2024年度ちきゅう座議案書
第一号議案 2023年度事業報告及び2024年度運動方針案
本年度事業報告
自浄能力などとっくになくした現在の日本政府の腐敗はついに極点にまで達したかに思えます。その結果、現政権の崩壊が、即交代を意味するならまだしも、メディア報道では「日本国がなくならないのが不思議」という海外からの声すら聞こえてくる始末です。
大きな問題が持ち上がるごとによく指摘されるのは、政・官・業・学・メディアの五角形の癒着による腐敗・堕落ということです。そこに労働界(「連合」という組織)も加えてもよいのではと思っています。
今や、学界もメディアも労組も、権力者の暴走にブレーキをかけ、平和憲法に則って軌道是正を図っていくどころか、一緒になって憲法をないがしろにし、大多数の国民の反対意見を無視する政策に加担しています(そのことは、諸種の統計数値に現れているし、第一、岸田政権への支持率は低迷の一途をたどり、政権の危機ラインと言われる20%台をも割り込んで下がり続けています)。戦後の保守政権は、自国の法を捻じ曲げ、民衆の権利を無視しながら、日米安保条約に最大限の重しをおいて、ひたすらアメリカ政府に迎合(というよりも隷属)しながら、自主性や自治という国家の最低限の矜持をも失っています。まさに「自主国家の崩壊」というのが今日の日本政府の有様ではないかと思います。
アメリカ国内でも、日本にこれだけ多くの米軍基地があること、沖縄基地問題や欠陥品のオスプレイの飛行許可や不要な中古武器の大量買い込み、など米国の強引な押し付けを国民の反対を押し切って甘受しているという「事実」を授業で教えられて、あきれかえるとともに、「なぜ日本人は怒らないのだ」と訝り憤る学生たちが大勢いたという話を大矢英代(はなよ)・カリフォルニア州立大学准教授が「東京新聞」で紹介していました。
どこにその「根」があるのだろうか、何らかの共同利益(利権)が絡んでいるのではないかと疑います。デービッド・ハーヴェイ流に言えば、資本の「利潤追求」に絡んでいるのではないだろうか。その今日的な政策が、「新自由主義」と呼ばれるものではないかと思われます。
大量生産・大量消費社会が、格差社会や環境破壊、新たな階級支配に結び付くとともに、この共同利益の絆が、支配権力の維持のための相互の連携、あるいは地域紛争への介入から本格戦争への拡大、また破壊と混乱に乗じた「利潤追求」へと繋がっている(ウクライナでの「復興ビジネス」がその実例です)。
再び国内問題に目を向けるなら、自民党の裏金作り、利権漁り(原発問題、防衛費の大幅増大、オリンピックなどに絡むもの)、憲法の平和原則と武器輸出三原則の「無効化」、議会制民主主義を無視した「閣議決定」の定例化、そして、マイナンバーカードの押し付けによる国民総監視体制の法制化、教育行政への政治介入、労働者の切り崩し(大手企業では空前の大盤振る舞い=春闘賃上げ率5.28%の一方で、中小との格差は3倍以上)、非正規労働者の大量解雇、原発事故犠牲者などへの補償金の打ち切り(棄民政策)、低所得者の一層の貧困化(生活保護申請5%増)、インボイス制度導入による国民いじめ、引き続く物価高、…。
大手メディアはどうか。岸田政権が2022年12月、外交・防衛政策の基本方針である「国家安全保障戦略」など、安保関連三文書を閣議決定した際に、政府が免罪符的に持ったのが、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」ですが、ここには防衛省関係者と一緒に、メディア側からは日本経済新聞社顧問や読売新聞グループ本社社長、元朝日新聞社主筆(船橋洋一)が参加しました。しかも、船橋は、「一つは、国を守るのは自らの責任であるという国家としての当事者意識…(中略)もう一つは、国を守るのは国民全体の仕事だという国民としての当事者意識…(中略)有事の際の対応にあたっての国民の関与と参画の在り方、その際の国民の権利と義務の在り方に関する新たな社会契約を結ぶ時に来ている」などの内容も加えました。…実質的には最初から「結論ありき」だった政府の方針である敵基地攻撃能力の保有などにお墨付きを与え、政府のお先棒を担ぐ役割を担った」(松本一弥より引用)わけです。朝日新聞その他、大手全国紙業界の今日を語る象徴的な出来事です。「忖度」どころか「協力関係」だと思います。
