2023年度ちきゅう座の総会が5月21日に行われました。議案書と新規運営委員

*総会報告は後日行います。

2023年度ちきゅう座議案書

第一号議案 2022年度事業報告及び2023年度運動方針案

本年度事業報告

ここ三年ほどは「新型コロナ流行」に振り回されてきましたが、どうやらそれにも沈静化の兆しが見えてきました。しかしこの三年間で、われわれを取り巻く状況は大きく様変わりしているように思えます。「コロナ禍対策」のためという名目で実施された様々な制約、またウクライナにおける戦乱に主に起因するといわれる諸物価の異常な高騰、それに伴う格差拡大、さらにそれらを好機とするかのごとき政策変更、社会制度の改変など、云うところの「危機便乗型」政治・社会変造が公然と、かつ大々的に実施されてきているのが現状ではないかと思います。

例えば、自国防衛に名を借りた憲法第9条の無力化、電力不足を理由にした原発稼働年限の大幅延長や再稼働の認可、マイナンバーカードの押し付けによる国民総監視体制の法制化、教育行政への政治介入、など枚挙にいとまがないほどです。

これに対して、デモクラシーの擁護者を自任し、これらの政治や社会的動向の監視役を務めるべきはずのマスメディア(NHKをはじめとする大部分の大手マスコミ)が、こぞって体制摺り寄りの報道しかせず、気づかないうちに「大政翼賛体制」が成立しかねない程の危機をはらんだ情勢が醸成されています。

ここでは今のわれわれにできること、どんなに微力であろうとも、やらなければならないことに焦点を当てながら、この一年間の活動を総括していきたいと考えます。

その前に、ちきゅう座草創の際の意志一致、確認事項を再度思い返し、われわれの任務の再確認をしたいと思います。

「報道の公正さ、広さ、知の共有などをベースにして、相互に自由な討論を深めていこう…その際、専門の学者や現場のジャーナリスト、活動家などの意見をも十分に考慮、活用していきたいということですが、それは個人的な恣意から自己を解き放って、共同の精神へと高めていく努力を共にやろうということだと思います。そのための『場』を、微力ながら『ちきゅう座』は提供していきたいというのがその主旨です。」

 

1.編集問題について

ちきゅう座の編集方針は、基本的には「公共空間」としての討論の場の提供ということにあります。そのため、あえてどちらかの勢力や意見に与するというやり方はとっていません。それでは自己主張がなさすぎるという批判もありますが、編集部や運営委員会としては、個人的に意見や自己主張をすることには何ら制約をつけてはいませんが、組織全体としては極力「社説」的な主張をすることは控えています。

ただし、「言論の自由の核心は権力を批判する自由だ」という基本的信念は堅持しているつもりです。

毎年、内部の討論で繰り返されてきた要望として、「若者と女性の投稿を増やすにはどうすべきか」という大きな課題があります。この一年を振り返ってみて、若い人からの投稿が依然として少なすぎるのは事実です。しかし、少しずつではありますが女性の投稿は増えてきているように思えます。女性からの身近な日常生活に絡めた問題意識での投稿は大変説得性に富み、従来「敷居が高すぎる」と批判されていたことが少しずつ解消されるのではないかと期待しているところです。

若い方々への働きかけは、研究会活動などを通じて今後も継続的に行っていきたいと思います。西欧、特にドイツやフランスなどでは、若者の政治参加が積極的に行われているようですが、日本では逆に、残念ながら若者の政治離れ、無関心が増えているようです。

これには様々な要因が考えられると思いますが、メディアの報道姿勢の持つ責任は大なるものだと思います。ここ何十年かにわたって行われてきたマスメディアへの政府の露骨な介入によって報道が委縮しているように思えます。だからこそ、われわれ小メディアの責任も重くなるのですが。またそれと歩調を合わせて、教育制度の改変や「管理・監視社会化」が進行していること、格差拡大と庶民生活の不安定、貧困化、などの進行があります。日本社会の劣化が進み、人権と民主主義が根底から崩れているのではないかと危うんでいます。

