2011年7月5日「福島市における放射能調査の実態」に関する「共同プレスリリース」が行われました。
【共同プレスリリース】を行ったのは以下の団体です。
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク/福島老朽原発を考える会(フクロウの会)/国際環境NGO FoE Japan/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/グリーン・アクション/国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
「ちきゅう座」編集部は、「福島老朽原発を考える会」から、転載許可をいただきましたので、同会のサイト
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/07/post-68fa.html
から以下の通り転載させていただきます。
(転載開始)
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福島市の土壌から
チェルノブイリの「避難の権利」区域
または「避難の義務区域」以上の放射線量を検出
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上記6団体は本日7月5日、参議院議員会館(東京都千代田区)で、福島市における放射能汚染の実態と避難区域の設定の問題点について記者会見し、福島市で採取した土壌の放射汚染レベルはチェルノブイリ事故により設定された「避難の権利」区域(185キロベクレル/平方メートルから555キロベクレル/平方メートル)乃至「避難の義務」区域(555キロベクレル/平方メートル~)に相当すると発表しました(注1)。
今回の調査は市民団体が神戸大学大学院の山内知也教授に依頼したもので、2011年6月26日に福島県福島市で行われた土壌調査(注2)では、市内4カ所から土壌サンプルを採取し、その放射能汚染レベルを、高純度ゲルマニウム半導体検出器を用いて評価しました。調査の結果、すべての試料から「放射性同位元素等による放射線障害防止法に関する法律」とその関係政令が定める放射能濃度の下限数量(10,000 ベクレル/キログラム)を超える汚染が検出されました。最高値は小倉寺稲荷山5番地福泉寺下の側溝の46,540ベクレル/キログラムで、これは上記の値の約4.6倍となります。
会見した山内教授は、「福島市で土壌汚染が広がっています。子どもたちがこの土で遊ぶということは、高いレベルの放射性物質で遊んでいるということです。早急な避難が必要です」と語りました。
また、上記6団体は同日声明を発表(注3)し、「現行の避難区域外においても線量の高い地域を避難区域に設定すること。とりわけ妊婦や子どもたちの避難が一刻も早く必要です。また、自らの判断で避難する住民に対し、補償や行政サポートを行うということを国として明言することが不可欠です」と訴えました。
注1) 発表資料「福島市における放射能調査の実態」(地図)
「110705_fukushima_dojoosen_map.pdf」をダウンロード
(以下発表資料「福島市における放射能調査の実態」(地図)を掲載――「ちきゅう座」編集部)
「福島市における放射能調査の実態」
添付資料
福島市内の土壌汚染
・文科省測定…6月29日福島市杉妻町(県庁)セシウム134+137 で32,000 Bq/kg=640k Bq/m2(換算係数20)チェルノブイリ事故では「移住の義務」区域に相当。福島市大波でも最大37,000 Bq/kg=740 kBq/m2(換算係数20)で、同じく「移住の義務」区域(555 kBq/m2~)に相当する。
・山内教授による測定…渡利・大波地区で約16,000 Bq/kg~46,000 Bq/kg=320 kBq/m2~920 kBq/m2(換算係数20)チェルノブイリ事故の「避難の権利」区域(185~555 kBq/m2)~「避難の義務」区域(555 kBq/m2~)に相当する(6月26日)。
文科省の測定データ
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/06/29/1
306615_062910d.pdf
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/06/15/1
306616_060910d.pdf
<福島市における放射能汚染レベルと放射性セシウムの局所的濃縮1(速報)>抜粋
