7月13日に行われた衆議院安保法制特別委員会の中央公聴会のダイジェス
トをお送りします。ぜひご一読ください。なお、同日午後に行われた一般
質疑のダイジェストは改めてお送りします。
本日14日は定例日(月、水、金)ではないにも関わらず、民主、共産の反
対(理事会に欠席)を押し切る形で、自民、公明、維新が午前9時~12時
の一般質疑の開催を強引に決めました。維新の姿勢が相変わらず定まりま
せん。与党は15日に締め括り総括質疑を行って採決へと突き進む構えです。
市民の強行採決反対の声をどれほど大きく可視化できるか、正念場です。
自民、安保15日に採決打診 民主拒否、攻防ヤマ場へ(7月13日、共同)
http://bit.ly/1O5QAuv
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【7月14日(火)安保法制特別委員会 一般質疑】
※3時間、NHK中継なし
9:00~9:18 山口壮(自民)
9:18~10:46 民主
10:46~11:10 足立康史(維新)
11:10~11:35 吉村洋史(維新)
11:35~12:00 共産
※民主、共産の質疑者は決まっていません。欠席の可能性があります。
※中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
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<審議ダイジェスト>
【7月13日(月)の「安保法制」特別委員会 中央公聴会】
※9時~11時55分、NHK中継なし
インターネット中継アーカイブ
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45124&media_type
<公述人の意見陳述>
◆岡本行夫(自民推薦、岡本アソシエイツ代表)
「72年見解は80年頃から変容した安保環境に適合しなくなった。外国船に
混じった日本船を守れない。内閣法制局が直接的な自国防衛以外を黒とし
たのは適切だったのか。冷戦時は米ソ衝突以外には日本人の生命が脅かさ
れることはなかったが、シーレーン情勢を考えても激変した。」
◆岡本行夫
「海賊対処でも相手が国、国に準ずる組織なら護衛できなくなる。ISILの
襲撃に拱手傍観というのはどう考えてもおかしい。9.11テロ後に米第7艦
隊が硫黄島に退避する際、「海自の先導を」と要請があったが、「所掌事
務に必要な調査・環境」との名目で海自護衛艦を出動させた。その姿は繰
り返しテレビで放映され、米国民の感動を呼んだ。この法制で堂々と伴走
できることになる」
◆岡本行夫
「1987年、イランの攻撃から守るための国際護衛艦隊への参加を、通過す
る7割が日本船なのに、日本は集団的自衛権の行使となることを理由に断
った。法案を「他国の戦争に参加するもの」と責任政党が言っているのは
残念だ。ある憲法学者は「日本にテロを招く」と言ったが、テロをキリス
ト教国家に押し付けていいわけではない」
◆岡本行夫
「ある憲法学者は「外務省の役人は戦地に行くべきだ」と言ったが、20数
名の外交官がバグダッドで職務を全うしている。バグダッドの24ヶ国ぼ大
使館に武官が駐在しているが、日本大使館には1名もいない。各国の犠牲
の上に日本人の生命と安全を守ってもらってきたこの国のあり方を変える
歴史的分岐点にいる」
◆小沢隆一(共産推薦、東京慈恵会医科大学教授)
「議員が「学者は字面に拘泥する」と言ったが、字面は言葉であり文化だ。
それを同時代の人々に伝えるのが立憲国家の作法。「憲法9条2項は自衛権
の発動としての戦争も放棄している」との吉田首相の言葉は正当だ。安保、
自衛隊の既成事実の重みで魔法のような状態が続いている」
◆小沢隆一
「命を守るのは学者でなく政治家だというのはミスリードだ。憲法学者に
閣議決定で憲法解釈を覆すことに反対する幅広い一致があることに特段の
配慮をしてほしい。法案は武力行使がどの程度なら合法的に留まるかがあ
いまいで不明確だ。歯止めのない集団的自衛権行使につながり憲法違反だ」
◆小沢隆一
「「直接侵略及び間接侵略」の文言の削除は安易かつ不適切だ。法案は地
方公共団体や指定公共機関にも役割を押し付けるものだが、その意見を聞
かずに採決するのは丁寧な審議とは言えない。地理的限定が外れ、戦闘地
域以外で弾薬提供さえできる。兵站支援は武力行使の一環だ」
◆小沢隆一
「自衛隊は捕虜としての扱いも、文民としての保護も受けない著しく不安
