リーマンショツクから5年が経つ。
あの時私は大恐慌の再来だと思った。もうみんな忘れている。最近、米日刊紙『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』(『ニューヨーク・タイムズ』国際版、2013年8月31日~9月1日版)に、フロイド・ノリスという記者が、リーマンショック以降の世界の銀行株価推移について書いた。ショック以前の 2008年8月29日にメガバンク株を買ったとするとその投資家はその後の最安値でいくら損をしたのか。13年8月29日の現在値は、買値に比べてどの水準にあるか。それを一覧表にして説明している。
結論を先にいう。対象25メガバンク中、リーマン以前より株価が高い銀行は5行しかない。総じていえば投資成果は極めて芳しくないのである。
記事を半澤流に纏めると次の通りである。(一部特殊記号記載できません)
①現在値(13年8月29日)をリーマン倒産前の株価と比較すると
・プラスになっている銘柄 5 Wells Fargo, JPMorgan, HSBC, 中国建設銀行、中国銀行
・0~マイナス19%までの銘柄 5 Goldman Sachs, Barclays, BNPPariba, BBVA
・マイナス20~49%までの銘柄 10 Credit Suisse, UBS, Credit Agricole, Societe Generale, Banco Santander, Intesa Sanpaolo, Deutsche Bank, ING, みずほ銀行、東京三菱UFJ銀行
・マイナス50%以上の銘柄 5 Citigroup, Bank of America, Royal Bank of Scotland, HBOS, UniCredit
②株価最安値時の水準では
リーマン倒産は08年9月だが世界株価は09年3月に最安値を付けた。銀行株もほぼ同様であった。その時点で投資成果最悪の銘柄は、マイナス96%(Royal Bank of Scotland),マイナス95%(Citigroup)であった。100ドルが半年で4ドルになった。邦銀は「みずほ」がマイナス76%、「三菱」がマイナス59%であった。
③「ブルームバーグ世界銀行株価指数」と比較すると
この指数は世界主要銀行140銘柄で構成されている。指数の最安時の下落率は60%、現在値は5年前比マイナス11%まで回復している。上記メガバンクよりも指数のダメージが少なかった。
金融資本がリードする世界、新自由主義が跋
扈する体制、堅固なウォール街の鉄壁という。私もそんな言い方をしてきた。しかしこの数字を見る限り、金融資本は株価―即ち時価総額―の上では完全には回復していない。もちろんリーマン以前がバブルと考えれば現在株価が健康という見方も成り立つ。株価が適正かどうかは誰にも分からないから厄介なのである。世界の中銀と政府はなかなか「出口戦略」に踏み切れないでいる。カネをタブつかせないと金融のガラスの城がまた崩れ落ちるかも知れない。それを密かに警戒しているのであろう。独占資本は強者である。しかし強者常勝とは限らないのだ。
初出:「リベラル21」2013.9.3より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
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