目下、NHK経営委員会はこの1月に任期が切れる福地茂会長の後任の会長選出に向けた協議を行っている。連休明けの1月11日、12日と連続して委員会がセットされているところを見ると、この両日で決定を予定しているようである。しかし、具体的な候補者をめぐって1月7日付けの『産経新聞』は次のような報道をしている。
NHK会長人事 安西氏に異論 受諾時「交際費は?」 不信呼び経営委が二分
『産経新聞』2011年1月7日(金)、7時57分配信
NHKの新会長人事をめぐり、5日に開かれた最高意思決定機関の経営委員会(委員長・小丸成洋福山通運社長)の臨時会合で、慶応義塾前塾長の安西祐一郎氏(64)の会長任命に対して賛否が二分したことが6日、分かった。安西氏は経営委の就任要請を受諾する意向を示したとされるが、受諾に際して会長交際費などについて尋ねたことが一部の委員の不信を買っており、人事の行方が注目される。(草下健夫、三宅陽子)
経営委は11日の会合で再び安西氏の新会長任命について議論し、委員12人中9人以上の賛同が得られれば、12日に安西氏に正式に就任を要請する。
複数のNHK関係者によると、昨年暮れに経営委から就任要請を受けた安西氏は、受諾に当たっていくつかの質問を経営委側に投げかけ、その中に、(1)都心に居宅を用意できるか(安西氏は神奈川県在住)(2)副会長は自分が連れてくることができるか(3)会長の交際費はあるのか-の3点が含まれていたという。
安西氏が受諾の意向を示したことがNHK内に伝わった際に、この3点を安西氏が会長就任の「条件」として示したとする見方が広がり、波紋を呼んだ。
NHK幹部の一人は「質問なのか、条件なのかは分からない」と前置きしながら、「交際費のことを最初に聞くとは。福地茂雄現会長はそういうことに関心を寄せなかった」と戸惑いの表情を見せる。経営委員の一人は「不祥事があれば謝り、国会で責任を追及されるのがNHK会長の仕事。ボランティアの側面があり、処遇を先に気にするようで務まるのか」と不信感をあらわにする。
また、安西氏が塾長在任中の平成20年度決算で、269億円の支出超過となったことなども、「経営者」としての手腕を不安視させる要因となっているようだ。(以下、省略)
また、『東京新聞』も昨年12月29日付けの紙面で次のような記事を掲載していた。
NHK会長 安西氏が内諾意向
2010年12月29日 東京新聞朝刊
来年一月二十四日に任期満了となるNHKの福地茂雄会長(76)の後任選びで、NHK経営委員会(小丸成洋委員長)が候補の筆頭に挙げていた前慶応義塾長の安西祐一郎氏(64)が、同委の要請に対し条件付きで内諾する意向を伝えていたことが二十八日、本紙の取材で分かった。経営委などの複数の関係者が明らかにした。
条件は「副会長人事は自ら決めたい」などとするもので、関係者の中にはこの条件に反発する声もあり、来年一月十一、十二両日に開催予定の経営委で認められるかは流動的な情勢だ。
安西氏は東京都出身。慶応大理工学部教授などを経て、二〇〇一~〇九年まで慶応義塾長。NHK会長は経営委が任命。委員十二人のうち九人以上の賛成で決まる。
私はNHKの会長職はボランティアだとは思わないが、会長候補者として打診された際に、テレビ・メディアの最高責任者として問われる見識ではなく、自分が使える「交際費はいかほどか」、「都内に居宅は確保されるのか」といった処遇に関心が先走る人物の知性は疑ってかかる必要がある。
なお、NHKの副会長は現行放送法で「経営委員会の同意を得て、会長が任命する」(第27条第3項)となっている。就任する前から、「自分が連れてくる」人物について経営委員会から一任を取り付けておこうということなのか? 民間経営での社長の専決体制を、執行機関と監督機関を分離した公共放送に持ち込もうとするのであれば、ますます場違いの人物と思われる。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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