定な地位に置かれることになる。これは「武力行使はしない」としたこと
による根本矛盾だ。根拠に乏しい前提に立ち、自衛隊員の生命を著しく脅
かすもの。自衛隊員の命と暮らしを守るのは政治の務めだ」
◆小沢隆一
「自衛隊法改正案の第95条の2の他国軍の武器等防護は、平時からの事実
上の同盟軍的行動だ。いつからオーストラリア軍と同盟関係になったのか、
不可思議だ。武器の使用が武力行使につながる危険がある。この規定は集
団的自衛権行使の前倒しであり憲法9条に反する。速やかに廃案にすべき
であり、昨年7月1日の閣議決定と新ガイドラインを直ちに撤回すべきだ」
◆木村草太(維新推薦、首都大学東京法学系准教授)
「日本国憲法のもとでは、日本への武力攻撃の着手以外の武力行使は違憲
だ。「存立危機事態」の定義が漠然としており、不明確なゆえにそもそも
違憲。憲法13条は個別的自衛権行使の根拠であり、自衛のためを超えるの
は政府の越権行為としても違憲だ。政府に行政権や外交権はあるが、憲法
に政府に軍事権を与える規定はない」
◆木村草太
「砂川判決は米軍駐留の合憲性を判断したに過ぎず、集団的自衛権の合憲
性を認めたものではない。72年見解の「急迫不正の侵害が及ぶ場合」とは
我が国への武力攻撃の着手だ。法成立は看過しがたい訴訟リスクを発生さ
せるものであり、本来、憲法改正手続きが必須だ」
◆木村草太
「維新の党案の「武力攻撃危機事態」は武力攻撃がない段階での武力行使
なら違憲。他国への攻撃を自国への攻撃着手と解釈すれば合憲だが、75年
10月29日の宮沢外相答弁のように、現行法でも武力攻撃事態と見なせる。
維新の案は現行法の一部を確認する条項だが、政府案の内容を明確化する
意義はある」
◆木村草太
「政府案の「我が国の存立」はあいまいであり、そもそも過不足がないか
を政策的に判断できない。国会が判断基準を持てず、政府の判断を白紙で
一任するものだ。国家は国民により付託された権限しか行使できない。憲
法を無視した政策論は国民を無視した政策論であると自覚すべきだ」
◆村田晃嗣(公明推薦、同志社大学法学部教授)
「法案を違憲とする憲法学者が多いが、安全保障学会では多くの専門家が
かなり肯定的な反応をするのではないか。学者は憲法学者だけではない。
「存立危機事態」はあいまいだが、かなりの部分はまだ起きていないこと
だ。全てを定義し、あいまい性を払拭するのは難しい。国際情勢もあいま
いで不明確だからだ」
◆村田晃嗣
「「地球の裏側で戦争する」との批判があるが、自衛隊の能力が欠けてい
る。「秘密保護法との関係で十分議論ができない」なら国会が措置を取る
べきだ。法案を「戦争法案」と言う議論からは安全保障議論は深まらない。
一方、「売国」というような議論も同様だ。こうした不寛容の精神を乗り
越えていくべきだ」
◆村田晃嗣
「安倍首相が訪米時に日米同盟を「希望の同盟」と言われたのは大変魅力
的な表現だ。希望とは単なる欲望でなく公共性が必要。また単なる願望で
はなく実現可能性が伴うもの。さらに待望ではなく主体的能動性が必要。
法が成立しても沖縄という難しい問題の前進が見られないと日米同盟は前
進しない」
◆山口二郎(民主推薦、法政大学法学部教授)
「60年安保で数十万の市民が国会を取り巻き、安保条約は承認されたもの
の、岸首相は退陣した。自民党は国民が憲法、民主主義への愛着が強いと
の教訓を汲み取り、経済発展重視の姿勢をとり、専守防衛の日本的平和路
線をとった。戦後レジームは自民党が作り出した。戦後日本が他国の戦争
に巻き込まれなかったのは集団的自衛権の行使を禁じたからだ」
◆山口二郎
「領域を守るのは個別的自衛権で可能であり集団的自衛権は必要ない。安
倍首相はネット番組で「一般家庭でも戸締りをすればいい。お互いに助け
合い警察に通報する、これが抑止力」と説明した。近隣と助け合う点では
韓国、中国抜きに町内会は構成できない。安倍首相の説明は専守防衛と地
域的協力を実現するものだ」
◆山口二郎
「日中間の紛争は非軍事的解決を求めてきた。「自国の武力行使を拡大す
れば安全」は政治的に稚拙だ。法案は専守防衛を逸脱し違憲だ。国会審議
で「存立危機事態」「重要影響事態」は明確に定義されず、政府は非常に
大きな裁量を手にすることになる。後方支援も武力行使と一体化し違憲だ」
◆山口二郎
「政治の劣化と民主主義の侵食が進んでいる。首相は「自分が正しい」と
して、まともに答えない。確信の強さは無関係だ。高村副総裁の「憲法学
者は字面にこだわる」などの発言は政治権力が論理を捻じ曲げる事を含意