2011 年6 月28 日 山内 知也 神戸大学大学院海事科学研究科
概要:2011 年6 月26 日、福島県福島市において4か所から土壌サンプルを採取した。その放射能汚染レベルを、高純度ゲルマニウム半導体検出器を用いて評価した。何れの試料からも「放射性同位元素等による放射線障害防止法に関する法律」が規定する放射能濃度の下限数量(10,000 Bq/kg)を超える汚染が検出された。最高値は46,540 Bq/kg であった。
測定結果のまとめと評価
・福島市内の4か所で採取した土壌の試料は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」とその関係政令が定める下限数量である10,000 Bq/kg を超えていた。
・試料(1)は大波小学校に隣接するスクールバスのバス停の土壌であり、性状としては砂利であった。その位置での1 m 高さの空間線量は1.72 Sv/h であり、5 cm 高さでは2.42 Sv/h であった。
表2に示したように、Cs-134 が9,340 Bq/kg、Cs-137 が9,880 Bq/kg であり、双方を合わせると19,220 Bq/kg であった。乾燥させると単独でも10,000 Bq/kg を超えると思われる。
・試料(2)は大波農村ひろばのグランドの土である。このグランド中央での1 m 高さの空間線量は2.5 Sv/h であり、50 cm 高さでは2.9 Sv/h、5 cm 高さでは3.2 Sv/h であった。表3に示したように、Cs-134 が8,080 Bq/kg、Cs-137 が8,210 Bq/kg であり、双方を合わせると16,290 Bq/kgであった。かなりの水分を含んだ状態での計測であったので乾燥重量はより軽くなり、その状態では単独でも10,000 Bq/kg を超えると思われる。このグランドに隣接する駐車場のような広場の土砂は入れ替え作業が行われていた。1 m 高さの空間線量は0.82 Sv/h であり、5 cm 高さでは0.70 Sv/h であった。地表からのガンマ線が少なく、広場の周辺からの影響が大きいために1 m高さでの計測値がより大きくなっている。入れ替えを行っても、例えば神戸のバックグラウンドレベルと比べると(0.05 Sv/h)、16 倍以上の高さである。
・試料(3)は平ヶ森市営住宅内公園内の土である。この公園は現在は柵が設けられており中で遊ぶことが禁じられているが、数日前までは子どもたちが遊んでいたとのことである。試料は柵の外側の土である。その場所での1 m 高さの空間線量は2.4 Sv/h であり、5 cm 高さでは3.5 Sv/hであった。表4示したように、Cs-134 が8,900 Bq/kg、Cs-137 が8,740 Bq/kg であり、双方を合わせると17,640 Bq/kg であった。これも乾燥させると単独で下限濃度を超えると思われる。子供が遊んでいた公園の土壌が法令でいうところの放射性同位元素であるという事態を重視すべきである。計測が行われてこなかったにもかかわらず、年間20 mSv といった数値が一人歩きし、注意喚起すら行われていなかった。
・試料(4)は、小倉寺稲荷山5番地の福泉寺の庭から伸びる階段の下の道路の側溝から採取した土である。Cs-134 が21,730 Bq/kg、Cs-137 が24,810 Bq/kg であり、双方を合わせると46,540 Bq/kgであった。湿っている状態でも下限濃度を単独で超えている。この側溝の下は土砂で埋まっているとみられ、流れ込む水に含まれているセシウムが堆積・濃縮されることでこのような高い汚染レベルに到達したと見られる。採取地点は側溝上の金属製グリッドが置かれていた部分であったが、1 m 高さの空間線量は2.2 Sv/h であり、50 cm 高さでは3.0 Sv/h、5 cm 高さでは7.7Sv/hであった。近くのグリッドには落ち葉が詰まっていたがその5 cm 高さでの空間線量は11.5 Sv/hであった。周辺の土壌よりも汚染レベルが格段に高い部分は、福島県外でも確認されているが、そこでも水の流れが関係していた。
・福島市内の各地点でも空間線量の高いところと相対的に低いところがあり、それは放射性セシウムの分布と密接に関係する。したがって、ある地点から少し離れると線量が数10%以上変化することも珍しくない。したがって、定点観測する場合にはその定点を選択する妥当性が常に問題になる。セシウムの分布自体は降雨の度に変化し、側溝等の水が流れ込む場所ではセシウムの濃縮が生じている。地域を点ではなくて時間軸を含む面で捉える丁寧な空間線量の評価が要る。より巨視的に考えると、阿武隈川の水系におけるセシウムの移動と堆積の全体像をつかみ、その時間的変化を理解する必要があるだろう。
