貉(むじな)   韓国通信NO755

 前回号で自民党の総裁選を「同じ穴のムジナ同士の茶番劇」とこき下ろした。事実、連日にわたるスピーチ大会は茶番劇を通り越して、喜劇的でさえあった。
不勉強ながら貉(むじな)がアナグマとは知らなかった。またタヌキと混同されるので、貉は人を騙すタヌキと言いかえてもかまわないかも知れない。

 新総裁に選ばれた石破氏は記者団の質問に「ムニャムニャ…」とあいまいな返事で裏金問題をはぐらかし、早速化けの皮を現した。「デモはテロ」、「核兵器には原発が必要」という持論も明らかになるはずだ。

 党首に野田氏を選んだ立憲民主党に失望した。「保守派」を自認する彼が党首にふさわしいというから驚く。口だけの「反自民」「政権交代」の本気度は疑わしく国民の胸に届きそうにない。民主党政権末期のアイマイ妥協路線への反省はない。こちらもタヌキに見えてくる。元首相という知名度が党内で評価されたそうだが、党の常識が国民の常識とかけ離れている。若者たちをひきつける魅力も感じられない。

 今、私たちはかつてない不安な時代に生きている。与党も野党もリップサービスだけでは通じなくなった。国民や財界の顔色を伺うポピュリズム、人気取りの時代ではない。必要なのは納得性のある明確なビジョンと政策だ。失速気味の野党第一党を育てる覚悟が私たちに求められている。失望を希望に変えなければ絶望しかない。

<トランプかハリスか>
 選ぶ資格はないが世界にとって一大関心事である。対中国、北朝鮮政策はどうなるのか。ウクライナとイスラエルの戦争はやめるのか。何事もアメリカ次第という点で日本も韓国も同じだが、此の際、両国ともアメリカからの独立を真剣に考えたらどうだ。戦争をするかどうかまで決められては植民地と変わりがない。

<『虎と翼』>
 日本初の女性弁護士となった三淵嘉子をモデルにしたNHKの連続ドラマから毎朝目が離せなかった。女性の地位向上と闘った女性は世界で数えきれないが、このドラマはそのひとつとして取り上げた。現在、法的には男女平等でも実質を欠くという現実がある。国際比較ではわが国は156ヵ国中118位と深刻だ。主人公の猪爪寅子が戦前から戦後に至る戦争と家庭と職場の問題を見事に演じて見せた。
 細やかな夫婦愛、親子愛、同僚の描写が微笑ましくもあったが、生活と結びついた憲法第14条が繰り返し語られたことに新鮮な驚きがあった。原爆被災者の訴えに原爆投下を国際法違反と認定して救済の道を開いた。尊属殺人の規定廃止。家庭裁判所の判事として、犯罪を裁くのではなく、少年を育てようと腐心する裁判官の姿が新鮮に映った。
 日本のドラマでは「おしん」が世界的に有名だが、憲法を変えることを党是とする自民党政権の動きが目に余る今日、憲法の精神に真正面から迫ったドラマは貴重だった。

初出:「リベラル21」2024.10.05より許可を得て転載
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