している。自民党の「文化芸術懇話会」の議論は政権政党の変質を示した。
自分の欲するように世界を解釈するのは反知性主義だ」
<質疑から>
◆岡本行夫
「積極的平和主義は世界に誇るべき政策だ。法制定は普通の国家になる道
筋。日本周辺には軍事力で世界トップ5中の3大国があるが、日本の防衛
費はGDP比で世界100番目以下。日本が平和だったのは集団的自衛権の放棄
が理由ではなく、日米安保により報復意思を示してきたからだ」
◆今津寛(自民)
「私は家内や家族のためならどこにでも行く。村田さんの家が火事なら当
然行く。自分だけ隣の家の火事を消さないのか?」
木村草太「火事と武力行使を同視する比喩が成立するのか? 今の話は憲
法審査会で議論すべきだ」
◆寺田学(民主)
「ホルムズ海峡での機雷掃海の蓋然性は高くなっているのか?」
岡本行夫「申し上げるべき情報を持っていない。政治情勢からの政策決定
は説得力を持たない」
村田晃嗣「私も知見を持たない。国際社会の変化は速いので目前での整備
では遅い」
※二人とも答弁不能。
◆岡本行夫
「維新の独自案を国際法違反と言い立てる人がいるが針小棒大だ。国際法
専門家を呼び議論すべきだ」「法が成立しないと日本はみんなで守り合う
コミュニティに参加できない。大きな安心が得られない。それが憲法が想
定する「名誉ある地位」なのか」
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<特別版 第16号(7月10日の集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=311
<特別版 第15号(7月8日の一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=308
<特別版 第14号(7月6日の埼玉参考人会質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=304
<特別版 第13号(7月3日の集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=297
<特別質疑版 第12号(維新独自案発表と研究会声明)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=290
<【声明】[維新独自案]法案の修正ではなく、閣議決定の見直しを>
http://www.sjmk.org/?page_id=283
<特別版 第11号(7月1日の参考人質疑・一般質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=278
<維新「独自案」に関わる3つの論点>
6月29日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=265
<特別版 第10号(6月29日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=275
<特別版 第9号(6月26日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=255
<特別版 第8号(6月22日の参考人質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=251
<特別版 第7号(6月19日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=247
<特別版 第6号(6月15日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=241
<特別版 第5号(6月12日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=239
<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
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◆発売中の『世界』8月号に当研究会の論考が掲載されています。
ぜひご一読ください。
http://www.sjmk.org/?p=300
◇『世界』7月号、6月号にも論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5488:150714〕