現代批評講座―著者が語る新刊の集い
二〇一一年三月一一日の東北大震災と原発の惨事は、私たちに多くの課題を突きつけました。それらの問題は三・一一以前にも少なからず論じられてきた一方で、三・一一は私たちの国が、私たちの社会が、そして私たちの生が現在どのような歴史的状況のなかに置かれているのかをあらためてまざまざと見せつけました。この点では、明治維新以降の近現代史、日本の近代化の過程を総体的に捉えなおすことが喫緊の要請となります。「近代」そのもののあり方を問うことが迫られているのです。
新しく立ち上げました「現代批評講座―著者が語る新刊の集い」は、そうした混沌とする時代状況をさまざまな側面から切開して、少しでも豊かな地平を築くことのできる糸口を探求するために開かれた試行の場であります。新刊について著者から直接に語っていただくことによって、そして著者とともに考えていくことを通じて、私たちはみずからの環境を作りあげていくことに参画していきたいと考えます。
二〇一三年二月一〇日
講座世話人(六月十日現在・三十一名) 伊藤述史(大学非常勤講師)伊藤誠(東京大学名誉教授)今井昭彦(文筆家)内野光子(歌人)上之園幸子(社会思想家)宇波彰(評論家)及川淳子(大学非常勤講師)追川恵子(デザイナー) 岡本有佳(風工房)川元祥一(作家・評論家)黒須純一郎(明海大学教員)高良留美子(詩人) 小林孝吉(文芸評論家)小林勝(ドイツ史研究)児島博紀(東京大学院博)佐藤俊男(デザイナー) 椎名修(写真家)清家竜介(早稲田大学教員)高橋一行(明治大学教員)澤村美枝子(フリー編集者) 橋本盛作(御茶の水書房)羽田三郎(印刷会社役員) 原田克子(詩人)船木恵子(武蔵大学総合研究所) 西角純志(大学非常勤講師)仁科伸子(東京福祉大学専任講師)三上治(評論家)矢島杜夫(社会思想史研究) 吉留昭広(社会運動家)米村健司(早稲田大学教員)若生のり子(美術家)
第三回:椎名重明著 『カリタスとアモール― 隣人愛と自己愛』(二〇一三年、御茶の水書房)
日時:七月二十日(土)午後二時〜四時三〇分
場所:明治大学研究棟四階第一会議室
■椎名重明著 『カリタスとアモール― 隣人愛と自己愛』(二〇一三年、御茶の水書房)
「善人なおもて往生す、いわんや悪人に於いてをや」という親鸞、「赦して愛する」隣人愛を説くルター、「われわれと 共に住み、われわれを妨げる人に対する愛」こそが真の隣人愛だと説くトルストイ。現実に困っている人たちに何かをする隣人愛(カリタス)は、自己愛(アモール)とどこが違うのか。本書は、親鸞とルターの対比や通底するものを軸に、夏目漱石やトルストイ、ニーチェの「隣人愛」観まで引用しながら隣人愛の本質を示す。キリスト教と浄土真宗の相似性、 キリスト者も念仏者も孤独ではない、共通の倫理規範としての隣人愛など、今日の思想的閉塞状況に警鐘を鳴らすメッセージに。 (「出版ニュース」五月中・下旬号)
■目次より
I アガペーとカリタス
II 親鸞とルター
III カリタス思想の伏流
IV ニーチェの「隣人愛」観
V 自己愛・友愛・隣人愛――結びにかえて
■著者紹介 椎名重明(しいな・しげあき)
一九二五年 茨城県生まれ
一九五二年 東京大学農学部卒業
一九六四年 立正大学教授(経済学部)
一九七一年 東京大学教授(農学部)
一九八六年 帝京大学教授(文学部)
現 在 東京大学名誉教授・農学博士
■主要著書
『イギリス産業革命期の農業構造』(一九六二年、御茶の水書房)『近代的土地所有―—その歴史と理論』(一九七三年、東京大学出版会)『農学の思想 ——マルクスとリービッヒ』(一九七六年、東京大学出版会) 『マルクスの自然と宗教』(一九八四年、世界書院) 『プロテスタンティズムと資本主義 ——ウェーバー・テーゼの宗教史的批判』 (一九九六年、東京大学出版会)
▼これまでの現代批評講座:第一回 三月一九日 高橋一行著『知的所有論』(二〇一三年、御茶の水書房) 第二回 五月一八日 伊藤 誠著『日本経済はなぜ衰退したのか』(二〇一三年、平凡社)
▼本講座は世話人会が設立趣旨に沿った新刊を選定し、著者自らが新刊を紹介・説明し読者と討論する場であります。
▼今後の開催予定は、九月、十一月、一月です。
▼場所 明治大学研究棟四階第一会議室 千代田区神田駿河台1一1 明治大学リバティータワーの裏
▼参加費 五〇〇円
▼主催者連絡先 伊藤述史(090—9388—3831) 清家竜介 ryu.seike@gmail.com