「グローバル市民社会」による「人道的軍縮」キャンペーンに内在してきた問
題に向き合う貴重な機会かと思います。
ご案内が遅くなりましたが、事前登録のうえでぜひご参加ください。
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<公開オンライン・セミナー>
パレスチナ・イスラエルと「人道的軍縮」
~キラーロボット反対キャンペーンで起きている事件を踏まえて~
[日時] 2024年1月21日(日)午後2時~午後4時(午後1時40分Zoom開場)
[登壇者]
報告 榎本珠良 明治学院大学国際学部准教授
討論 杉原浩司 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表
[形式] Zoomでのオンライン開催
[言語] 日本語 [参加費] 無料
[参加方法] 事前登録制です。2024年1月20日(土)正午までに、以下の登録フォ
ームからお申し込みください。1月20日(土)夜までに、ご登録いただいたメー
ルアドレスにZoomのIDとパスワードをお送りします。
【参加登録URL】 https://bit.ly/DecolonizeDisarmament
※いただいた個人情報は、本セミナーの主催団体のひとつである「武器と市民社
会」研究会により厳密に管理され、この研究会からの案内以外の目的には使用さ
れません。
※取材をご希望のメディア関係者のかたは、開催1週間前の1月14日(日)までに、
「武器と市民社会」研究会共同代表( http://bit.ly/AACSREP )にご連絡ください。
[主催] 「武器と市民社会」研究会
[共催] 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、認定非営利活動法人テラ・ルネッ
サンス、ノンバイオレンス・インターナショナル東南アジア、JSPS科研費21K13250
「人道的軍備管理」における差別的思考の分析と超克
[後援] 明治大学国際武器移転史研究所、明治学院大学国際平和研究所(PRIME)
[お問い合わせ先] 「武器と市民社会」研究会共同代表(
http://bit.ly/AACSREP )
[詳細情報] https://bit.ly/20240121
[趣旨] このセミナーでは、1990年代以降に「グローバル市民社会」を称し「人
道的軍縮」等を掲げてきたNGOキャンペーンにみられる欧米中心主義・人種主義
的な構造と、そこでの日本の非政府アクターの位置付けについて、具体的事例を
挙げつつ示します。そして、そうした構造をもつ「人道的軍縮」キャンペーンに
よる言説や実践が、現在ロシア・ウクライナやパレスチナ・イスラエルで生じて
いる惨禍を助長する方向に作用してきた側面を指摘します。そのうえで、2023年
10月以降に「キラーロボット反対キャンペーン」で起きている直近の事件を踏ま
えて、今後の展望を考えます。
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[背景情報]
国際人道法の順守やAI倫理を唱えるNGOなどによる国際キャンペーン「キラー
ロボット反対キャンペーン」(Campaign to Stop Killer Robots)事務局職員
のOusman Noor氏は、2023年10月14日に、パレスチナの人びとに対する占領とア
パルトヘイトに終止符を打つことを求める個人的意見をNoor氏個人のXアカウン
トに投稿し(https://twitter.com/ousmannoor/status/1713207764816691208)、
WhatsAppで主に友人宛てに同様の投稿を行いました。その直後の2023年10月27日、
Noor氏は同キャンペーンとの契約終了(解雇)を通知されました。
Noor氏に渡された解雇通知には、Noor氏との契約は2024年1月末までと記され
ていました。しかし、2023年10月27日時点でNoor氏には業務用メールアドレスに
も彼自身の個人情報が含まれる業務用データにもアクセス権限が停止されました。
さらに10月30日には、「キラーロボット反対キャンペーン」事務局長が、Noor氏
