記録映画『ミツバチの羽音と地球の回転』の感想

泉 康子(9条改憲阻止の会 連帯・共同ニュース168号 2011年10月10日)

■  時間を越えるその記録映画が幕を閉じた時、期せずして拍手が湧き上がった。監督鎌仲ひとみがルポルタージュ的手法で、島民に分け入り問いかけて答えを引き出して行く地味な記録映画である。遠慮がちに起こった拍手がたちまち輪を広げて万来の拍手となった。高井戸シネマが自主上映した会場に集まった人々は、インタネットや口伝えで上映を知ったのだろうが、何に心動かされそれぞれ拍手をしたのだろうか。

■  平均年齢75歳、人口500人の瀬戸内の島祝島(山口県上関町)で続けられている原子力発電所建設反対運動を追って2008年から2010年まで記録である。島民が海の幸を日々得ている田ノ浦湾の埋め立て許可を山口県知事が与え、中国電力はいよいよ海中に杭打ちを強行することになる。中国電力はまず原発に反対する島民の会にいきなり五億四千万を振り込んできて揺さぶりをかけた。その金を即座に送り返し海上での直接対決の日を迎える。中国電力側は幹部を乗せた大型船でやってきて「祝島のみなさん、あなた方はもはや第一産業では食べてはいけないのです。原発を受け入れれば雇用は拡大し、若者は戻ってきます。…」と拡声機でがなり立てる。それに対して島の若者がハンドマイクで「いらぬお世話だ、うちらは海をうっちゃあおらん」とやり返す。島中の小型船を舫いで海上のバリケードにし、その中に立てこもり一歩も引かないのが島のおばあちゃんと若者たちだ。その船上での波を隔てた緊迫したやり取りが展開される。福島でもこういう闘いがあったのだろうか。私たちもこういう闘いを各地で組むべきだったのだと痛感させられる。祝島のおばちゃん達はバリケードに立てこもる一方で、地道な行動も積み重ねてきた。それは中国電力に「食べていけない島」と言われないように、伝統的なヒジキ・ワカメ・魚以外にも枇杷の栽培、枇杷茶の製品化と知恵をしぼって精を出し、インタネット販売の道を見つけた。過疎地の「食っていけない」という弱みに狙いをつけて、ゴリゴリと誘致を進める電力会社に抗して、崩されぬように足元を固めつつの闘いである。同時に将来の電力確保を求めて太陽光発電も島の尾根に取りつけて手探りの模索をはじめている。

■  島民が抱えている未来のエネルギーの答えを探して鎌仲ひとみはスウェーデンに度立つ。自然エネルギーの先進国での探索を通して我々に明るい希望を提示してくれる。「日本は太陽光発電では日照時間がスウェーデンの二倍、風力発電は陸上だけでなく洋上でも可能というように日本は自然エネルギー資源大国であることを明かす。反原発という強力な選択の意志と将来のエネルギーを発見する強い動機が見る人々に訴えるのだった。

■  9月11日に祝島から上京してきたメンバーを含む4人の若者が「上関原発建設中止」を掲げて経産省前でハンガ―ストライキを行った。年老いた島民達の「体を張って抵抗する姿」を輝く遺産として若者に残しつつあるのだ。友人に誘われ何の予備知識もなく見に入ったのだが、この映画の製作者欄に五十一年前に共に安保闘争を闘った先輩の名前を見つけた。グループ・現代小泉修吉。大映画会社が振り向かない確たるテーマを一つ一つ深く追い続けている長い貴い歩みにも私は拍手した。                         

渡利の子どもたちを放射能から守るために
渡利周辺の特定避難勧奨指定及び賠償に関する要望書
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-6036.html
第一次締め切り:10月8日(土)朝9:00 第二次締め切り:10月末日
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私たちは、渡利周辺の住民、とりわけ子どもたちを放射能から守るために以下を要望いたします。1.渡利周辺の特定避難勧奨地点について、世帯ごとではなく、地区全体として指定すること 2.特定避難勧奨地点の指定に際して行う詳細調査について、山際の一部地域だけでなく、地区全域において再度実施すること、1cmの高さでの線量や屋内、側溝や用水路を含め、測定ポイントを増やすこと、土壌汚染についても調査すること 3.子ども・妊婦のいる世帯について、伊達市や南相馬市の例にあるように、一般の基準よりも厳しい特別の基準を設けること 4.積算線量の推定及び避難勧奨指定に際しては、原子力安全委員会の通知に従い、全ての経路の内部被ばくと土壌汚染の程度を考慮に入れること 5.避難区域外からの「自主」避難者への補償、残った者への補償が確実に行われるようにすること、国及び市による立替払いを実施すること 6.指定に際しての説明会は、決定を通知する場ではなく、住民の意見を聴取する場とし、その結果を指定の検討に反映させること以上 署名フォームはこちら(携帯からも署名できます)
https://pro.form-mailer.jp/fms/e5e429dd22617
紙のフォームはこちら
http://dl.dropbox.com/u/23151586/111005_watari_yousei.pdf
呼びかけ団体/問い合わせ先:
・渡利の子どもたちを守る会
・子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
・福島老朽原発を考える会 阪上/090-8116-7155
・国際環境NGO FoE Japan 満田(みつた)/090-6142-1807
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<要請の理由>につきましては、ファイルにアップしてあります要請書原案をご覧ください。

  《子どもたちを放射能から守る福島ネットワークからの転載です》

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0643 :111010〕