(2021年6月13日)
急遽、NHKを被告として、文書開示請求訴訟を提起することになった。明日(6月14日)に東京地裁に提訴、その後記者会見の予定。
被告はNHKと、経営委員会委員長森下俊三の2名。原告は、各地でNHKのウォッチに取り組んでいる市民運動の活動家105名。心強い限り。
訴訟で開示を求める文書は、次の2種類。
(1) 「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会長に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
(2) 「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が提出した答申を受けて、NHK経営委員会が行った当該議事録等の開示を巡る議論の内容がわかる一切の記録・資料
実は、この(1)に関しては、5件の先行開示例がある。が、訴訟は初めて。多分、NHKに対する情報公開請求訴訟として初めてのことなのだろう。
5件の先行開示請求例が、いずれも経営委員会議事録の開示を求めて拒否され、NHKの第三者機関である「情報公開審議委員会」が5件のどのケースでも、「開示せよ」と答申している。それでも、開示しないのが、NHK流のようだが、もしかすると森下俊三流なのかも知れない。
105名は、4月7日NHKに経営委員会議事録などの開示請求の手続をしたが、いまだに応答がない。期限を延期してくれというばかり。時間を無駄にせず、提訴した方がよいという判断になった。
請求の趣旨は、次のとおり。
1 被告日本放送協会は原告らに対し、別紙開示請求文書目録記載の各文書を、いずれも正確に複写して交付する方法で開示せよ
2 被告らは連帯し各原告に対し各金2万円、ならびにこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え
本件訴えの概要は下記のとおり。
1 本件は、原告らと被告NHK間の各受信契約に基づいて、被告NHKが保有する文書の開示を請求する訴えである。
また、原告らが有する各文書の開示請求権の行使を拒否した被告らの責任を問い、原告らに生じた開示拒否に伴う損害の賠償を請求する訴えでもある。
2 ことの発端は、NHK番組「クローズアップ現代+(プラス)」が、「日本郵政職員のかんぽ保険不正販売問題」を放映し、元総務事務次官の経歴をもつ日本郵政上級副社長鈴木康雄が郵政側の中心にあって、この番組に抗議するとともに、続編の放映を妨害したことにある。
NHK経営委員会は鈴木康雄の意向に従って、当時の上田良一NHK会長を厳重注意とした。経営委員会でその中心的役割を果たしたのが被告森下俊三(当時、委員長代行)である。
3 経営委員会がした、NHK会長に対する厳重注意を異様なものとして、主としてマスコミ各社がNHKに対して、関係する経営委員会議事録等の文書開示手続を試みたがNHKはこれに応じない。諮問を受けたNHK常設第三者機関も複数回にわたって開示相当と答申しているが、NHKはいまだに開示を拒否したままである。
4 以上の経過を踏まえて、原告らは被告NHKに対して、下記2群の文書(以下、「本件各文書」)の開示を求めた。
5 しかし、被告NHKはこれに応じようとしないので、原告らは受信契約に基づく視聴者の権利を行使して本件各文書の開示を請求するとともに、併せて両被告に対して不開示による不法行為と債務不履行の損害賠償を請求する。
さまざまな場で誠実によい仕事をしている人たちがいる。ところが、そのよい仕事を妨害し、むやみに威張って理不尽を押し通そうというよからぬ人がいる。法は、こんな理不尽を許さない…ようにできているはずなのだ。
明日提訴の訴訟が、そんな役割を果たしてくれるといいな。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.6.13より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17040
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion11011:210614〕