イランは大陰暦のイスラム暦を公式暦にせず、太陽暦のイラン暦を使う
「明けましておめでとう」。
2012年3月20日、イランはイラン歴1391年の新年を迎えた。テヘラン時間西暦2012年3月20日午前8時44分27秒に迎えた。東京時間では2012年3月20日 午後2時14分27秒である。
時間が中途半端なのは、太陽が春分点を通過する時間を区切りにするからである。
イランの新年はノウルーズと呼ばれている。イランだけではなく、イラン文明に属する国々、アフガニスタン、トルコ、アゼルバイジャン、キルギス、ウズベキスタンなどで広く祝われている。
ノウルーズは冬が終わり、春が始まる時期である。ほぼ日本の春分の日に当たる。
ノウルーズをさまざまな飾りで祝うが日本人にとって印象深いのは金魚鉢に入れた金魚である。金魚はノウルーズに欠かせないものになっている。
イランはイスラム教の国だが、大陰暦のイスラム歴を公式暦として採用せず、ヒジュラを元年とする太陽暦であるイラン歴を日常生活で使用している。イラン人の手帳を覗くと、西暦、イラン歴、それにイスラム暦の3つの日付が記載されている。予定を書くのもたいへんな気がする。
イスラム暦は、預言者ムハンマドがマッカからマディーナに移住した年を元年とする太陰暦である。ヒジュラ暦元年は西暦622年7月16日である。
イスラム暦はユダヤ暦と同じ太陰暦である。月の満ち欠けに合わせて、1か月が29日の小の月と30日の大の月という大小月をおおむね交互に繰り返す。1年はおおむね354暦日となるので、1年ごとに11日ほど太陽暦とずれることになる。
2012年はイラン歴では1391年となるが、イスラム暦では1433年となる。
サウジアラビアなどイスラム暦を公式の暦としている国では特許や著作権など法制度上の有効期限が西暦(グレゴリオ暦)で数えた場合よりも短くなる。特許の期間が15年間とした場合、西暦より有効期限が165日ほど短くなる。
イランはアラブ人イスラム教徒に征服された7世紀から11世紀ころまではイスラム暦を公式暦としていたが、アラブ人の支配が終わり、イラン人やトルコ人、モンゴル人が統治者になると、次第に古くからある太陽暦に戻っていく。イスラム暦は季節を反映せず、毎年日付が変わるので、農業や財務記録などには不便だからである。それからイラン人としての民族意識の高まりを反映したものと推察される。ただ、さすがに紀元はヒジュラの年とする
パーレビ朝時代にペルシャ帝国のキュロス大王即位(BC550年)を紀元とするイラン暦が称揚された。その後1979年、イスラム革命が起きたが、国民の生活に定着したイラン暦は使われ続けている。
イランにおける3つの暦について
http://www5a.biglobe.ne.jp/~goze/iran/calo/calo.html
記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0817 :120321〕