・福島市内の各所で「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」とその関係政令が定める下限数量である10,000 Bq/kg を超えている汚染が確認された。Cs-134 の半減期は2年であり、Cs-137 のそれは30年である。したがって、この汚染は容易には消えず、人の人生の長さに相当する。そのような土地に無防備な住民を住まわせてよいとはとうてい考えられない。
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1 この放射能汚染調査は、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、国際NGO FoE Japan、福島老朽原発を考える会、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」の要請と援助をうけて実施した。計測には神戸大学大学院海事科学研究科「加速器・粒子線実験施設」の放射線計測機器を使用した。
(以上で 発表資料「福島市における放射能調査の実態」(地図)を終了。
以下http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/07/post-68fa.htmlからの転載の続き――「ちきゅう座編集部」)
注2)福島市における放射能汚染レベルと放射性セシウムの局所的濃)
「fukushima_dojyouosen_houkoku_yamauchi.pdf」をダウンロード
注3)共同声明「福島市における放射能汚染の実態および避難区域設定に関する共同声明」
「2011_0705kyoudou_seimei.pdf」をダウンロード
注4)協同声明中に出てくるフランス政府機関からの勧告については下記をご覧ください。
「110524_IRSN_japanese.pdf」をダウンロード
連絡先:
阪上武/福島老朽原発を考える会 090-8116-7155
満田夏花/FoE Japan 090-6142-1807
(転載終了)
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3.30 CRIIRAD声明文の転載について
なお、小山真弓さん(東日本大震災緊急支援市民会議)より、3月30日のCRIIRAD(放射能に関する独立研究情報委員会)の声明文をいただきましたので、合わせて資料として転載させていただきます。
「ちきゅう座」編集部よりひとこと。南相馬市の牛の内部被ばくが明らかとなり、「飼料についても水についても国の指示通りしていたのになぜ?」などと報道されています。でもお上が請け負うと言おうが、責任をもつと言おうが、そんなことで放射性物質から身を守ることができないのは判りきったこと。今頃になってこんな報道が罷り通る日本、フランスから見れば、ほんとうに「不思議な国」でしょうね。
(転載開始)
CRIIRAD声明文
2011年3月30日18時
CRIIRAD
事務局・研究所: 471 av. V. Hugo, Valence, FRANCE
TEL:+33 (0)4 75 41 82 50/FAX:+33 (0)4 75 81 26 48
メール:contact@criirad.org/Webサイト:http://www.criirad.org
CRIIRADからの最新の警告
日本:多数の人々が放射能にさらされたままになっている!
3月28日(月)以降、海水の放射能の強さに注意が集中しており、メディアのなかには、突発的に発生した「環境被害」を懸念した報道1をしているところもある。しかし、汚染された区域の住民の健康を守るのが緊急に考慮すべき課題であると、CRIIRADはもう一度訴えたい。3月12日から、毎日毎日、刻々と、住民たちは福島第一原子力発電所からの放出放射性物質の影響を受けている。あらゆる経路が併合されて被ばくしているのだ。
●放射線被ばく : 住民が暮らす内陸部に向けて吹く風には放射性エアロゾルとガスが含まれ、福島県の住民はもちろん、100km北に位置する仙台市の住民や、230km南の東京の住民も被ばくする。
●放射線被ばく : 放射性物質が(重力や、雨と雪によって)地面に次第に降下し、地表に蓄積されることでも被ばくする。