ちきゅう座に関して言えば、掲載論文の評価の一応の目安はlike数の多さから判断されますが、そこにはちきゅう座の読者層としてどういうレベルの人たちが主であるかがある程度現れています。かなり専門領域に踏み込んだ長文の論考やニュースなどへの好感度の多さは、読者の質の一定の高さがうかがわれます。このことは見方を逆転させれば、まだちきゅう座は「敷居が高く」て、一般読者層に浸透していないせいだという批判にもつながります。このことをどう解消するかは次年度以降の課題です。

投稿論文の選別は、もちろん原則的にはあり得ませんが、読者の興味を知る上では、こまめにlikeの内容のチェックが出来るようにして、読者と編集部との間での更なる緊密な対話ができるような体制を作りたいと考えています。

さらに、海外から(あるいは海外関連)の投稿が多いのはちきゅう座の強みになっています。ドイツのグローガー理恵さんとT.K生さん、ブダペストからの盛田常夫さん、西サハラ情報の平田伊都子さん、東チモールの青山森人さん、また中国、台湾関連の矢吹晋、岡田允さん、韓国の小原紘さんなどです。

アメリカやロシアなど、まだ主要な地域が抜け落ちていますが、何とかカバーしていきたいと考えています。

掲載記事数に関しては、毎月の事情などで多少の変動は当然見られますが、これはこのサイト全体の底上げ(影響力のある良質な論文やニュースの掲載)を図る中で、自づから掲載数は増加するものと考えています。

運営委員会では、毎月500本以上の掲載を目標にしたいという「壮大な」計画の議論もしています。皆様方のご協力を仰ぎたいと願っています。

また、やはりここ数年いわれ続けていたことなのですが、編集スタッフの個人負担の軽減のために、編集委員の拡充を図る必要があると思います。編集スタッフのアクシデント(怪我や病気)による戦力ダウンをどうやってカバーすべきか、あるいはスタッフ間の荷重の軽重をバランスよくするにはどうすべきか、などの課題は依然として残されたままです。

 

2.画面改造の件

画面改造の件は、なかなか思うように進んでいないため、やむなく昨年と同じ課題(要望)を再掲載します。ぜひ皆様方からのご要望をお寄せください。

〉今まで、読者からの要望に対して次のような議論をして来ました。

「論文を中心にしたアーカイブができれば、学者からの投稿も増えるかもしれませんし、少々長い専門的な論文でも保管し、自由に活用できうるのではないか。

そうすれば、われわれのようなブログの弱点である、画面のデスクトップからすぐに消えてしまうという悩ましさを解消できる一方策になり得るかと考える。」

≫今までもカテゴリーの区分があり、それを繰って行けば、ある種のアーカイブとして使えることになっていて、また検索装置もある。ただ、不完全なため、調べようと検索装置を使ってみてもなかなかうまく検索できないことがあった。≪

「総会の時に、掲載記事に関する読者の反応を知りたいという意見がある。likeやtweetという機能もあるので、どう活用できるか、一般に簡単に見るにはどうするか」。

一番主要な課題は、サイト内の「検索」が不完全なので、これを改良するということです。また、各記事にアクセスカウントを付けることができないか、主要なタグ(例えば「原発」、「環境」など)については、サイト内にスペースを設けてそこからアクセスして一覧が見えるように出来ないか、などです。〈

 

次年度(2023年度)の運動方針案

上で述べた編集問題や画面改造の総括で触れた諸課題をどう処理していくかが新年度の方針案の骨子になるのですが、課題の実行のために、次の二点を提起いたします。

第一は、今年は編集委員会をできるだけ多くもちたいと思っています。そして、編集部のスタッフとして、運営委員以外の方々(特に女性や若い方々)のご参加をつのって投稿者の拡充など、記事内容のなお一層の充実を図っていきたいと考えています。

第二は、編集・技術関係者とプロバイダーとの打ち合わせを密にやりながら、可能な限り読者、編集部、技術部の統一(画面の一層の充実)を図っていきたいと考えています。

ウクライナ戦争については、ロシアの侵攻は明らかに国際法違反です。そして戦争否定の日本国憲法第9条の精神にのっとる我々としては、いかなる戦争といえども容認できません。それを大前提にしたうえで、ウクライナ問題にかぎらず欧米政府や日本政府の欺瞞性、二重基準についても明確に認識しておくことが重要と考えます。戦争は、各国の支配層が自らの利益のために、元々相互に戦う必要などない民衆を動員し、互いの殺し合いを強制するものでしかありません。我々は早急に停戦交渉に入ることを日本政府が呼びかけるよう強く要求します。

