視聴者コミュニティ、小丸NHK経営委員長の解任を要求

著者: 醍醐聡 だいごさとし : 東京大学名誉教授
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視聴者コミュニティ、NHK松本新会長と経営委員会に申し入れ

NHK会長選の選考経過が多くの報道機関で伝えられた。それらを総合すると、小丸氏を表の軸にして経済界の人脈で人選が進んだことは間違いなさそうだ。中には、政治が介在したという報道もあった。松本正之氏を新しい会長に選んで人事は落着したが、残された教訓は大変重い。明日25日に定例の経営委員会が開かれるが、そこで今回の会長選考のあり方がどのように総括されるのか注目される。

私も参加している「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は「余韻が冷めないうちに」視聴者からタイムリーに意見を発信していく必要があると考え、昨日24日、松本新会長と小丸経営委員長に対して文書で申し入れをした。その全文を貼り付けるので、ご覧いただけると幸いである。

申し入れの柱は、
1.混乱と醜態をさらけ出した第一次的責任者としての小丸氏の辞任または解任を求める。
2.所信表明の中で、鉄道とNHKの公共性は同じと語った松本新会長の見識を問う。
3.今回の選考のあり方から浮き彫りになった、財界人の人脈を頼った閉鎖的な選考のいびつさ、悪弊を改めるため、改めて、公募制、開かれた選考方法(候補者の事前の所信表明など)を求める、

というものである。
今日の経営委員会の前に全経営委員に届くよう、応対された朝比奈正彦・視聴者センター統括部長を通じて、経営委員会事務局に要望した。

経営委員の面識・人脈に頼った選考のいびつさが露見
なお、選考の途中の1月11日に開かれた小丸経営委員長ほか3名の経営委員の記者会見の模様が経営委員会のHPに公表されている。そのURLを貼り付けておく。
1月11,12日の小丸経営委員長ほか3名の経営委員の記者会見録
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/briefing/briefing1133.html

これを読むと、候補者選考がいかにずさんなものであったかを垣間見ることができる。特に、安西氏に対し、小丸委員長が、経営委員全員の総意でもない段階で、あたかも全員一致の就任要請かのように伝えたことが混乱を招く原因であったことがわかる。
さらに、会長候補を人選するにあたっては、資料やネットで調べたと小丸氏は語っている。むろん、それも情報収集の一つの手段ではあるが、福地現会長が任期切れを前にして早い段階で続投の意思はないと表明したのであるから、なぜもっと早くから、委員会で人選の基準を協議し、候補者選考の準備に取り掛からなかったのか、会長の任期切れの1月24日に間に合うように松本氏を選んだというだけで、経営委員が拍手で安堵し合っていてよいのかーーー職責に対する自覚の希薄さを嘆かわしく思うとともに、悪しき身内意識を見せつけられる思いがした。
結局、今回のNHK会長選考のどたばた劇は、放送メディアの長にふさわしい人物を選ぶ上で、12人の経営委員の面識と人脈に頼る選考がいかにいびつで不条理なものかを露呈したといえる。こうした限界を乗り越えるには、選考の門戸を視聴者に広げ、多くの人々の英知を集約できる公募制の採用が不可欠である。さらにいえば、NHK会長を選ぶ経営委員の選び方にまで遡及した議論が必要である。

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NHK会長 御中
NHK経営委員会 御中

2011年1月24日
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表 醍醐 聰 湯山哲守

経営委員長の解任を求め、NHK新会長の資質を問います

独善による失態続きの小丸成洋経営委員長の解任を求めます

私達は前NHK経営委員長・古森重隆氏の独善的で専制的な委員会運営を批判し、その罷免を求める中で、経営委員会のあり方、経営委員長の資質を次のように求めました。
第一に、NHKへの外部からの干渉に対して、放送の自主自立を守る砦として経営委員会を機能させる高い見識と意欲の持ち主であること。
第二に、公共放送NHKと民間営利企業との経営理念の違いについての明確な認識をもつ人物であること。

