現代批評講座—著者が語る新刊の集い
■新講座開講のご案内
二〇一一年三月一一日の東北大震災と原発の惨事は、私たちに多くの課題を突きつけました。それらの問題は三・一一以前にも少なからず論じられてきた一方で、三・一一は私たちの国が、私たちの社会が、そして私たちの生が現在どのような歴史的状況のなかに置かれているのかをあらためてまざまざと見せつけました。この点では、明治維新以降の近現代史、日本の近代化の過程を総体的に捉えなおすことが喫緊の要請となります。「近代」そのもののあり方を問うことが迫られているのです。
新しく立ち上げました「現代批評講座—著者が語る新刊の集い」は、そうした混沌とする時代状況をさまざまな側面から切開して、少しでも豊かな地平を築くことのできる糸口を探求するために開かれた試行の場であります。新刊について著者から直接に語っていただくことによって、そして著者とともに考えていくことを通じて、私たちはみずからの環境を作りあげていくことに参画していきたいと考えます。
二〇一三年二月一〇日
講座世話人 (二月一〇日現在・四〇名)
伊藤セツ(昭和女子大学名誉教授)伊藤述史(大学非常勤講師)伊藤誠(東京大学名誉教授)今井昭彦(文筆家)岩田昌征(千葉大学名誉教授)内野光子(歌人)上之園幸子(社会思想家)宇波彰(評論家)及川淳子(大学非常勤講師)追川恵子(デザイナー)岡本充弘(東洋大学教員)岡本有佳(風工房)川元祥一(作家・評論家)黒須純一郎(明海大学教員)高良留美子(詩人)小林孝吉(文芸評論家)小林勝(ドイツ史研究)児島博紀(東京大学院博)権安理(大学非常勤講師)佐藤俊男(デザイナー)澤村美枝子(フリー編集者)椎名修(写真家)柴田隆行(東洋大学教員)清家竜介(早稲田大学教員)高橋一行(明治大学教員)中村朋宏(コーチ)橋本盛作(御茶の水書房)羽田三郎(印刷会社役員)原田克子(詩人)船木恵子(武蔵大学総合研究所)細井隆(評論家)西角純志(大学非常勤講師)仁科伸子(東京福祉大学専任講師)三上治(評論家)矢島杜夫(社会思想史研究)山家誠一(評論家)吉留昭広(社会運動家)米村健司(早稲田大学教員)若生のり子(美術家)渡邉澄子(大東文化大学名誉教授)
■第六回:二月二十二日(土)午後一時〜五時〇〇分
(場所:明治大学研究棟四階第三会議室)
第六回現代批評講座は池田勝雄・高良留美子・川元祥一氏による
パネル・ディスカッションを開催いたします。
■パネル・ディスカッション:日本社会の新しい視座
「共同体間分業」—部落共同体論—
『社会理論研究 第14号』共に生きる社会を目指して(社会理論学会編・千書房)二三頁〜五四頁
論文「共同体論からみる日本型カースト制度」池田勝雄著
[本論文の内容]
第一章 部落史論争と総合的・体系的観点
第二章 共同体分析のない共同体論
第三章 部落史の混迷と「共同体」研究
第四章 部落の歴史的・社会的役割
第五章 ウェーバーのアジア観と部落史
第六章 惣村の確立と部落差別
第七章 根深さの原因│共同体の保守性
第八章 共同体間分業と差別の根深さ
第九章 アジア的共同体としての被差別部落
■「部落共同体」という概念がここで確立する。
これまでいわれた部落問題、部落差別といわれた実態も、この概念によって大きく包まれ、新しい地平をもつことが出来るだろう。同時に、農山漁村町のそれぞれの個性ある共同体とともに、社会構成体、あるいは労働、所有など諸形態の日本的全体像を把握する新しい視座であり、またそれは、自然を前に人々が生活する自立的な小宇宙を示すであろう。
著者を迎え、四時間のパネル・ディスカッション
■池田勝雄(著者)紹介
兵庫県西脇市の黒田庄に生まれ、横浜国立大学に学びながらも、卒業するとすぐ部落解放運動をするため故郷にもどり、なが年解放運動をしながら、昨年まで市議会議員活動もつづけてきた。黒田庄町解放教育教材研究委員会の事務局長であった。
■パネラーの紹介とメッセイジ。
池田勝雄(いけだかつお)解放教材研究家
著書『部落の歴史と文化』(教材研究委員会編)等
「あらたな時代の新たな理論の構築を求めて」
高良留美子(こうらるみこ)詩人 評論家 作家
「部落差別と女性・民族・障害者差別を通底するものは何か。自然発生的分業から自由意志的分業へというマルクスの分業論からそれが見えてくる。その場合の〈自然〉とは?その背後には支配や征服、制度などの〈社会〉がある。差別を克服する共同体の個々人は?」
川元祥一(かわもとよしかず)作家 評論家
「グローバリズムに対抗するマルチチュード。その原点の一つといえる新しい地域。そこには個性をもつ自然と人との共生もあった、そうした自然と社会の分厚い時間と空間のページをめくり、一人ひとりが自分の想像力と構想力で考え、話しあい、構築しよう」
▼本講座は世話人会が設立趣旨に沿った新刊を選定し、著者自らが新刊を紹介・説明し読者と討論する場であります。
▼場所 明治大学研究棟四階第三会議室 千代田区神田駿河台一—一 明治大学リバティータワーの裏
▼参加費 五〇〇円
▼主催者連絡先 伊藤述史(090—9388—3831) 清家竜介 ryu.seike@gmail.com