香港問題について

私はかねてから「是々非々主義」を貫いているつもりです。見方によれば、「主体的に物事に取り組もうとしない」傍観主義者と見られるかもしれませんが、これは私の昔からの性向でもう「治る」ことはないでしょう。

ですから、今話題の「香港デモ」に関しても、「是々非々主義」を貫いているつもりです。大方の人の「香港人ガンバレ」とはやや異なり、箒川兵庫助氏のように、あのデモ参加者の中には「CIAの手先」や「職業的反共主義」がいる(少なくとも、その可能性はある)と見ています。

これまでのアメリカの裏面史を勉強したことがありますから、CIAや「反共主義者」が行ってきた数々の犯罪行為を知っているのです。例えば、CIAとキューバの「反カストロ主義者」とが結託して、カストロ政権に対してどのような行為をなしたかは、ご存知の方も多いと思います。

ただ、箒川氏と決定的に違うのは、習近平政権を無条件に擁護しようとは思わないところです。習近平政権は、最近私がよく使う用語表現で言えば、「開発独裁政党による開発独裁政権」であるという認識は、私の中国関係の立論の前提なのです。

ですから、歴史の順流、すなわち、民主化の方向からこうした非民主的な政権の改革を訴えることは、私は大いに支持しているのです。この点では、箒川氏とは意見が対立するかもしれません。でも、私は、これは、本来個々人の自由であるべき、価値判断の違いですから、それを理由にして箒川氏を非難するつもりはありません。

だが、最近の箒川氏の発言の中には、「まったく肯定できない。批判するべきだ」と言わざるを得ない言辞がありました。それは、「香港デモ青年たちの多くは暴徒であり,フ-リガンであり,そしてテロリスト集団と関連が深い一味である」という発言です。これは、「自由であるべき個人の価値判断の問題」ではなく、「事実か否かの問題」ではないでしょうか。

前述したように、私は「デモ参加者の中には『CIAの手先』や『職業的反共主義』がいる」と言いましたが、決して「デモ参加者の大部分は『CIAの手先』や『職業的反共主義』である」とは言っていないはずです。

「大部分がそうである」と「そのような人間がいる」という二つの言辞は、それぞれまったく異なる意味を持っているはずです。この二つの言辞の違いは、価値判断上の違いではなく、明らかに「事実か否か」の違いに帰着するはずです。

「事実か否か」の問題については、私には寛容な態度がとれません。「事実ではない言辞」に対しては、私は徹底的にこれを排除する立場に立っています。そして、この香港問題の多くの記事を読む限り、箒川氏の発言は「事実ではない」と判断できると思います(ある程度これまでのニュースを読めば、このことは、いちいち証明しなければならない問題ではないと言えるでしょう)。

私から見れば、是々非々主義は、「中間的な」生ぬるい態度とは異なります。事実関係に対しては徹底的に厳しい態度をとるものなのです。