6月6日、IPPNWがUNSCEARフクシマ報告書に関する批判的分析を公表

4月2日、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)は、福島第一原発事故の健康への影響に関する最終報告書を公表しました。UNSCEARフクシマ報告書は、「フクシマでの被曝によるがんの増加は予想されない」と述べています。

 

6月6日、私は、IPPNWがUNSCEAR最終報告書に対する批判分析を公表したとのことを、IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン医学博士から頂いた下記のメールで知りました。:

 

2014年6 月6日

親愛なる友人達へ

本日、世界中から19のIPPNW支部が、最近のUNSCEARフクシマ報告書の批判的分析を公表しました。

UNSCEARは、国連放射線影響科学委員会であり、既得権益と核エネルギーに関して偏った見解を持つ原子力国家からの代表者たちで成り立っています。彼らのフクシマ核大災害に関する報告書は、独立した情報源よりも、主に原子力産業のパブリケーションからのデータに頼っており、放射線被曝に関わる極めて重大で決定的な側面を省いたり、誤った解釈をしたりしています。また、彼らは算定するためのベースとして、疑わしい仮定を用いています。

我々の多くは、報告書が提示する、見たところ計画的で意図的な過小評価と疑わしい解釈が、予測されるフクシマ核大災害による健康被害を重大でないと主張する核産業によって利用されるのではないかと懸念しています。これらのことが動機となって、我々はこのUNSCEAR報告書について包括的な分析を作成しました。どうぞこのリポートをご覧になって、これを多くの人々に広めていって下さい。

http://www.fukushima-disaster.de/information-in-english/maximum-credible-accident.html

《IPPNWのUNSCEARフクシマ報告書の批判的分析(英文)へのリンク》

ー以下省略ー

ベルリンからごきげんよう

アレックス・ローゼン医師

IPPNW Germany

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IPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析を拝読させて戴きました私の素人としての感想は: 論評は、フクシマ核事故がもたらした健康・環境被害のスケールを故意に過小評価しているUNSCEAR報告書を、納得できる論拠に基づき、詳細にわたり、鋭く批判していると感じました。

 

この批判的分析の和訳版はまだないようですが、近いうちに和訳版も出てくるものと推察します。

 

IPPNWドイツ支部サイトに、この画期的な批判的分析の概要を説明した記事が掲載されていますので、それを和訳してご紹介させて戴きます。

原文へのリンクです。http://www.ippnw.de/startseite/artikel/710da4c1bf5cf76cb6071456f2c89365/zahl-bisher-entdeckter-schilddruesen.html

 

IPPNWプレスリリース –  2014 年6 月6日

 

これまでに発見された甲状腺がん症例数は高い

IPPNWがUNSCEAR報告書に関する詳細な分析を公表

(和訳: グローガー理恵)

これまで、福島県の50人の子供たちが甲状腺がん手術を受けた。これは福島県民健康管理の2014年5月19日付の報告書に記載された情報である。細胞診の結果、さらに39人の子供たちにがんの疑いがあることが分かり、彼らはこれから手術を受けなければならない。今後さらに、がん症例数が上昇することが予測される。これまでのところ、被曝した子供たちの内、78%の検査結果が公表されたのみであり、一次集団検査で異常が検出された、およそ400人の子供たちの二次検査の結果は提出されていない。日本のがん罹患統計によると、これらの年齢グループに該当する集団における年間の甲状腺がんの通常発症率は1件以下となっている。

IPPNWの医師たちは、これらの検査結果を懸念している。IPPNWは、今日( 6月 6日)公表した詳細な論評の中で、国連放射線影響科学委員会 (UNSCEAR)の報告書が核大災害によってもたらされる健康被害を計画的且つ意図的に過小評価していると分析している。

IPPNWは、UNSCEAR報告書に記載された日本国民の生涯積算線量の集団線量に基づけば、放射性降下物のため、これから何十年かの間に、放射線によって誘発された甲状腺がんの発症数がおよそ1,000件、また、(放射線誘発の)その他のがんの発症数が4,300件から16,800件になることを推測している。

「UNSCEAR報告書の批判的分析」のリーダー作成者であるアレックス・ローゼン博士は「予測の正確さは、どのような仮定とデータをベースにするかに係ってくる」ことを確認する。しかしながら、これらUNSCEARによる仮定とデータ は、計画的且つ意図的な過小評価であると見なされなければならない。その理由として、IPPNWは次の10点を挙げている。:

 

1)    UNSCEAR報告書に記載されたソースターム*推定値は疑わしい

2)   内部被曝線量の算定に関して深刻な懸念を持つ

3)   信頼できる福島原発の作業員達の被曝線量の算定が存在しない

4)   UNSCEAR報告書は動物-植物界における放射線影響を無視している

5)   胎芽/胎児は特に放射線感受性が高いことが考慮されていない

6)     UNSCEARは非がん疾病および遺伝的影響を無視している

7)     放射性降下物と自然放射線との比較は容認できない

8)     UNSCEARによるデータ解釈は疑わしい

9)     政府によってとられた防護措置が誤って伝えられている

10)    集団線量の推定からの結論が提示されていない

 

UNSCEARによれば、「一般公衆や殆どの福島現場作業員における健康被害が、福島第一原発事故による放射線被曝に起因するようなことは、ありそうにない」という。これに対してローゼン博士は述べる:『もちろん、各々のがん症例を、ある特定の誘因に帰させるということは不可能です。何故なら、「がん」という病気は、その出所の表示を掲げていないからです。しかし、これまでに見つかった甲状腺がん症例数だけでも既に、予想されていなかったほどに高いのです。原子力大惨事によって何万もの家庭へ過酷な影響結果が及んでいることを、単なる統計上だけの問題として限定することは不適切であり、被災した多くの人たち、それぞれ一人一人の運命を黙殺していることです。』

以上

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*ソースターム (Source Term):  炉心損傷事故時、燃料は溶解し核分裂生成物が炉心から放出され、一定の漏れ率で環境へ放される。環境への影響を評価するには、核分裂生成物の種類、化学形、放出量を明らかにする必要があり、これらを総称してソースタームと呼ぶ。http://www.remnet.jp/lecture/words2003/03118.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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