世界情勢はさらに米中の覇権争いが本格化し、アジア地域の情勢も南シナ海での対立、台湾有事をめぐる扇動、北朝鮮の核開発の一層の加速化、ミャンマーにおける民主派への軍の弾圧など深刻化をましています。また国内でも「テロ事件」発生、統一教会問題、原発の運転期間延長や新設、再稼働の動き、政治体制の軍備(軍需)傾斜、マイナンバー制度の強制による国民監視体制作り、それらと同一歩調で進行する教育の改変やマスメディア規制(自主規制も含む)、更には人権尊重を無視し、国際基準からかけ離れた難民認定基準や恣意的人権侵害の横行を放置する入管難民法の改正などなど憂うべき状況があります。

怖いのは、こういう国民生活に直接影響する重大な事柄の決定が、国会の審議を経ずに、次々に閣議決定や専門委員会レベルで決められて施行されている現実です(例えば、安全保障政策に関する3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の閣議決定。NHKテレビ受信料の支払い義務化、など)。

「ニュース・報道への不満」、特にNHKに対する不満(批判)の声は、ずいぶん前から上がっています。2005年に起きた長井暁(さとる)チーフ・プロヂューサーの「政治介入・番組改編疑惑」での内部告発に対しては、「受診料支払い拒否」が大量に出ました。

今回、同様な問題が、高市早苗元総務大臣によって引き起こされましたが、再び受信料拒否運動が起きないように、政府とNHKは先手を打って、「受診料支払い義務化」を閣議決定したものと憶測しています。

前回の議案書でも書きましたが、自民党の長期政権が行ってきたことは「自分たちの『利権・腐敗』にまみれた犯罪体質(国家財産の私物化とネポティズムnepotism身内びいきの馴れ合い主義)をおおい隠すために国会発言を次々に「嘘」で塗り固め、国家・国民を限りなく危険な方向へと導こうとし、日米の結託の上に、「憲法の改悪」(反共同盟)を作り上げようとするもの」でした。安倍晋三元首相は、国会で百数十回の「虚偽発言」を繰り返しています。先ごろ問題化されている「五輪汚職」にまつわる電通との政治家などの癒着(森喜朗や、竹中平蔵などの政治家の名前も、ちらほらささやかれています)。

残念なのは、こういう重大なニュースがまともに取り上げられず、一向に国民レベルの問題にならないことです。

教育問題に関しても、「日本学術会議」の新会員候補6名の任命拒否問題がクローズ・アップしたように、1998年、中教審会長への民間企業人の任命、2001年の小泉内閣が断行した「大学設置基準」の変更、2013年には、教育再生実行会議が安倍首相直属で設置されたこと、2004年の国立大学の「独立行政法人化」問題、等々。露骨な政府介入による教育の捻じ曲げ(民営化、また恣意的な人事決定による政治支配)は明らかです。教育予算が理系技術者養成に大幅に偏重していること(科学技術に飲み込まれた学術)、これを先の国家の「軍事(軍需)国家化傾向」と照らし合わせて考えるとき、明らかに「産・学・官・政」協同路線の構築にその狙いがあると言えると思います。

元文科省事務次官・前川喜平が指摘しているように、かつては世界的に優秀といわれた日本の官僚群、司法当局も、政治家に人事権を握られた結果、自己保身と立身出世の「運命共同体」のうちに取り込まれてしまっています。今やエリート層は現体制維持の汚泥にどっぷり身を沈め(「ミーイズム」=自己中心主義に取りつかれ、自己保身、小役人根性、追従(忖度)、俗物、無責任、体制順応)、批判精神を喪失し、嬉々として政権の存続に積極加担しています。

