震災復旧の中でも世界が動いているのを忘れるな

著者: 三上治 みかみおさむ : 社会運動家・評論家
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5月12日の朝日新聞夕刊は米上院のレビン軍事委員長らの与野党の重鎮と目される面々が普天間基地の辺野古基地移設を断念し、嘉手納基地への統合を検討するように国防総省に求める声明を発表した、と報じている。沖縄の辺野古基地新設による普天間基地移設に異議を申し立てたアメリカの内部の声として注目される。アメリカの内部でもかつての日米合意(自公政権下での合意)の再検討を求める声があることは伝えられてはいたが、このような形で明確にされたのははじめてである。 

何度も論じてきたようにアメリカの政治(軍事)と経済の衰退はもはや誰の目にも覆いかぶせなくなってきていることは明瞭である。リーマンショックは金融投機経済で一時的な好景気を演出したアメリカ経済の結末であり、これが生みだす恐慌的事態に対応するためにドルの増刷と垂れ流しをするしかなかった。これはドルの価値下落を伴うし、暴落という事態も予測される。アメリカ経済の一国経済の趨勢としては必然でありドル安としてそれは現象する。だがこれは双子の赤字としてアメリカ経済を支えている側面での矛盾である。それが進行すればドルが基軸通貨とはいえそれを支える構造が崩壊するからだ。外貨準備としてドルを使用し、国債を買いためるということができなくなるからだ。アメリカは双子の赤字の削減のために大幅な軍事費の削減にまで踏み込まざるをえない。軍事費の維持も困難なのである。上記の軍事委員長の発言はこうした状況を背景にしている。世界がアメリカ支配という枠組みであった時代の転換がこれほど明瞭になってきているのに、かつての枠組みでの立ち位置の保持に必死なのは日本の政党や官僚、また産業界やメディアである。民主党政権誕生と「日米関係見直し」に対するアメリカの対応、日本の政党や官僚の右往左往ぶりはウィキリークスが暴露したものを見ただけでも明瞭である。日本の官僚のアメリカ支配がここまで露骨であり、官僚たちの非自立性はびっくりだが、これは日本の戦後の立ち位置に対する骨の髄まで染み込んだ保守意識である。昨年の沖縄の人々の突き付けたものと、今回の大震災が連動しているとしたらそれはこの保守主義と体制の転換要求である。日本頑張れという空虚なスローガンではなく、アメリカとの政治・経済関係の見直しと自立化こそが大震災の復興のカギになる。必要なのはこれである。復興資金なんて保有するアメリカ国債を処分するだけでも目途が立つ。僕らが大震災の復興の構想を描く時に必要なのは世界の動向を忘れないことである。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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