2019年1月25日
辺野古沖で進められている土砂投入をめぐるNHKの政府広報ぶりがあざとい。見るにみかねて、私も共同代表の1人になっている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」はこの件でNHKの3名の幹部宛てに6項目の質問書をまとめ、昨日、渋谷のNHK放送センターへ出向いて提出した。
以下は、その全文。会のHPに載せている。
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2019/01/post-7a7b.html
質問項目の1~3は、1月6日に放送されたNHK「日曜討論」において、安倍首相が事実と食い違う「サンゴ移植」発言をしたことに関するNHKの報道のあり方に関するもの。
質問項目の4,5は、土砂埋め立て海域で確認された軟弱地盤の問題に関するNHKの報道の不作為に関するもの。
質問項目の6は、NHKが従来から、番組に関する質問について、「自主的編集判断」を盾に回答を拒むのは視聴者への説明責任に背くものと考え、編集の過程の説明を控えることができるのは、どのような場合かについて、当会の考え方を示したうえで、NHKの見解を質すもの。
2月5日(火)までに文書で回答を求めている。
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2019年1月24日
NHK会長 上田良一様
NHK放送総局長 木田幸紀様
NHK報道局長 小池英夫様
辺野古での土砂投入工事をめぐる報道についての質問書
NHK を監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/
皆様におかれましては公共放送をつかさどる重責を担われ、ご多忙のことと存じます。
以下、質問書を提出します。別紙の宛先へ、本年2月5日(火)までに文書でご回答をくださるよう、お願いいたします。
問題の経過
(1)去る1月6日に放送された貴局「日曜討論」に出演した安倍首相は沖縄辺野古での土砂投入に関連して「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移している」、「砂浜に存在した絶滅危惧種は砂をさらって、しっかり別の浜に移した」と発言しました。希少資源のサンゴの保全に十分配慮した上での土砂投入であると言わんとしたものです。
しかし、沖縄防衛局が移植したサンゴは埋め立て海域全体のサンゴ7万4千群体のうちの9群体にすぎず、その9群体も今回の土砂投入区域外のものでした。
放送直後から、「事前に収録した録画の放送であるにもかかわらず、なぜ事実と異なる首相発言をそのまま放送したのか」という疑問、批判が多数、貴局に寄せられたと伝えられています。
この点を質した報道機関の取材に対し、貴局は「NHKの自主的な編集判断」と応答するのみで、訂正も謝罪もないまま数日、経過しました。
1月11日の「ニュース・ウオッチ9」で、ようやく安倍首相の発言が事実と異なっていたことを伝えました。
(2) 1月21日、防衛省は辺野古埋め立て区域に存在すると指摘されていた軟弱地盤対策のための設計変更を検討することになったと伝えられました。軟弱地盤の存在は2016年に沖縄防衛局がまとめた地質調査報告書で確認され、国会でも取り上げられてきました。沖縄県の見通しでは、設計変更には約1500億円、5年ほどの年月がかかるとのことで、県知事の承認が必要とされることから、辺野古沖の埋め立て工事は大幅にずれ込むことが必至の状況です。
しかし、この件について、NHKは21日夜7時のニュースでも9時のニュースでもまったく取り上げませんでした。
〔質問1〕
「あそこの」「別の浜に」とはどこを指すのか、常識的に理解不能な安倍首相の発言を、その場で問い返すことなく終わった司会者の見識が問われますが、事前録画で、放送前に首相発言の真偽をチェックする時間があったにもかかわらず、事実上の否定報道が5日後の11日の「ニュース・ウオッチ9」となったのはなぜですか?
〔質問2〕
今回の「日曜討論」の件に限らず、NHKは放送に関する外部からの疑問、質問に対して、自主的編集を盾に実のある応答を拒むのが通例になっています。これについては、後ほど質問しますが、自主的というなら、貴局内の自主的放送審査組織である考査室は、1月6日の「日曜討論」における安倍首相発言の放送のあり方について、放送後、どのような考査をし、担当部署に伝え、やり取りをしたのか、なにもしなかったのか、お聞かせ下さい。
〔質問3〕
1月11日の「ニュース・ウオッチ9」は、「辺野古埋め立て 土砂投入前にサンゴ移植急ぐ 防衛省」という大見出しで、先の安倍首相の「サンゴは移植した」という発言が事実と食い違うことを伝えたあとで、 「しかし、残りのおよそ7万4000群体の移植は県の許可が得られていないことなどから進んでいません。このため防衛省はサンゴが生息する区画に土砂を投入する前に移植するため、今後、県との調整を急ぐことにしています」と放送しました。
このような伝え方は、沖縄防衛局は希少資源の保全のためにサンゴの移植を進めようとしているが、沖縄県が許可しないのが原因で移植が進んでいないという認識を誘導するものです。
しかし、沖縄県が移植を許可しないのは、移植ではサンゴを保護できる保証はない、繊細な環境のなかで生息するサンゴは水流や光の強さが少し変わるだけで死滅する恐れがある、サンゴの保全を考えるなら土砂投入は避けるべきという専門家の判断も参考にしたものです。
こうした沖縄県や専門家の意見を伝えることなく、政府・沖縄防衛局の言い分だけを一方的に伝えるのは、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と定めた「放送法」第4条第1項4の規定に反していると当会は考えます。これに対する貴職の見解をお示し下さい。
〔質問4〕
1月21日に防衛省が土砂埋め立て海域における軟弱地盤対策のため設計変更を検討することになったという事態は辺野古沖での新基地建設に甚大な影響を及ぼすと予想されます。しかし、NHKは当日、夜7時のニュースでも9時のニュースでも、歌舞伎町で起った発砲事件を時間を割いて伝える一方で、軟弱地盤の問題はまったく伝えませんでした。
なぜ、このような話題の取捨選択がされたのか、その理由、基準をご説明ください。
〔質問5〕
土砂埋め立て海域における軟弱地盤の問題は2016年以来、国会でも取り上げられてきましたが、NHKはこの問題について、これまでのニュース・報道番組でどのように(いつ、どの番組でも含めて)、伝えてきたか、ご説明ください。
〔質問6〕
今回の件に限らず、「放送法」第4条や「NHK放送ガイドライン」などにもとづいて、NHKの番組内容について質問をした側に対し、NHKは「局の自主的編集判断」を盾に、実のある回答を拒むのが通例になっています。
しかし、NHKに認められる「自主的編集判断」とは、視聴者からの質問を遮る盾として認められたものではなく、NHKが監視の対象とする様々な権力の介入を防ぎ、視聴者の知る権利に応えるためのものです。
この意味から、NHKがニュース報道等の編集過程・内容についての放送後の質問について、説明を拒めるのは次の場合に限られ、それ以外はむしろ、積極的な説明責任があると当会は考えています。これについて貴職はどう考えられるのか、見解を求めます。
①取材源(公的機関でしかるべき職務権限を持つ者は除く)の秘匿を必要とする場合。
②個人(公的機関でしかるべき職務権限を持つ者は除く)のプライバシ―を保護する必要があると認められる場合。
③営利企業に競争上の不利益を及ぼすと合理的に判断される場合。
以上
初出:醍醐 總のブログから許可を得て転載
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4562:190129〕