2025年度ちきゅう座総会と討論集会が5月17日に開催され、新年度役員が選出されました

2025年度のちきゅう座総会と、それに引き続く討論集会が5月17日(土)午後12時45分~5時まで明治大学駿河台校舎(リバティタワー1155教室)で行われました。あいにくの大雨の悪天候でしたが、それにもかかわらず、総会参加者は22人(会員は17人)、討論集会には50人もの人が集まってくれました。私たちの存在が少しでも、世間に知られるようになれば、大変光栄なことであり、これからの活動にますます励みになると感じました。以下、総会の議案書と新年度の運営委員の顔ぶれをご紹介いたします。今後ともちきゅう座をよろしくお願い申し上げます。

2025年度ちきゅう座総会議案書

  1. 年度(2024年度)事業報告

近年は世界中、あちこちの国で自称他称の「独裁者」が出現し、わがもの顔で自国の政治、ひいては世界の情勢を攪乱しているように思えます。その結果、ガザのジェノサイドおよびウクライナにおける悲惨な戦争の継続、またアフリカ各地(リビア、マリ、コンゴ、ナイジェリア、など)での深刻な地域紛争、またエネルギー問題や貿易戦争の再発危機、本当に人類の未来(生存)はどうなるのだろうかと、暗澹たる気持ちになります。

目を国内問題に転じてみても、同じように憂鬱になることばかりです。

国民生活は、賃上げが全く不十分のため物価上昇で実質賃金はマイナスが続き、個人消費は依然として低迷したままです。

諸物価の異常な高騰、特に食品(コメ、野菜、魚、など)価格の上昇は庶民生活を直撃し、十分な食事をとれない「食料難民」まで出ているといわれています。その一方で、「上場企業の2025年3月期の純利益合計額が4年連続で過去最高を更新し、計52兆6500億円に達する見通し」と発表されてもいて、社会的な格差はますます拡大の一途です。歴史的にみると「食糧危機」は暴動につながっています。社会的な不安定化が醸成されていると思います。

このような社会状況を公正に報道し、警告すべき役目のメディア、特に大手メディアの退潮ぶり、節度のなさは目に余るほどです。

昨年の年末の東京高裁判決で、NHK経営委員会議事録が開示され、NHKが2018年放送で「かんぽ生命保険が高齢者らに不適切な販売をしていた実態」を報道したが、日本郵政グループから抗議を受け、NHK経営委は当時の上田良一会長を呼びだして異例の厳重注意をしたことが明らかになっています。これは報道の自由をめぐる重大な事件であり、公共放送への権力の露骨な介入で、断じて許されるべきではありません。

また、「日本学術会議」の法人化を推進しようとする政治の介入は、外部委員を入れて学会をコントロール(学問の自由の規制)しようとしています。

身近な問題では、われわれが日常的に使用している水道水に混入している、発がん性が疑われるPFASの水質検査は義務付けられましたが、数値はそのまま据え置かれています(米軍基地や自衛隊基地周辺からは基準値以上が検出されている)。医療保険の危機や、社会的貧困はそっちのけで、2026年度防衛増税へ向けての準備が開始され、総額43兆円の安定財源を確保するといわれています。企業倒産は11年ぶりに1万件を超えています。経済産業省は従来の「可能な限り原発依存度を低減する」から一転し「最大限活用する」としたうえで、なお「廃炉分の新設を認める」との原案を公表しました。

こういうことを列挙すれば数限りなくありますが、この辺でとどめて、われわれにでき得ることは何かという問題に移りたいと思います。

小たりとはいえ、われわれはメディア活動を展開しています。もちろん大組織を擁して現地調査や報道を事とする大手メディアに、同じ分野で対抗できる術はありません。しかし、彼らがあえて報道しようとしない事柄、あるいは現体制に迎合してのいびつな報道姿勢、内容、これらを暴露し、公共空間の場でその正否を議論することはできます。大手メディア業界から失われた権力への批判的な精神を持ち続け、可能な限り公衆に訴えることはできます。

後でも触れますが、今我々にできることは、公共空間の場を維持強化し、広く議論を喚起すること。また、シンポジウム(大衆的な討論集会)を開き、専門家との交流を密にしていくこと。他の運動団体との積極的な交流を図り、運動の輪を広げること、などです。

以下、各部署からの総括提案をしたいと思います。

1.事務局体制の一層の充実

今期も前期に引き続き事務局体制の強化・充実に力を入れてきました。その結果、会員名簿及び会員へのメーリングリストが完成し、総会の案内、議案書などの必要書類はメールでお送りすることができるようになりました。また、独自のシンポジウム(現代史研究会)も継続的に実施(2月24日で7回目)してきました。更に、会員宛の「ニュースレター」を発行して、まだ十分ではありませんが、会員間の情報交換を密にするようにしました。これらの成果は新規会員(10名近く)の増加となって反映されてきています。事務局長の石川愛子、技術委員長兼任の村尾望の献身的な努力のおかげと感謝したいと思います。

