10月4日広島の留学生会館で開催されたシンポジウム「NHKひろしまタイムラインと広島の民族差別の現在」の翌日、5日の朝、NHK広島放送局を訪ね、すでに公表している、306人(10月5日時点)の連名・署名をもらった抗議文と、連名者名簿、コメント集を手渡しました。そのときに読み上げた、最新の状況を踏まえた補足の抗議文をここに掲載します。シンポジウムと、NHKでの行動は、共同通信、共同配信記事を取り上げた全国の地方紙、朝日新聞、中国新聞、ハンギョレ新聞、中央日報、毎日新聞英語版などに取り上げられメディアにも大変注目されたと感じています。
10月4日シンポジウム「NHKひろしまタイムラインと広島の民族差別の現在」
(於 広島留学生会館)
10月5日 NHK広島放送局前で
シンポジウム実行委員会のメンバー、シンポジウム参加者と
(補足抗議文はここから。文中のハイパーリンクはブログ読者の利便のために運営者がつけたものです。)
NHK広島放送局 御中
昨日(10月4日)留学生会館において、シンポジウム「NHKひろしまタイムラインと広島の民族差別の現在」を行いました。朝鮮人を乱暴で怖い存在として表現する「ひろしまタイムライン」の8月20日、6月16日の「シュン」ツイートの内容について、来場70名、オンライン50名の参加者の前で、在日朝鮮人の3人のゲストスピーカーが発言しました。権鉉基さんは、「在日朝鮮人がますます語りにくくなり、無色透明化される今の日本」を指摘、これらのツイート内容が何を意味するかについて、李周鎬さんは「日本人に対して在日朝鮮人への偏見を助長し、在日朝鮮人に対しては“同化”を更に強いることになる」、尹李英愛さんは「旧植民地宗主国の国営放送が、旧植民地出身者及びその子孫にヘイトスピーチを行う」ことであると指摘しました。法学者の前田朗さんは、問題のツイートの内容は「2016年に成立、施行された“ヘイトスピーチ解消法”の定義・解説」から、これらのツイート内容は「ヘイトスピーチに当たる」と発言しました。私、乗松聡子は、「ピース・フィロソフィー・センター」のブログで8月23日に発表した、貴局に当該ツイートを削除するよう求めた抗議文に連名をもとめ、現時点で306人の賛同が集まっています。すでに貴局にはお伝えしていますが、その中には「ノーベル賞」受賞スピーチを行ったカナダ在住の被爆者サーロー節子さん、日本被団協事務局次長の和田征子さん他、三宅信雄さん、ランメル幸さん、豊永恵三郎さん、花垣るみさんら広島と長崎の被爆者や被爆二世、元広島市長の平岡敬さん、前広島市長の秋葉忠利さん、25年前から学生を広島と長崎に日米平和学習の旅に連れていっているアメリカン大学のピーター・カズニックさん、元広島平和文化財団理事長のスティーブ・リーパーさん、また、お名前から朝鮮半島にゆかりのあると思われる方が30人かそれ以上いらっしゃいます。
10月2日、貴局は『プロジェクト開始から半年、過去のツイートをまとめて読みやすくするため』と称し、これらのツイート内容を10月2日ホームページに「移設」しました。問題の「シュン」8月20日、6月16日ツイート内容については注釈をつけましたが、これらの注釈は、朝鮮人が広島に多く存在した、原爆被害に遭ったと言っているだけで、これらのツイート内容がもたらす「朝鮮人が乱暴だ」という印象、民団が人権救済申し立てで述べた「朝鮮⼈の不当性を際⽴たせる叙述」には何ら変わりはありません。また、これらのツイート内容の背景にある、植民地支配の時代から今に続く、日本人による在日朝鮮人・韓国人に対する差別意識について触れてさえいません。注釈では、「併合」「統治」という言葉を使い、敢えて「植民地支配」という厳然たる歴史的事実に言及することを回避し、強制「動員」だけでなく、土地調査など植民地政策で土地や生活の糧を失った多くの朝鮮人が日本に職を求めざるを得なくなったこと、朝鮮人原爆被害者も植民地支配の故に、被爆させられたのだという、日本による加害であったという本質を覆い隠した表現になっています。貴局は、「再発防止」をすると言いながら、この「移設」により自らが「再発」をさせたのではないでしょうか。これは、無知や歴史認識欠如が一因だったと思われる最初の問題ツイートのアップのときと全く意味合いが異なります。今回、これだけ当事者、市民、識者、メディアに批判を受けた上で、確信犯的に差別ツイートを新たに掲載したのです。これらの差別ツイート内容を「削除しない」「放置している」状態から「積極的に発信した」状態に踏み込んだと言えると思います。そして貴局は、今回の措置は一連の批判を受けたからではなく、「最初から決まっていた」と主張しています。これだけたくさん来た批判に全く耳を傾ける気はないという表明に聞こえました。
あらためて、差別助長ツイート内容を、ツイッターであろうがホームページであろうがいかなる公共媒体からも削除するよう貴局に求めたいと思います。8月23日付の抗議文と、連名者の名簿、およびコメント集を貴局に届けに参りました。受け取ってくださるようお願いいたします。
2020年10月5日
ピース・フィロソフィー・センター代表 乗松聡子
初出:「ピースフィロソフィー」2020.10.6より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.com/2020/10/blog-post_6.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion10174:201007〕