「アジア回帰」の米国と、台頭する中国が「競合/協調」し鬩ぎあう西太平洋。一昨年12月の安倍9条改憲政権の登場は、「領土ナショナリズム」を煽り立て、東アジアの緊張を高めている。沖縄はその最前線に立たされ、さらなる軍事要塞化が進められている。その沖縄から、日米による軍事植民地状況からの自立と解放を求める新たな「島ぐるみ闘争」が燃え広がり、米軍事戦略に深く規定された東アジアの残存冷戦構造-62年前の1952年4月28日を基点とする「サンフランシスコ・システム」(ジョン・ダワー)を揺るがしている。
昨年1月末の「建白書」提出行動に象徴される「オール沖縄」の異議申立を無視するかのように、安倍政権は、「琉球処分官のよう」と評された凄まじい恫喝と札束攻勢で自民党沖縄県連、仲井真県政を屈服させ、辺野古沿岸埋立申請を承認させた。これに対する反撃はすでに始まっている。県庁は2000名を超える人々で包囲され、仲井真
知事と政権に屈服した沖縄保守勢力は孤立しつつある。1月19日の名護市長選挙では、政権与党の露骨な圧力と介入を跳ね返し、「辺野古に基地は造らせない」とする 稲嶺市長が大差で再選された。
東アジア戦後史の中に沖縄の闘いを捉え返し、日本(ヤマト)から〈沖縄の自己決定権〉にどう向き合うのか。昨年は4.28東京シンポジウム、5.18沖縄シンポジウムが 開催され、議論が交わされた。
今回は、1972年「復帰」=再併合10年目に「琉球共和社会憲法C私(試)案」(1981年)を発表し、その後も「東アジア越境憲法」など〈沖縄から東アジアへ〉と活発に発信し続ける川満信一さんから新たな問題提起を受ける。そして、韓国・台湾・中国からの視点を踏まえて東アジア戦後史を振り返り、「サンフランシスコ・システム」を超えて東アジアへと連なる〈沖縄〉の〈未来〉を考える。特定秘密保護法、日本版NSC国家安全保障会議設置、集団的自衛権行使、原発再稼働へ、そして本格的に 「戦争のできる国家づくり」へと暴走する安倍9条改憲政権下の首都・東京にて。
4.27シンポジウムへ、多くのみなさんの参加を呼びかけます。
★コーディネーター 二木啓孝さん(ジャーナリスト、元『日刊ゲンダイ』編集部長)
★講演 沖縄から、東アジアへ
川満 信一さん(詩人・思想家、個人誌『カオスの貌』主宰))
★発言Ⅰ:韓国からの視点
イ・ヨンチェさん(恵泉女学園大学、日韓・日朝関係研究)
★発言Ⅱ:台湾・中国からの視点
丸川 哲史さん(明治大学、台湾・大陸中国・東アジア文学・歴史研究)
日 時 2014年4月27日(日) 13時半―17時
会 場 東京都・文京区民センター3A(℡03-3814-6731)
資料代 500円
主 催 「東アジアの中の沖縄/日本」実行委員会
(連絡 ㈱情況出版 ℡ 03-5213-3238)
[出席者のプロフィール]
◆二木 啓孝(ふたつき ひろたか)さん・・1949年、鹿児島県に生まれる。『週刊ポスト』『日刊ゲンダイ』記者を経て、現在はフリーランスのジャーナリスト。昨年の4.28東京シンポでもコーディネーターを務めていただいた。著書に『永田町の通信簿』(作品社1996年共著) 『殺人心理』(アスキー2000年共著)『手に取るように政治がわかる本』(かんき出版2002年)『宗男の言い分』(飛鳥新社2002年共著)などがある。
◆川満 信一(かわみつ しんいち)さん・・1932年、宮古島に生まれる。詩人。個人誌『カオスの貌』主宰。元沖縄タイムス記者。新川明、岡本恵徳(故人)と共に「反復帰論」を唱えた。1981年には「琉球共和社会憲法C私(試)案」を発表し、沖縄内外で反響を呼ぶ。2008年には済州島から琉球諸島、台湾に連なる「黒潮ロードの 非武装地帯憲法」=「越境憲法」を提起、日本国家から自立し東アジアへと開く沖縄の未来を構想し続ける。著書に『沖縄・根からの問い-共生への渇望』(泰流社1978 年)『沖縄・自立と共生の思想』(海風社1987年)『沖縄発 復帰運動40年』(世界書院2010年)などがある。
◆李 泳采(イ ヨンチェ)さん・・1971年、韓国全羅南道に生まれる。恵泉女学園大学教員。専門は日韓・日朝関係。日韓の市民団体の交流のコーディネーター、韓国語、韓国映画や映像を通して現代を語る市民講座の講師を務める。著書に『なるほど!これが韓国か』(朝日新聞社2006年共著)『韓流がつたえる現代韓国 『初恋』 からノ・ムヒョンの死まで』(梨の木舎2010年)『「IRIS」でわかる朝鮮半島の危機』(朝日新聞出版2010年)ほか。監訳に『朴正煕 動員された近代化―韓国、開発動員体制の二重性』(彩流社2013年)などがある。
◆丸川 哲史(まるかわ てつし)さん・・1963年、和歌山県に生まれる。明治大学教員。台湾・大陸中国・東アジアの文学・歴史研究。昨年の5.18沖縄シンポ「〈アジア〉を繋ぐ〈沖縄〉を創る」のパネラーの一人。著書に『台湾、ポストコロニアルの身体』(青土社 2000年)『思想課題としての現代中国 革命・帝国・党』(平凡社、2013年)『魯迅出門』インスクリプト2014年)ほか。翻訳に、温鉄軍『中国にとって、農業・農村問題とは何か?』(作品社2010年)、銭理群『毛沢東と中国』(青土社2013年共訳)、『台湾68年世代―戒厳令下の青春』(2014年作品社)などがある。
[2013年4.28東京-5.18那覇シンポジウム]
昨年、「サンフランシスコ講和条約60+1年」を共通テーマとするシンポジウムが、4月28日東京(写真左上。司会はジャーナリストの二木啓孝さん、パネラーは石垣島の大田静男さん、名護・ヘリ基地反対協の安次富浩さん、ピープルズプラン研の武藤一羊さん)と5月18日那覇(写真左下。司会は沖縄タイムスの長元朝浩さん、出席は早稲田大学院大学李鍾元さん、明治大学丸川哲史さん、大田静男さん、映像批評家の仲里効さん)で開催された。東京シンポには約200人、那覇シンポには約120人が参加し、「東アジアの中の沖縄/日本」について討論した(報告は情況誌2013年7・8月合併号掲載)。
今回のシンポジウムは、昨年の連続シンポジウムの問題意識を継承しつつ準備された。