  • 編集委員会からの報告

昨年12月に、長年懸案であった「画面の改造」を実施しました。従来の画面とかなり変わったため、読者の方々も、また掲載担当者もまだ不慣れなために、いろいろ戸惑ったり、ミスったりするかもしれませんが、出来るだけ相互のコミュニケーションを取り合いながら、より見やすくて、相互に役立つ画面にしていきたいと考えています。

掲載本数はここ数年はあまり変わっていません。しかし、なかなか力のこもった論文や報告が掲載されているように思います。対外報道を一例として出します。ちきゅう座会員である野上俊明さんは定期的にミャンマーの民主化闘争について詳しい報告を掲載しています。また同じく会員で千葉大学名誉教授の岩田昌征さんは、ポーランドを訪問した時の報告やウクライナ戦争をめぐる東欧の状況を翻訳・解説・紹介されています。ドイツ在住のグローガー理恵さんとT.K生さん、東チモールの青山森人さん、ブダペストからの盛田常夫さんも、現地情勢の直接報道をされています。西サハラ情報の平田伊都子さん、韓国通信の小原紘さんなどからもホットな話題が送られてきています。復活したGlobal Head Linesの書き手がもっぱら野上さん一人になっているのは反省材料です。また、元共同通信記者で、台湾問題を専門に追いかけられていた岡田允さんがお亡くなりになったことは、まことに痛恨の極みです。

興味深い話題として、女優の「倍賞千恵子」や「高峰秀子」を扱った記事に読者の関心が集中したことです。従来、「ちきゅう座は敷居が高すぎる」と言われてきましたが、そうでもないことの証明にでもなれば有り難いと思います。やはり、読者の反響は大切なことですから。因みに、ちきゅう座のアクセス数は、最近では一か月に3万5千~4万件もありました。

  1. 年度(2025年度)の運動方針案

世界情勢のカオス化は戦争勃発の危うさを身近に感じさせます。また金銭感覚の欠如した政治家による腐敗堕落しきった現在日本国の政治体制、三権分立の建前ばかり立派ですが、その実、既存の権力にすり寄る司法関係者(裁判所、検察、警察など)。それどころか、労働界(「連合」)までもが政財界に媚を売る始末です。しかしながら、「もう何を言っても無駄だ」と諦めればそれまでです。やはり、どこまでも批判と抵抗の姿勢は継続すべきですし、そうした地道な運動の中で、われわれ自身の庶民的な力の底上げを図っていくべきだと思います。学校教育だけが「教育」ではないと思います。むしろより重要なのは社会教育であり、それを通じての社会全体のレベル・アップが必要だと考えます。その延長にしか「社会変革」はあり得ないのではないでしょうか。

今は微力ですが、私たちのこの運動も、そのために存在していると思っています。

そこで以下の点について提案してみたいと思います。

(1)討論集会、シンポジウムを定例化すること。内容を独自に企画するとともに、他の運動体との連携も十分考慮し、今現在持ち上がっている社会問題に切り込む努力をしたい。その際、他のメディアとのリンクも本格的に考えて取り組む必要があるように思います。

(2)投稿論文の選別(検閲)は、もちろん原則的にはあり得ませんが、読者の興味の所在を知る上では、こまめに話題性の内容のチェックをして(ただし、世間の風潮に迎合することはしない)、読者と編集部との間での更なる緊密な対話ができるような体制を作りたいと考えています。

そのためには、編集スタッフを増やすこと、書き手の発掘、特に外信や若手、女性の投稿を増やしたい。なお、公共空間としての討論の場という点では、近年SNSの広がりによるフェイクニュースをはじめとした偽情報の拡散が大きな問題になっています。ちきゅう座としても公共空間を提供するにあたっての責任を再確認して対応していくこと、そして丁寧な編集を心掛けたいと思います。

掲載記事数に関しては、毎月の事情などで多少の変動は当然見られますが、これはこのサイト全体の底上げ(影響力のある良質な論文やニュースの掲載)を図る中で、自ずから掲載数は増加するものと考えています。

運営委員会では、毎月500本以上の掲載を目標にしたいという「壮大な」計画の議論もしています。皆様方のご協力を仰ぎたいと願っています。

  • 本年度の運営委員として次の方々を推薦したいと思います。三役以外の役割は運営委員会で協議のうえ、決定します。

委員長:合澤清(再)、運営委員:石川愛子(事務局長―再)、柏木勉(編集委員長―再)、村尾望(技術委員長―再)、安岡正治(再)、髭郁彦(再)、府川頼二(再)、村尾知恵子(再)、安岡正義(再)、野上俊明(再)、土田修(再)、生方卓(再)、繁竹昇(再)、岩附宏行(再)、池田祥子(新)、東條守(新)、大賀英二(新)、半田正樹(新)、田中史郎(新)

監査:松井靖久(再)、松田健二(再)