について「既に事務局を退職した」とのメールを関係各方面に発信しました。ま
た、解雇通知には、解雇の理由はNoor氏によるパレスチナに関連するコミュニケ
ーションである旨が記されていました。しかし、同キャンペーン事務局長や運営
委員会は、Noor氏の解雇理由は彼のパレスチナに関連する見解ではなく別の問題
であるとの情報を関係各方面および公に発信しました。これに対して公に反論す
る必要性を認識したNoor氏は、ウェブサイトを立ち上げました(
https://www.ousmannoor.com/ )。
なお、日本の「難民を助ける会」(AAR)は同キャンペーンの運営委員会9団体
の1つであり、ヒューマンライツ・ナウなどの他の日本のNGOも同キャンペーンに
加盟しています。
Noor氏に解雇が通知された2023年10月27日の第10回国際連合緊急特別総会では、
パレスチナとイスラエルの状況を踏まえ、敵対行為の停止につながる即時かつ持
続的な人道的休戦や国際人道法・人権法等の遵守、ガザ地区への人道援助の確保
などを盛り込んだ決議A/ES-10/L.25が賛成120、反対14、棄権45で採択されました
( https://www.un.org/en/ga/sessions/emergency10th.shtml 、日本は棄権)。
そして、この決議に反対票を投じたオーストリアは、「キラーロボット反対キャ
ンペーン」にとって重要な協働国であり資金源の一つでした。
オーストリア政府の意向が同キャンペーンの意思決定に及ぼした影響力につい
ては追加の検証を要するかもしれませんが、欧米中心主義・人種主義的な構造が
根深く残る軍備管理・軍縮分野のNGO業界関係者にとって(とりわけ非欧米ないし
非白人の関係者にとって)、Noor氏が直面した状況は驚くべきことではありませ
んでした。2013年に設立された「キラーロボット反対キャンペーン」の事務局も、
長らく欧米諸国出身の白人職員で占められていました。2020年5月末以降にBlack
Lives Matter運動が盛り上がり、同キャンペーンが事務局職員全員白人の状況を
「改善」しようと試みるなかで同年秋に採用した人物こそが、イギリス出身で弁
護士として経験を積んでいた非白人のNoor氏でした。
そして、2023年10月以降にNoor氏が直面している状況は、この分野のNGOキャン
ペーンにおいて非欧米ないし非白人の関係者が経験してきた(しかし公にならな
かった)状況――日常的な搾取や差別、暗黙のあるいは何らかの理由をつけた排
除――が「また起きている」に過ぎない側面もあります。
今回の件が公になったのは、Noor氏自身が公に反論する必要性を認識し、かつ
そのための法的知識や各種の専門家ネットワークを持っていたためとも言えます。
このセミナーでは、1990年代以降の「人道的軍縮」キャンペーンにみられる構
造的問題を明らかにします。そして、そうしたキャンペーンによる言説や実践が、
現在ロシア・ウクライナやパレスチナ・イスラエルで生じている惨禍を助長する
方向に作用してきた側面を指摘します。
そのうえで、「キラーロボット反対キャンペーン」で起きている直近の事件を
踏まえて、今後の展望を考えます。
[登壇者プロフィール]
◆榎本 珠良(えのもと たまら)
明治学院大学国際学部准教授。国際NGOで12年間「人道的軍縮」キャンペーンに
関与後、明治大学国際武器移転史研究所勤務を経て2023年より現職。認定非営利
活動法人テラ・ルネッサンスの政策アドバイザーも兼務。主著に『武器貿易条約
:人間・国家主権・武器移転規制』(晃洋書房)、『禁忌の兵器:パーリア・ウ
ェポンの系譜学』(日本経済評論社)など。
◆杉原浩司(すぎはら こうじ)
(武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表)。1965年生まれ。STOP大軍拡アクショ
ン、平和構想提言会議などに参加。共著に『武器輸出大国ニッポンでいいのか』
(あけび書房)、『亡国の武器輸出~防衛装備移転三原則は何をもたらすか』
(合同出版)。『世界』2023年7月号に「軍需産業を強化する日本~『死の商人国
家』を選ぶのか」を寄稿。