2014年衆院選無効請求訴訟:原告適格を制限する過去判例と被告回答書に反駁する準備書面(2)を提出

選挙無効請求訴訟の原告適格を制限する過去判例と被告回答書に反駁する準備書面(2)を2015年3月6日、東京高裁に提出してきました。

準備書面(2):
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Brief2.pdf

事件番号:平成27年(行ケ)第5号
訴状:第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=538
準備書面(1):小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強める
http://kaze.fm/wordpress/?p=539
甲第1号証Excelブック(選挙分析):同上
【第一回口頭弁論】
日時:3月13日午後3時半から
場所:東京高裁8階の812号法廷

準備書面(2)の要旨

第1 選挙人は所属選挙区以外の選挙区についても選挙無効の提訴ができる

最高裁判所昭和39年2月26日大法廷判決・民集18巻2号353頁は、選挙人は所属選挙区についてしか選挙無効の提訴できないとした原審仙台高裁判決を支持し、それが今日に至るまで踏襲されています。

最高裁判決・民集18巻2号353頁
https://drive.google.com/file/d/0B480nG80A_kJbVhqUGlERjdvYzA/view?usp=sharing

原告相棒の原さんが明治の選挙法に遡り、原告適格制限を導く公職選挙法第204条の解釈がでたらめであることを主張し、私も補足を加えました。

両判決は、選挙人は所属選挙区についてしか選挙無効の提訴ができないとの立証命題そのものを根拠なく前提にし、選挙訴訟を規定した公選法第204条の「選挙人又は公職の候補者」という表現は、裁判で無効としたい選挙区とは別の選挙区に居住している公職の候補者を除外しないという配慮のための表現である、という趣旨に解釈しています。選挙人の中に公職の候補者が含まれるという包含関係があるのだから、わざわざ候補者を挙げているのには理由がある、というわけです。

ところが、明治の選挙法では先に(落選)候補者に出訴権限を認め、わざわざ後に出訴権限を選挙人にも拡大したので、出訴対象の選挙区と出訴権者の選挙区が異なるケースが最初から想定されていました。選挙人名簿の抄本の閲覧について規定した公選法第28条にも「選挙人又は公職の候補者」という表現がありますが、第204条と同じく、権利・義務主体を明確化するためにそう書いているに過ぎません。

公選法第10条では、選挙の種類によって立候補権者の所属選挙区条件が規定されていたり規定されていなかったりしています。

第204条で出訴権者の所属選挙区条件が規定されていないのは、文字通り所属選挙区条件がないことを意味しているのです。

第2 答弁書の体を成していない答弁書に反駁する

原告は「比例区の定数枠から無所属候補を締め出す小選挙区比例代表並立制は制限選挙規定であり違憲である」と主張しているのに、被告は「拘束名簿式比例代表制が憲法の規定に違反しない」と答弁し、2013年参院選無効請求訴訟と同様に争点をずらしています。何の答弁にもなっていない。

原告主張に対する認否・憲法判断をことごとく避ける被告の常套文句は、根拠なき結論先述の「(国会の)裁量の範囲に属することは明らかである。したがって、…の規定は何ら憲法に違反するものではない」です。

既に最高裁は違憲の評価枠組みたる「国会裁量権の合理性検討」(太田の言い方)を課しています。これは憲法と立法目的(従って立法効果)に照らして違憲選挙規定の合理性なるものを評価すべきというものです。

が、被告は憲法と立法目的・効果に照らして選挙規定を評価するということを素っ飛ばしているのです。

例えば、野宿者などから実質的に選挙権を剥奪して違憲であるという原告主張について、投票所入場券(整理投票券)や身分証明書などの提示がなくとも投票ができる実態は、住所がなくとも投票できるという原告主張を支持するものですが、選挙管理委員会たる被告は「その余は、原告ら独自の考えを述べるものであるため、認否の要を認めない」などと、この実態に対する認否を拒否しています。

答弁書という有印文書で自ら公務員不適格を証明しているわけで、財政法第9条2項「国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的に、これを運用しなければならない」に違背して重大です。