露シア烏クライナ戦争の現状認識に関して、素人にとって、電子画面に毎週登場する“BOGDAN in Ukraina”と「ニキータ伝」が役に立つ。前者はキーウ(キエフ)のウクライナ人による、後者はモスクワ在住の日本人による、共に日本語の情報発信である。中立の立場をとらず、夫々の国の勝利を願って戦況と戦争政策を解説してくれる。
両交戦国の外部に生きる私=岩田は、両者の発信情報が指示する所が一応斉合していれば、事実情報として受け止め、また不斉合であれば、参考資料として胸に納める。
発信情報それ自体よりも、両者がアナウンスする際の全身的雰囲気や表情や気分を感じ取ることで、戦争全体の優劣の流れが見えて来る。
神無月のある日、ウクライナ人のBogdanは、「アメリカの高官が語ったウクライナ戦争計画」を発信した。Bogdan自身が酒の席ではあるが、アメリカ人高官から直接聞いた露烏戦争の真相であると言う。「アメリカ高官が暴露!ウクライナ戦争は20年前から仕組まれていた計画だった?ロシア弱体化と欧米の真の狙いを明かす衝撃の裏シナリオ」を伝えて、これは「都市伝説」の気味もあるにせよ、相当に事実と合うと考えると語っていた。
要するに、この露烏戦争は、20年前から米国が仕組んだ方略に素朴なウクライナがうかうかと乗せられてしまった、と言う話だ。ウクライナ国民が今日のような窮状に追い込まれてはじめて、米国の策謀に気付いたと言う話だ。しかも、それを広言するに、米高官に酒席で教えられて、あるいはそういう体裁をとらざるを得ない所に、ウクライナの悲劇性が存する。
このアメリカの方略について、私=岩田は、戦争初年の2022年・令和4年6月20日の「ちきゅう座」netに「死せる孔明生ける仲達を走らす――ブレジンスキー対プーチン」https://chikyuza.net/archives/120084 と同年11月26日の「『死せる孔明生ける仲達を走らす』補論――プーチン戦争の一背景 ブレジンスキー」https://chikyuza.net/archives/123565 においてすでに論じていた。ブレジンスキーは、アメリカのトップ地政戦略家、2017年没。
ベオグラードの親露容中の週刊誌『ペチャト』(2024年9月27日)にウィリー・ヴィムメルWilly Wimmerは、論説を発表しその最終結論を次のように書く。「2000年4月以来、ブラチスラフのシナリオのように、あるシナリオが文字通りに遂行されたのは稀なことである。それは対ユーゴスラヴィア戦争から始まった。」(p.23)そのシナリオの目指す所は、「バルト海と黒海の間に新しく鉄のカーテンをおろして、ロシアをヨーロッパから追い払う。状況が許すならば、今日のロシア領土内に多くの国々を樹立する。」(p.23)
ここで、「ブラチスラフ」とは、1999年対セルビア大空爆(NATOの対ユーゴスラヴィア戦争)の翌年2000年4月28-30日にスロヴァキアのブラチスラフで開催されたNATO会議。ウィリー・ヴィムメルは、ドイツCDUの国会議員、OSCE全欧安保協力機構総会副議長でブラチスラフNATO会議の出席者。
Bogdanの「裏シナリオ」は、上述のシナリオのことであろう。
令和6年神無月27日 岩田昌征/大和左彦
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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