斎藤幸平・東大准教授が、その著『人新世の「資本論」』で引用紹介していましたが、「世界の富豪層トップ10%が二酸化炭素の半分を排出している」(Oxfam”Extreme Carton Inequality”2015)こと。世界で最も裕福な資本家26人が、貧困層38億人(世界人口の約半分)の総資産と同額の富を独占している(「朝日新聞」デジタル版2019.1.22)こと。「コロナショック・ドクトリン」に際して、アメリカの超富裕層が、2020年春、3か月で資産を62兆円増大させたこと、など。世界的な規模での格差増大と環境破壊が深刻化していることは明白な事実です。「地球終末時計」は、いよいよ人類の最後に近づいてきていることを示しているといわれています。傍観者然と静観している時ではないはずです。さきの統一地方選挙では、日本維新の会の躍進が目立ち、残念な結果になりました。しかし、杉並区議選で女性議員が1.7倍に増え、全体の半分を占めるに至ったのは、昨年、国際環境活動家の岸本聡子区長が僅差で勝利した勢いを確かなものとするため、多くの新人候補が区長をバックアップしようと名乗りをあげたからです。また、明石市長選や世田谷区長選は、12年間にわたり地道な子育て対策や地域活性化などに取り組んできた泉房穂市長や保坂展人区長の実績を評価して、前者は後継者が大勝し、後者は自公の有力新人を下して4選を果たしました。これらは、自信をもって必要なことを訴え確実に実行していけば人々の支持は自ずと得られることを教えているのではないでしょうか。

それではちきゅう座としては、現状の変革にどう取り組むべきなのか。

もちろん、われわれにできることはたかが知れているかもしれません。しかしそれでも、今やれること、やるべきことを提案してみたいと思います。

第一は、いかに「ミニメディア」であれ、一応メディアとして存在する限り、出来るだけ正確な報道を心がけると共に、そこに報道者の心情(批判精神)をぶつけていく必要があると思います。体制側から流される意図的な「フェイクfake」ニュースに対抗できるのは、豊富で正確な情報とそれを捌くための思考力によるしかないと考えます。そのために、様々な専門家のご意見を収集し、広く読者の批判的思考の素材に供覧していきたいと考えています。

第二は、そのために、可能な限り世界中からのニュースを集め、また大手メディアが取り扱わない領域での問題点の剔抉を目指したいと思います。今までも、われわれのもとには頼もしい戦力がそろっているとは思いますが、更に一層書き手の層の充実を求める必要があるはずで、学界その他の研究会、ジャーナリストとのより積極的なコンタクトを計っていくべきであろうと考えます。今、企画しているのは、外信の紹介コーナーを設けて、定期的に外国の新聞ニュースなどを翻訳し紹介するということです。

第三として、女性からの投稿をもっと増やしたいと思っています。日本は世界的に見て、女性の立場がまだ決定的に貧弱だといわれています。

第四は、国内問題に関して、まだ「沖縄」関連の記事や情報が決定的に不足しています。定期的な投稿を確保したいと考えます。

第五は、地方からの発信が少なすぎます。仙台や大分、そのほかの地域との交流をもっと増やしたいと考えています。また、全国各地域での活動報告や反原発運動などとの積極的な結合、意見交換などがもっと頻繁になされるべきだと思います。そのために、大いにちきゅう座を活用していただきたいと願っています。

第六に、社会の底辺に沈みこまされている人々の生の声を何とか汲み上げられないだろうか、と考えています。われわれちきゅう座の仲間の中には、いわゆる「ホームレス」の人たちと交流を重ねている方々もいます。

第七に、若い方々にもっと活躍してもらい、積極的な意見を出して欲しいと願っています。コロナも一応鎮静傾向にあるようですので、ミニ・シンポジウムなど若者との交流の場を積極的に作っていきたいと考えています。

運営、編集スタッフの拡充もこれらの課題と切り離しては考えられないと思います。

「無関心と情報の欠如に乗じた世論の誘導」(梅林宏道『在日米軍』岩波新書)には重々気を付けたいと思います。「報道の公正さ、広さ、知の共有」をこれからも目指したいと思います。

 

本年度の運営委員には次の方々が選出されました。三役以外の役割は運営委員会で協議のうえ、決定します。

委員長:合澤清(再)

運営委員:松田健二(事務局長―再)、柏木勉(編集委員長―新)、安岡正治(再)、青山雫(再)、髭郁彦(再)、府川頼二(再)、村尾知恵子(再)、石川愛子(再)、安岡正義(再)、野上俊明(再)、土田修(再)、村尾望(再)、松井靖久(再)、片桐幸雄(再)、生方卓(再)

 

なお、会費振り込み先は、郵便振りで、加入者名:ちきゅう座  口座記号、口座番号は、左から00120-2-762760です。年会費は5000円