NHKは、多元的で多様な言論・情報が飛び交う文化・ジャーナリズムの「広場」としての役割を担っています。視聴者への還元は、受信料値下げのための無原則な効率化・コストダウンなどではなく、第一義的に「知る権利」に応える調査報道や文化的に良質で多様な番組活動の充実であるべきと考えています。

私達の要望を受け入れる形で、新経営委員会では、新経営委員長の選出に当たって、経営委員長に課する姿勢として、①合議制に基づく運営、②透明性のある運営、③視聴者への説明責任を果たす運営、が確認され、④執行部との緊張関係を維持しつつ良好な関係を保てること等が確認され公表されました(平成22年6月、第1121回経営委員会議事録)。
はたして今回のNHK会長選出過程ではこうした確認事項が遵守されたのでしょうか。
伝えられるところによると、前記確認は守られず、委員からの複数の推薦候補を検討するという形が取られたとはいえ、実質的には小丸委員長の独断による「打診」が先行し、候補者の資質や能力について委員会で比較検討された事は一度もないといわれています。相変わらずの密室での委員長の独断的選考であった事が判ります。
その結果、経営委員の間から、内諾したとされる候補者が自らの交際費や住居など経済的処遇への関心が先立つ人物ではないかとの疑問や、公共放送を担う長としての資質に疑義が噴出し、受諾の撤回を求めるという醜態をさらけ出しました。
一体、小丸経営委員長はNHK会長(候補)たる人物がどの様な資質を持つ人物だと考えて推薦したのでしょうか。なぜ「打診」をする前に委員会の中で候補者一人一人の資質を確認する作業、例えば候補者の所信表明などをしなかったのでしょうか。これでは実質的に罷免された古森前委員長と全く同じ手法です。
独善的に委員会内部で討議もせず、密室で強引に決めようとし、失敗した小丸委員長の責任は極めて重いものです。直ちに責任を取って辞任するか解任されるべきであると考えます。

公共放送の長たるNHK新会長の資質を問います

1月15日の経営委員会では、松本正之新会長が全員一致で決定したとたん、拍手がわき起こったとの報道があります。期限に追われ、たった数日で候補者を選び直し、その資質を問う事もなくどうして全員一致できるのでしょうか。松本氏は新会長の選出後の記者会見では、「公共機関であるJRの経営とNHKの経営とは『公共』という点で同じであるから自ら責任をもって職責を果たす事ができる」と述べております。

NHKに求められている公共性とは、前述の如く多元的で多様な言論・情報が飛び交う文化・ジャーナリズムの「広場」を確保することにあります。第一義的に「知る権利」に応える調査報道や文化的に良質で多様な番組活動の充実であるべきです。国民の足を確保することを究極の使命とするJRとは全く異質、異次元な機関であります。早くも新会長の資質が問題として浮き彫りになりました。
NHK会長や経営委員会が営利目的の企業経営と公共放送たるNHK経営とを同列にあつかい、一部の経営委員が主張するように、民放の補完機能しか求めないとすれば、それは日本のジャーナリズムの死滅です。言論の自由を保障する日本国憲法にも抵触する由々しい事態です。私たちはNHK新会長、経営委員会、経営委員長に対し、「NHK会長には、どの様な資質と見識が求められるのか、NHKはどの様な機関であるべきか」を公開の場で討論し、広く国民の意見を集約する事を求めます。

最後に、昨年11月22日、当会が今回の会長選出に当たって経営委員会に提出した「要望書」に記したように、「経営委員会が公募した会長候補の中から会長を任命する公募制を採用すること」および、その上で、合わせて要望したように、「会長候補について、指名委員会で「候補者」が絞られたあと、経営委員会で即決しないこと(少なくとも1週間をおくこと)。およびその間に「候補者」に「ジャーナリズムと放送の文化的役割についておよびNHK会長就任への抱負」等の所信を表明する機会を設けること」を今回の反省として、「余韻」がさめないうちに検討していただくよう重ねて要望します。

以上

初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1169:110125〕