NHKについては言うまでもないことです。
予算確保(受信料制度の法制化など)と引き換えに、放送内容も自主性を欠き、政府のスポークスマン=「大本営発表」路線に復帰するつもりなのでしょうか。
ちきゅう座のような小さなメディアの力は細やかなもので、まださしたる影響力も持ち得ていないと思います。しかし、どんなに微力であろうとも、大手メディアができないこと、政治(特に政権)に迎合せず、どこまでも公共空間らしい討論の場を保証してゆくこと、ここにわれわれの存在意義と使命をかけていく必要があるだろうと考えます。以下、年間を通しての編集問題と事務局関連の問題について振り返りながら総括提案をしてみたいと思います。
1.編集問題について
昨年の総括提案の中で、ちきゅう座の編集方針は、基本的には「公共空間」としての討論の場の提供ということです。そのため、あえてどちらかの勢力や意見に与するというやり方はとっていません。それでは自己主張がなさすぎるという批判もありますが、編集部や運営委員会をはじめとして、メンバー個々人の個人的な意見(自己主張)を尊重しながらも、「言論の自由の核心は権力を批判する自由だ」という基本的信念は堅持するということを述べていますが、今年もこの考え方を変わらず踏襲する所存です。
毎年、繰り返されてきた要望として、「若者と女性の投稿を増やすにはどうすべきか」という課題があります。この点に関しては、会員たちがさまざまに関わっている研究会などに、まだほんの少数ではありますが、若い現役の学生たちが参加してくれるようになりました。「千丈の堤も蟻穴より」の諺もあります。何とか若者への浸透を心掛けたいものです。
併せて考えたいのは、従来「敷居が高すぎる」と批判されていたことに関してです。「大衆受けを狙うな。しっかりした筋の通った論文が大事だ」というご意見もいただいています。読者の関心を引き出すには、論文だけに頼って訴えることには限度があります。多様な活動と一体となった社会構造の変革が望ましく、その礎となりたいと願っています。
今日のようなグローバル化の時代にあっては、海外情報を積極的に取り入れることは大きな意味を持つと思います。この一年は、会員の野上俊明さんによるミャンマーの民主化闘争の詳しい情報、またGlobai Head Linesの復活、岩田昌征さんのポーランドなど現地情報の翻訳解説・紹介、また従来から引き継いで、ドイツ在住のグローガー理恵さんとT.K生さん、ブダペストからの盛田常夫さん、西サハラ情報の平田伊都子さん、東チモールの青山森人さん、また中国、台湾関連の岡田允さん、韓国の小原紘さんなどがありました。
アメリカやロシア、アフリカ、アラブなど、まだ主要な地域が抜け落ちていますが、何とかカバーできるようにしたいと考えています。
2.画面改造の件
ちきゅう座画面の改造案の具体化が、とりあえずの試案として動き始めました。一番喫緊な要事としては「検索」機能の充実ということだと思います。少なくとも個人名で検索した際にその人の投稿論文がすべてリストアップされる必要があります。また、大きなテーマ(例えば、「原発」や「ウクライナ」や「ガザ問題」等々)ごとの「索引」が充実すれば、読者にとっては便利ではないだろうか、それが「アーカイヴ」の役割を果たすことになるのではないのか。また、画面を拡大して、写真などをはめ込み、よりスマートにする、さらに配置を変えてより見やすい、魅力的な画面を造ることができないだろうか。読者の反応を調べるとともに、相互交流(公共空間)を可能にするにはどうすべきか、などを試行錯誤しながら検討いたしました。
こういう大問題をどう解決すべきかで大いに悩んだわけですが、とりあえず、すべてを一気に解消することは無理だとしても、最初に挙げた「個人検索」をよりしっかりしたものにするという課題ぐらいは果たし、それ以外のものは今後時間をかけて順番に解消していこうではないか、ということになりました。
