2018.ドイツ逗留日記(3)

「異常気象」の常態化
毎年言われ続けているのが「今年は異常気象だ」という言葉である。しかし、毎年言われるということは、毎年違った気象状況に遭遇しているという以上の意味をもたなくなる。それは決して特に「異常」ということではなく、平穏無事とわれわれが考えて来た気象条件、気象環境が壊れて来ているという意味なのではないだろうか。
気象の変動については、専門家ならぬ私ごときには分かりかねる。ただ、素人考えとして、近頃よく地震学会や土木学会など専門家から警告が出されている「南海トラフ」「喜界島地震」のような大地震、あるいは「鬼界カルデラ」の大爆発による九州の壊滅など、「大地動乱の時代の到来」といった天変地異の予測と、今日のこの「気象条件、気象環境」が破壊されているのではないかという恐れとがどこかでつながっている可能性があるとすれば、これは誠に一大事というべきだろう。
周知の土木学会発表によれば、「南海トラフ」だけで、被害推計は、20年間にわたり1410兆円にも上るという。しかも、これには原発事故は想定されていないのである。
日本の経済は完全に破綻し、もちろんそれに伴って政治も、また日本への世界からの信頼も完全に地に落ちることになろう。
今までアジアの他国民を見下し、欧米の「白人」と同列な民族(国民)(このこと自体が今や時代錯誤で、「白人至上主義」に棹さすものでしかないのであるが)のようにふるまってきた哀れな日本人を救って、受け入れてくれる場所もないだろうし、一番頼りにしているアメリカは、真っ先に「無関係だ」(アメリカ・ファースト)と宣言しそうである。
今回の台風7号に関連する記録的な集中豪雨と大洪水、山崩れなどによって、死者の数157名、行方不明者56名(7月10日の報道)という大災害が起きている。
安倍首相ご一行は、それでも無意味な外遊に出掛けたいと色々画策していたようであるが、さすがに「あまりにも無責任すぎる」という批判が出て(つまり、支持率の低下が恐ろしいという理由)でストップがかかったようだ。
ところで、以前から一部の識者から指摘され、批判されてきたことであるが、このような大災害が予測され、現に今回のような大量の犠牲者を出す事態が起きているにもかかわらず、財政・予算不足などを理由にその根本対策は後回しにされ続けている。
しかしその一方で、オスプレイなどの兵器装置をアメリカから購入したり、沖縄をはじめとする米駐留軍へ毎年支払われている、いわゆる「思いやり予算」(約2000億円と言われる)など、日本の今年の軍事予算は5兆1911億円という巨額に達している。
更に、2020年の「東京オリンピック」の関係予算は3兆円に上るといわれる(当初は7000億円だった)。
元文科省次官だった前川喜平氏がどこかで語っていたが、「その一部でも削れば…」というのが庶民の偽らざる切実な実感ではないだろうか。
はっきり言って、オリンピックなど東京でしなくても一向に困らない。米軍基地やオスプレイなど必要ないし、「対北朝鮮防衛」なども既に無用の長物になりそうである。
日米安保をいうのなら、「日米地位協定」(治外法権)などの不平等条約を破棄した上、日米対等な立場で、予測される大災害時に両国でどう緊密に対応するのかの対策を練る方がはるかに重要である。その時になって、トランプ流の「排外主義」(移民制限)を唱えられてもどうにもならないのである。
ドイツで、西日本を中心にした大雨による被害の報に接するたびに、いたたまれない思いと怒りにかられてしまう。
日本の大雨に対して、こちらはこの数カ月カラカラ天気が続いている。われわれが到着した6月28日以来今日まで、少なくともニーダーザクセン州では一滴の雨も降っていない。おそらく農家は水不足で大変だろうと思う。確か去年は、連日ぐずついた雨模様の天気が続き、やはり農家は大変だったように記憶している。これらは共に「異常気象」である。
気象条件には、地球規模、宇宙規模の要因が絡んでいるのでこれをどうこうするのは困難である。しかし、せめて地域の環境対策は出来うる範囲で万全であってほしいし、そうしなければならないと思う。そして予算面では当然、不要なものはカットし、生活関連の社会資本に回すことが何よりも先決である。
(ここまで書いた10日の夜になって、どうやらまとまった雨が降り始め、気温は一気に下がってきた。ゲッティンゲンの郊外で農業をやっているドイツ人の友人もいるが、今年はまだ会っていない)

サッカーの世界大会、トランプの米国とEU
毎週水曜日の定例の集まりの予定が、サッカーの準決勝をどうしても見たいとの彼らの強い意志で、一日延びた。僕らにはそれほどの執着はなかったのだが、そこはやはりヨーロッパ人だけある。ドイツでもサッカー(ドイツ語では「フスバル」)は国技である。
「ドイツのチームは残念だったね」と一応ねぎらったのだが、彼らに言わせると、「ドイツチームはもう年寄りばかりで、今回はダメだったんだ」という。日本のチームと同じで新陳代謝は必要だ。
日本ではいつまでも古い政党が権力にしがみついていて、ろくなことをやっていない。こちらは是非とも政党の新陳代謝が必要であろう。
ご存じのように、準決勝では、イングランド対クロアチアが戦い、接戦の末クロアチアが勝った。実は彼ら二人共に英国嫌い(米国はもっと嫌いだとのこと)で、クロアチアの勝利を喜んでいた。もう一試合は、フランス対ベルギー戦で、こちらは若手中心のフランスが勝利した。「やはりスタミナの問題だね」という評価であった。
最終のファイナル戦の予想はどうだ?と聞いたら、二人共に「おそらくフランスが勝つだろう」という意見だった。果たして結果は?
話が一転して、トランプのアメリカの話題になった。
米・中貿易戦争とEU及びブリックス、また日本の政治の問題などである。
前に紹介したように、彼らの専門は物理学方面である。しかし、新聞にはよく目を通しているらしく、日本の状況にも詳しい。
「トランプに対する日本国内での評価はどうか」と聞かれたので、「日本政府は全くの追随路線だが、国内の世論、特にインテリ層には反対者が多いように思う」と答えた。
「新聞などのメディアはどうか、『朝日新聞』やNHKはどういう報道なのか」
-「NHKはすっかり政府寄りの報道しかしないが、『朝日』や『毎日』などは頑張っていて、トランプや日本政府に対する批判をやっている」
「ちきゅう座はどうなのか?ちゃんと批判をしてるのだろ」といたずらっぽく尋ねられた。
「もちろんだ。今、日本で一番しっかりしているのはミニコミだと思うよ」
それから話は、米・中貿易戦争や、それのEUへの影響問題に移った。
トランプのアメリカの評価は、予想通りひどい。どっちつかずで右往左往している英国に対しても、EU離脱後の将来展望は見えそうもないと酷評。
ドイツはいち早く中国との間で、自動車生産を中心にした貿易関係を結んでいるので、トランプの思い通りにはならないだろうと言う。
米・中貿易戦争は、本当に起こるかどうか、という問題に対しては、今現在では、「中国はアメリカの銀行だから、なかなか本気で戦争はできないのではないのか」という意見に落ち着いた。
ニュースによれば、NATOの会議に出席したトランプが、一方的に「NATOはもっと金を出すべきだ」とわめき散らしたとあった。
ヨーロッパで、トランプ流のハッタリがどこまで通じるだろうか?既にメッキのはげ落ちたアメリカ外交は、軽蔑のまなざしで見かえされるのではないだろうか。
(2018.7.13記)

添付の写真は、毎朝の散歩の途中で写したスナップです。

家の前の道

お城の遠景

お城の一角の飲み屋

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

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