新型コロナウイルス感染症による「死者」も、急カーブで増え始めた。死者数はコロナ医療の限界を示す重要な指標である。最新の集計(4月20日、米ジョンズ・ホプキンズ大学)によれば、日本では236人。人数は欧米ほど多くないが、急な増え方が気がかりだ。死因ごとの死者数は毎年、厚労省で統計処理されるが、季節性インフルエンザの年間集計では、近年は数値が数倍へ補正されている。受診しなかった死者数を見込んで推計する「超過死亡」という調整である。新型コロナでも後日、数倍程度へ修正される可能性がある。
診療所などの日常診療で出遭う「肺炎死」に対してPCR検査が実施されず、「コロナ死」が埋没しているケースもあり得る。検査判定がない場合、死亡診断書(死体検案書)の「死亡の原因」欄には「新型コロナウイルス」という文言は記載されないから、集計でコロナ死者としてカウントされることはない。米国では「ニューヨーク市は14日、ウイルス検査を受けずに死亡した3778人を新たに新型ウイルスの死者として算入」(4月15日、東京新聞)している。未検査だが関連死と判断され、死者数が大きく上方修正されたのだ。日本でも同様のことがないとは言い切れない。
開業医などの診療指針『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き』(2020年3月公開)に「患者に対して新型コロナウイルス感染症の有無を明らかにすることは、プライマリ・ケアの主たる役割ではありません」とある。地域の診療所などではコロナに深入りするな、とも読める。さいたま市の保健所長が10日、PCR検査を抑制するような発言をする「事件」もあった。感染症指定機関ではない地域の診療所などが、手続きの面倒なPCR検査を忌避した結果、未受診で潜在するコロナ患者を肺炎死に追いやる傾向はないだろうか。前記の「超過死亡」という統計操作も、未受診者の死亡を見込んだ政府による補正である。
これらを考えあわせれば、新型コロナの死者は実際はずっと多いはずである。以前から感染者については、発表される人数の数倍~10倍程度は存在するだろうなどと聞いていた。死者数、感染者数とも真実を反映していないとしたら、私たちがいま見せられている急カーブとは何だろうか。リアルを装ったドラマだろうか。
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〔opinion9674:20200423〕