担当者が作業手順に不慣れなため、新しい改造画面への移行がなかなかスムーズにいかず、当初予定から遅れていますため、この総会に向けて、「新しいちきゅう座の画面」をお見せすることができません。もう少しお時間をいただきたいと存じます。
- 事務局体制の再点検と整理
諸般の事情から、なかなか事務局機能が円滑に進まないことがあり、皆様方に多大なご迷惑をおかけした点は重々お詫び申し上げます。事務局長の(本業)仕事上の忙しさなどもあったため、石川さんと村尾さんに全面的にフォローしていただきました。そのために、会員名簿及び会員へのメーリングリストが完成し、総会の案内、議案書などの必要書類はメールでお送りすることだできるようになりました。もちろん、皆様方から事務局あてのご意見なども、従来以上にスムーズかつスピードアップいたします。大いにご活用していただきたいと存じます。
今期の事務局の最大の成果は、三度のシンポジウム(現代史研究会)―最初は、岩田昌征さんのポーランド報告、二度目は、西谷修、中野真紀子さんのイスラエルのガザ侵攻問題、三度目は、青木美希さん、鵜沼久江さんの原発事故問題、を持ったことです。こちら側の準備不足もあり、必ずしも多くの参加者を集めることはできませんでしたが、こういうシンポを継続企画したいと考えています。
次年度(2024年度)の運動方針案
腐敗堕落しきった現在の日本国の政治体制に、愛想を尽かせ、「もう何を言っても無駄だ」と感じている方々が大勢います。また、政権交代を、とは願いながらも、果たして今の野党でどこまでやれるだろうか、所詮は「同じ穴の狢」、変わり映えしないのではないか、こうも思いたくなります。
しかし、それは間違っているのではないかと思います。少なくとも「だらしない」野党勢力とはいえ、大勢の庶民(国民)の声=世論は無視できないわけですし、「選挙」という民主主義的な形式が残っている限りは、そこにわれわれの声を大いにぶつけていく必要があるのではないかと思います。民衆(国民)の多くが革新化すれば、野党勢力の人々も「革新化」せざるを得ないだろうと思います。社会変革、今の世の中ではだめだという声を大きなものにし、そういう勢力を結集させる必要があるだろうと考えています。
共有できる内容の討論、シンポジウムを独自に企画するとともに、他の運動体との連携も十分考慮し、また、他のメディアとのリンクも本格的に考えて取り組む必要があるように思います。
投稿論文の選別は、もちろん原則的にはあり得ませんが、読者の興味の所在を知る上では、こまめにlikeの内容のチェックが出来るようにして、読者と編集部との間での更なる緊密な対話ができるような体制を作りたいと考えています。
幸いなことに、次期には編集スタッフが二名(繁竹昇氏と岩附宏行氏)増えることになりました。大変力強いことと喜んでいます。
掲載記事数に関しては、毎月の事情などで多少の変動は当然見られますが、これはこのサイト全体の底上げ(影響力のある良質な論文やニュースの掲載)を図る中で、自づから掲載数は増加するものと考えています。
運営委員会では、毎月500本以上の掲載を目標にしたいという「壮大な」計画の議論もしています。皆様方のご協力を仰ぎたいと願っています。
本年度の運営委員には次の方々が選出されました。三役以外の役割は運営委員会で協議のうえ、決定します。
委員長:合澤清(再)
運営委員:石川愛子(事務局長―新)、柏木勉(編集委員長―再)、安岡正治(再)、髭郁彦(再)、府川頼二(再)、村尾知恵子(再)、安岡正義(再)、野上俊明(再)、土田修(再)、村尾望(再)、片桐幸雄(再)、生方卓(再)、繁竹昇(新)、岩附宏行(新)
監査:松井靖久(再)、松田健二(新)
なお、本年度会費(\5000)は、総会当日の受付にてお支払いいただけますが、振り込みの場合は下記の郵便振替口座まで納入いただけると幸いです。
加入者名 ちきゅう座 振替番号 00120−2−762760