放射能の線量率は、原子力発電所から100km以上の地域で10倍、60~70kmほどの距離では100倍に増加しており、50km圏内では平常時の1000倍を越しているのではないかと考えられる。問題なのは、これらの区域では住民が避難もせず、屋内退避もしていないことである。これらの住民の被ばくレベルは、一時的な放射線放出の上昇と一致するわけではない。1時間に8マイクロシーベルト(これは制限数値ではない)であっても、その場に8時間留まると64マイクロシーベルトになり、18日では、1年間の線量限度1ミリシーベルトを越える、1152マイクロシーベルトに達する。さらに、私たちが考えているように、住居内部に放射性気体が侵入していたら、1日24時間ベースで外部被ばくの線量を計算しなければならない(つまり、3ミリシーベルト以上に達し、1年の線量限度の3倍になる)。
<訳注:8マイクロシーベルト×24時間×18日=3456マイクロシーベルト=3.456ミリシーベルト>
●外部被ひばく : 皮膚や毛髪に放射性粒子が付着して起こる。(皮膚の傷、ほんの小さな傷であっても、そこから体内に侵入し、簡単に内部被ばくを引き起こす。また、指で口や鼻を触ったり、手を洗わずに食物を扱う場合や、肉眼では見えないエアロゾルを毛髪に付着したままにしておき、それを吸い込んだ場合なども、内部被ばくにつながる)
●“経口吸入”による内部被ばく : 空気中の放射性エアロゾルやガスを吸い込んで起こる。なぜなら呼吸を止めることはできないし、住民がしている市販の防塵マスクは、空気に含まれる気体状放射性ヨウ素を“全く防御しない”。屋内退避は“短期間”の対処法であって2週間以上延長すべきではない。家屋の目張りが完全な場合には窒息してしまうし、目張りが不完全な場合には屋外から酸素が供給されると同時に「放射性物質も」供給されてしまう!
●“経口摂取”による内部被ばく :汚染された水と食物により被ばくする。リスクのある食物の検査が始まったのは遅かった。また放射能汚染の基準値を超えた食物だけが撤去されている。その基準値は、フランスやヨーロッパよりは低めになってはいるものの、やはり非常に高めの設定だ。2
ひとりの人間が浴びる放射線量を計測し、その人の健康上のリスク評価をする場合には、全ての放射性核種と全ての食物からの被ばく量(外部と内部)を考慮にいれなければならない。この作業は困難を伴う。なぜなら、まず問題が起こった初日から一番被害をうけている地域の線量率に関するデータが存在しないからだ。そして、大気汚染の調査が少なく、放出放射性物質の同位元素組成もわからない。屋内退避の人々(30km圏内の)の住居内部の汚染レベルの結果もない。
この10日ほど、次々と数値結果が出てきている。ただ緊急であるがために、採取と分析の手段が一貫性を欠いており、線量を計算し危険区域を推測しようにも、多くの数値が使いものにならない。例えば、一部に限定された線量率の計測、ベクレル単位の表面活性計測、そして、どの放射性核種なのかを明らかにしない状況などである。しかしながら、一部に限定された計測であっても、住民が直面している危険性が高レベルであることは、数々の結果が証言してくれている。CRIIRADは明日、これまで収集した情報をもとに、第1回目の総合分析結果を発表する予定である。
汚染が深刻であり、どの程度の放射性物質が、明日そして明後日以降、大気中に放出されるのか予想不可能であることから、CRIIRADは日本政府に対し、20km圏内より遠くに住民を避難させ、最も危険にさらされている住民に汚染されていない食物をできるだけ多く届ける最善の努力をするよう、繰り返し訴える 。また、できるだけ迅速に問題解決がなされるために、世界各国が必需品の輸送供給と財政援助を最大限行うよう呼びかける。これ以上時間は無駄にできない!
1 「環境被害を避けるための最大限の警告」 Dauphine Libere<訳注:地方紙> 2011年3月30日
「被害」はできる限り抑止されるべきだ。「地球規模もしくは太平洋規模での問題にはならないだろう。しかし、福島近海での漁業は厳格な禁止措置をとらなければならない」 イギリスのサザンプトン大学国立海洋学センターのサイモン・ボクサル(Simon Boxall)教授は、数ヶ月間の漁業禁止を見込んでいる。
2 2011年3月20日CRIIRAD声明文参照
CRIIRAD資料 Corinne CASTANIER
(転載終了)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1506:110709〕