たない人にはマスクも届くことはない。悲しいかぎりだ。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9646:200414〕