野放図のツケ

著者: 藤澤豊 ふじさわゆたか : ビジネス傭兵
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Becker’s Hospital Reviewを見るたびにため息がでる。遠い海の向こうのはなしで、間接的に間接的にがいくつも続いて、ほとんどなんの関係もないんだし、なにができるわけでもない。そんなものを見て気に病むんなら、見なきゃいいじゃないかとも思うが、気になってしょうがない。

アメリカで新型コロナウィルスの感染が急拡大している。ニューイングランドなど東北部では一時期随分収まってきたようにみえたが、また感染が増えている。トランプ支持者の多い中西部や南部にいたっては感染爆発の感さえある。ヨーロッパでも感染がぶり返して、またロックダウンになっている。中南米やインドやアフリカを始めとする発展途上国ではこれでもかというほど感染拡大が続いている。

感染拡大は世界中どこもでのはなしで、ことさらアメリカがどうのというのは、なにかバイアスのようなものがかかった見方じゃないのかと思いはするが、先端科学技術を誇り最先端の医療技術と施設を擁するアメリカで、なぜ発展途上国を上回る勢いで感染が拡大し続けているのか? 納得のいく説明は?と思ってしまう。いくつもの要因がからみあってのことだろうが、要因の大元には奇形化した文化があるような気がしてならない。

Webでいくつかのニュースサイトをみてゆけば、各地の感染状況が大まかにせよ分かる。アメリカだけでもいくつもニュースサイトが日々の状況を伝えている。そんななかでBecker’s Hospital Reviewは重宝している。ちょうどポータルサイトのような感じでコロナウィルス関係から医療全般の記事へとアクセスできる。

https://www.beckershospitalreview.com/public-health/states-ranked-by-covid-19-test-positivity-rates-july-14.html?utm_medium=email&utm_content=newsletter

たまに気になって関連サイトに飛ぶこともあるが、トップ記事「States ranked by COVID-19 test positivity rates」だけさっと見ている。毎日各州の検査結果が感染者(陽性)の数が多かった州からならんでいる。

脱稿時点(12月18日付けの記事)で、感染者が一番多かったアイダホ州を例にみてみる。

逆算すれは分かるが、テストした人数そのものはリストに記載されていない。

1) Idaho: 48.5 percent positive

テストを受けた人の約半数(48.5%)が陽性だった。(七日間のMoving average=移動平均)

2) New daily cases: 1,426

新たな感染者が1,426人。

3) Tests per 100,000: 152.4

テストを受けたのは十万人当り152.4人。

Percent positiveが5を下回れば、感染拡大が止まって終息に向かっていると判断される。

感染を防止する対策として、Social distanceなどという気の利いた新語まで作って、集密を避けろ、マスクをしろ、手を洗えなどなど日常生活で注意した方がいい、しなければならないことが、まるで小学校の低学年を相手にしているかのように繰り返し言われ続けている。

どれも常識の範疇でしかないと思うが、それを自由の侵害だと主張して、一切の防止策を無視することが自分のありようだと思っている人が後をたたない。無視するのは個人の自由だとしても、それによって家族をはじめ、同僚や知り合い、さらには町ですれ違っただけの人たちにまで感染のきっかけをつくることになりかねないという社会人として最低限の認識もない社会集団が闊歩している。

ニュースを見ていると、どうもおめでたい人たちが自分(たち)がこう思いたい、こう思った方が得だ、楽だということから自分たちに都合のいい、大げさにいえば自分(たち)の世界観を振り回しているようにみえる。その典型がトランプや取り巻きの利権屋や教条的な宗教思想からしか物事を考えられない人たちで、その人たちにとっては科学的事実に基づく規制は自由を侵害するものでしかないのだろう。確かに自分(たち)の都合に基づく権利は誰にでもある。ただ権利の主張がすぎれば、権利というより都合に堕して社会が機能しないこともある。そのあるというのを事実として見せてくれているのに、それを認めようとしない。

差別される側の日本人だからというものあるだろうが、仕事や日常生活を通してアメリカ人の好き勝手な主張と行動にはうんざりさせられてきた。好き勝手な行動の背景にはSuperiority Complex(優越感というより優越思想といったほうがあっている)があって、自分(たち)を中心として世界が回っていると思っている。自分(自分の所属する世界―人種や種族と言い換えてもいい)が最も優れている。そしてその先には、誰も彼もが誰も彼もに対して文句百曼陀羅の、自分たちがつくった世界で最も自由で豊な(と信じて疑わない)アメリカ合衆国がある。

もうそんな時間の浪費でしかないヤツらとは付き合うこともない。物理的にも精神的にも距離をあけて見れるようになった。新型コロナウィルスの感染爆発、「野放図のツケがまわってきたな、絵に描いたような自業自得」としか思えない。

アメリカ人には、多くアメリカ人と言い換えなければならないにしても、あまりにdisciplineがなさすぎる。Discipline、日本語では規律だとか統制や訓練や修養になる。立派な英語の先生が決めた訳語なんだろうけど、それでは本来あるべき自制が沈んで強制が前面にですぎる。自制から生まれる良識といいかえてもいい。良識?漠然としすぎてないかと思わないわけでもない。でも、幸いなことに、これ以上の見本はいないといういい反面教師のおかげで説明の必要もない。トランプがやっていることの背景の真逆が良識と思えばいい。ああだのこうだの勝手なことをほざいているが、根底にあるのは優越思想と日常生活に染みついた野放図、それも都合が勝ちすぎて99.9%がウソ。ウソの上塗りから生まれる誰もが誰も信用しない詐欺社会。野放図がはびこって、やっとでてきたワクチンも半数以上の人たちが接種を拒否している。

「States ranked by COVID-19 test positivity rates: Dec. 18」のワースト五州とベスト五州をコピーしておく。

Idaho: 48.5 percent positive

New daily cases: 1,426

Tests per 100,000: 152.4

South Dakota: 41.7

New daily cases: 594

Tests per 100,000: 173

Pennsylvania: 40

New daily cases: 10,008

Tests per 100,000: 201.2

Alabama: 37.2

New daily cases: 4,695

Tests per 100,000: 199.1

New York: 5.2

New daily cases: 10,914

Tests per 100,000: 1,012.4

Oregon: 5.2

New daily cases: 1,314

Tests per 100,000: 597.1

Washington, D.C.: 3.7

New daily cases: 228

Tests per 100,000: 938.7

Hawaii: 2.9

New daily cases: 136

Tests per 100,000: 322.4

Vermont: 2.3

New daily cases: 140

Tests per 100,000: 728.4

2020/12/20

Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10397:201222〕