騙されるな!曖昧な事故原因 『なぜ政府・東京電カは《地震》を事故原因から除外するのか?』

著者: 諸留能興 モロトメヨシオキ : パレスチナに平和を京都の会
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 先月9月18日に、原子力資料情報室第74回公開研究会主催の田中三彦氏講演で、サイエンスライターで、福島第1原発4号機の原子炉圧力容器の詳細設計に携わった経験者でもある同氏が指摘した問題点、『なぜ政府・東京電カは《地震》を事故原因から除外するのか?』は、非常に大切な指摘である。
 
 田中三彦氏以外にも、後藤政志氏、石橋克彦氏、広瀬隆氏、元原発建設現場監督一級配管工事士の故平井憲夫氏、海外では福島第一原発設計者のデール・ブライデンボー(Dale Bridenbaugh)氏など・・・他にも多くの人の同様の指摘がある[◆諸留註:1]。
[◆註:1]
【参考文献】
○「ふえみん」2011年10月5日号第2面
○月刊雑誌『世界・五月号』岩波書店[2011年5月第817号](134頁以下)田中三彦「福島第一原発事故は決して”想定外”ではない」
○井野博満編/井野博満・後藤政志・瀬川嘉之共著『福島原発事故はなぜ起きたか』藤原書店(2011年6月30日刊)
 
 福島第一原発事故の真の原因追及がなされず、全てが曖昧さの内に、全国の電力会社や政府による原発再開に向けての動きが強まりつつある今、改めて3・11原発事故の原因追求を曖昧にしたまま、小手先の「ストレス・テスト」等で「御茶を濁した」「曖昧な現状のまま」での「見切り発車的」な、原発再稼働を、断じて許してはならない。
 
 福島第一原発事故の原因追及を御用学者や政府に任せてはならない。あなた自身でしっかり判断して欲しい。
 
——以下、福島第1原発事故原因の深層と真相 田中三彦氏講演要約——
 

隠される地震の影響
 
 今回の3・11原発事故解析のポイントは、圧力容器の水位の急激な低下と格納容器の圧力の急激な上昇がなぜ起きたのかという点にある。炉心内の水位は、通常は4・37メートルであるのに、地震発生の約7時間後に45センチにまで下がり、翌日にはさらに下がって燃料棒がむきだしになった。格納容器には窒素が入っており、その圧力は通常大気圧とほぼ同じ(1気圧)であるのに、12時間後には7・4気圧(これは大気圧分を引いたゲージ圧の数値)という、異常に高いレベルにまで上昇した。これの解析が原発の安全性と深く関わっているが、政府・東電側は地震の影響を無視している[◆諸留註:2]。
 
[◆註:2]東京電力が衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会(川内博史委員長)に提出した福島第1原発の「事故時運転操作手順書」のほとんどを真っ黒に塗りつぶして提出した。「炭塗りしたのは、知的財産や核物質防護上の問題があるから」という国民を馬鹿にしたものだった。
http://www.47news.jp/CN/201109/CN2011090701001015.html
 

 圧力容器内の炉心の水位低下の原因としては(1)蒸気逃し安全弁が作動した(2)原子炉あるいは原子炉系配管の損傷、が考えられる。しかし、政府や東電は(1)しか考えようとしない。地震直後に制御棒が入り核分裂は停止したが、放射性物質が崩壊し続けるために崩壊熱が出て冷却材(水)の蒸発が継続し、原子炉の圧力が高まる。原子炉や配管の損傷を防ぐために、蒸気逃し安全弁が自動的に作動することになっている。この蒸気逃し安全弁が開くと、蒸気が配管で格納容器の圧力抑制室の水の中に導かれ、水になって体積凝縮が起き、原子炉の圧力容器の内圧が低下し、同時に原子炉の水位が下がる。圧力が低下するとまた弁が閉じる。このような開閉を繰り返すことで、水位が下がり、燃料が損傷したというのが東電の説明である。
 
 一方、格納容器内の圧力の上昇については、水位低下のためにメルトダウンが起き、原子炉に穴があいて、そこから高温高圧のガスが格納容器に噴出し、格納容器の圧力が急上昇したと東電や政府は主張している。
 
 しかし、蒸気逃し安全弁が自動開閉したというデータは1号機については、まったく存在していない。私(田中田中三彦)は、地震によって、原子炉系の配管が破損し、そこから高圧高温の水蒸気が格納容器に噴き出し、原子炉水位が降下したと考えている。
 

耐震ぜい弱格納容器
 
 格納容器は、事故時に機能するために存在し、最大口径の原子炉系配管がギロチン破断(配管が一瞬で完全に真っ二つに両断されること)しても対応できるように設計されている。1号機は4・25気圧にもちこたえられるように設計されていた。しかし、それが7・4気圧にまで高まった。それは水中に蒸気を誘導して格納容器の圧力を下げる圧力抑制機構が、地震で壊れ、蒸気が水に溶け込めないまま溜まったため、耐圧設計値4・25気圧を超えて、7・4気圧にまで高まったと考えられる。
 
 福島第1原発1~5号機で使用されているMarkI型格納容器(米国GE社製)は、1970年代から安全性の問題が指摘されていた[◆諸留註:3]。
 
[◆註:3
]これに関しては、「福島原発設計者元GE社員ブライデンボー氏の証言」と題する資料[2011(H23)年4月5日(火)PM17:40送信]を、私(諸留)も皆様に既に送信した。
 

 原子炉系配管が破損して格納容器へ水蒸気が噴出すると、蒸気は約秒速1000メートルの速度で、圧力抑制室(サプレッション・チェンバー)へと向かう。このため、格納容器を満たしていた窒素が354気圧に圧縮されて、圧力抑制室内の水の中に一気に押し出される。そのため、圧力抑制室内の水面が激しく上下に波打つ現象(スウェリング現象という)などが起き、圧力抑制室が破壊された可能性が非常に高い。米国GE(ジェネラル・エレクトリック社)制のMarkI型は、そうしたことが、まったく考慮されずに設計されていた。そのため、MarkI型原発設計者の元GE社員ブライデンボー氏が、米連邦議会で何度も、その危険性を証言してきていた。
 
 加えて、地震が起きると、地震動と圧力抑制室内のプールの水が共振して、液面に高い波を立てる「スロッシング現象」が起きる。すると水中に水蒸気を導く部分(ダウンカマーと呼ばれる部品)が水面に顔を出し、高温水蒸気が水中に入らずに、水面の外に出てしまう。また格納容器の接合部の溶接の質が悪いために、水の「はね」や地震の影響からの「亀裂」が入ったことも、十分考えられる。実際、2号機は圧力抑制室付近で、水素爆発が起きたが、それはこうした一連の推測を裏付けるものである。
 
 地震によって、原子炉施設の安全上重要な設備や機器が損壊していると考えられるにも関わらず、政府・東電は、この点には一切言及せず、黙殺する態度で押し通している。その理由、福島以外にも敦賀原発でも、浜岡原発でも、女川原発でも・・現在、全国で10基もの原発が、今回3・11原発事故を起こした福島第一原発と全く同型のMarkI型格納容器が使用されているからである。地震発生1時間後に襲来した津波が原因で事故が起こったのはではなく、津波襲来以前に、地震の振動によって損壊したことが明らかになれば、福島第一原発以外の、これら全国の原発の運転が再開できなくなることを電力会社や政府は避けようとの魂胆が透けて見える。
原発事故の原因を曖昧のまま、原発再稼働を「見切り発車」させてはならない。
 
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歴史に残る最大の悲劇は
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